「猿の見る夢」 桐野夏生 講談社 2016.8.8
帯に、
これまでで一番愛おしい男を書いた。
と、桐野さんの自筆がある。
「週刊現代」読者の圧倒的支持を得た、
ともあるが、
そこそこ上手く人生を送っていると思われる
いい年をしたオヤジたちの腹の中は、
やはり、こんなもんなんだろうなって感じ。
愛おしいとは、思えない。
薄井正明、59歳。元大手銀行勤務で、
出向先ではプチエリート生活を謳歌している。
近く都内に二世帯住宅を建築予定で、
十年来の愛人・美優樹との関係も良好。
一方、最近は会長秘書の朝川真奈のことが
気になって仕方ない。
目下の悩みは社内での生き残りだが、そんな時、
会長から社長のセクハラ問題を相談される。
どちらにつくか、ここが人生の分かれ道ーー。
帰宅した薄井を待っていたのは、
妻が呼び寄せたという謎の占い師・長岐。
この女が指し示すのは、
栄達の道か、それとも破滅の一歩か……