そうか、野生時代に連載していたんだ~
ということで発行は角川書店、平成24年8月31日。
冲方丁(ウブカタトウ)について、改めて奥付を見たら1977年生まれ、若い。
大学在学中にスニーカー大賞、2003年には日本SF大賞とある。
『マルドゥック・スクランブル』、読んでみよう。
天地明察がとても良かったので、早速読んでみた。
期待を裏切らない。
おそらく、膨大な史料・資料にあたり、咀嚼して理解し、
自分の言葉に置き換えて小説に仕上げている。
実は、他の本に追われていて、気づいたのが返却期限3日前の夜。
一晩で読むつもりが、二晩まるまるかかった。
随所に漢詩などがあって、一文字ずつ読むしかなかったのだ。
光圀(はじめは光國)の父は、生涯正妻をもたなかったという。
世子と決めた子供が幼くして亡くなり、光圀が世子となったのだが、
同腹の兄をさしおいてのことだった。
俊英な兄は、やがて讃岐高松藩主となるが、
病弱だったとはいえ、なぜ兄ではなく、自分なのか。。。
『義』を貫くには、どう生きるのか・・・
エネルギーを持て余した若き光圀は、市井に馴染み、様々な人と出会う。
むさぼるように様々な書を読み、学ぶ。
その中でも詩にひかれ、才能はどんどんのびてゆき、
やがて冷泉家をはじめ天皇まで、宮中のやんごとなき人々とも交流することになる。
尊王の志が強まるわけだ。
兄の子を、水戸の跡継ぎにしようと決めた光圀だが妻帯しなくてはいけない。
京都から嫁してきた泰姫のキャラクターが最高!!
天姿婉順と言うのか~。
しぼるような思いで自らの考えを告げた光圀に
「お辛かったでしょうに」「よく頑張りました」
「今日からは、あなた様お独りではありません」「わたくしが、お傍におります」
と、天然で答える。
その泰姫は子をなさぬまま、若くして病に倒れ、その後の光圀は再婚しなかったらしい。
ただ、彼には若くしてできた男児があった。
光圀は兄の子に水戸藩を譲り、光圀の子は兄の高松藩を継ぐ。
父・頼房(家康の11男)、兄・頼重、尾張徳川初代・義直(9男)、紀州徳川家初代・頼宣(10男)、
宮本武蔵、沢庵、林家の次男・読耕齋、保科正之、山鹿素行、冷泉為景、朱舜水など
強烈な個性の持ち主たちが実に魅力的。
そうそう、「天地明察」で水戸の庇護があったと書かれていたように
この本にも安井算哲が出てきた。
忘れてならないのは、藤井紋太夫。
少年時より光圀に惹かれた英邁な少年は、小姓となり、やがては家老になるが
彼の『義』は、暗愚な5代将軍綱吉に代わって、水戸が将軍となるところに行き着く。
その上で大政奉還するべしと――
光圀は自らの手にかけざるを得なかった・・・
天地明察で一番記憶にあるのが、三角形に内接する円の半径を求める図だが、
今回は、蜘蛛手(くもで)の歌。(286ページ) 文字鎖だ。
まず、縦に7つ。それから横に7つ、和歌を記す。
最初の縦の7つの歌が、横の七つの歌と、ことごとく文字が重なり合ってゆく。
しかも斜めに二つ、四角形の対角線が描かれるようにして、同じように和歌になっている。
四角形の十六本の線が、全て和歌である。線が重なり合う点では同じ言葉が共有されている。
一文字たりとずれることはなく、完璧につながりあっているのである。
ただ単に、重なった文字を共有しているだけではなかった。
四角の辺にて、異なる和歌同士が重なった頭文字を、右上から右下へ、さらに左下へ、そして左上へ、
という順番で拾い出して読むと
登有勢宇能美屋散無志右佐牟具半以喜越騰部良夫有太
とうせうのみやさむじうさむくはいきをとぶたふうた
すなわち、「東照の宮、三十三回忌を弔う歌」
では、内側の重なっている五文字・五列はどうか。
也九師不津 屋久之布都 夜来思婦徒 弥倶斯武頭 八苦四副通
五つ全て、「やくしぶつ」すなわち「薬師仏」と読める。
しかもなんと、全ての文字が一つきりだった。同じ文字を、決して、二度使ってはいない。
ググッたら、後水尾院「蜘蛛手の歌」を見つけた。
この小説では光圀に贈られたものだということになっているからには、
その根拠になる史料も残っているのだろう。
それにしても、この言葉遊びはスゴイ!!
天地明察が上映中だ。
今日は水曜日、レディスデーだが他に用事がある。
来週の今日まで上映していたら観に行こう。
ということで発行は角川書店、平成24年8月31日。
冲方丁(ウブカタトウ)について、改めて奥付を見たら1977年生まれ、若い。
大学在学中にスニーカー大賞、2003年には日本SF大賞とある。
『マルドゥック・スクランブル』、読んでみよう。
天地明察がとても良かったので、早速読んでみた。
期待を裏切らない。
おそらく、膨大な史料・資料にあたり、咀嚼して理解し、
自分の言葉に置き換えて小説に仕上げている。
実は、他の本に追われていて、気づいたのが返却期限3日前の夜。
一晩で読むつもりが、二晩まるまるかかった。
随所に漢詩などがあって、一文字ずつ読むしかなかったのだ。
光圀(はじめは光國)の父は、生涯正妻をもたなかったという。
世子と決めた子供が幼くして亡くなり、光圀が世子となったのだが、
同腹の兄をさしおいてのことだった。
俊英な兄は、やがて讃岐高松藩主となるが、
病弱だったとはいえ、なぜ兄ではなく、自分なのか。。。
『義』を貫くには、どう生きるのか・・・
エネルギーを持て余した若き光圀は、市井に馴染み、様々な人と出会う。
むさぼるように様々な書を読み、学ぶ。
その中でも詩にひかれ、才能はどんどんのびてゆき、
やがて冷泉家をはじめ天皇まで、宮中のやんごとなき人々とも交流することになる。
尊王の志が強まるわけだ。
兄の子を、水戸の跡継ぎにしようと決めた光圀だが妻帯しなくてはいけない。
京都から嫁してきた泰姫のキャラクターが最高!!
天姿婉順と言うのか~。
しぼるような思いで自らの考えを告げた光圀に
「お辛かったでしょうに」「よく頑張りました」
「今日からは、あなた様お独りではありません」「わたくしが、お傍におります」
と、天然で答える。
その泰姫は子をなさぬまま、若くして病に倒れ、その後の光圀は再婚しなかったらしい。
ただ、彼には若くしてできた男児があった。
光圀は兄の子に水戸藩を譲り、光圀の子は兄の高松藩を継ぐ。
父・頼房(家康の11男)、兄・頼重、尾張徳川初代・義直(9男)、紀州徳川家初代・頼宣(10男)、
宮本武蔵、沢庵、林家の次男・読耕齋、保科正之、山鹿素行、冷泉為景、朱舜水など
強烈な個性の持ち主たちが実に魅力的。
そうそう、「天地明察」で水戸の庇護があったと書かれていたように
この本にも安井算哲が出てきた。
忘れてならないのは、藤井紋太夫。
少年時より光圀に惹かれた英邁な少年は、小姓となり、やがては家老になるが
彼の『義』は、暗愚な5代将軍綱吉に代わって、水戸が将軍となるところに行き着く。
その上で大政奉還するべしと――
光圀は自らの手にかけざるを得なかった・・・
天地明察で一番記憶にあるのが、三角形に内接する円の半径を求める図だが、
今回は、蜘蛛手(くもで)の歌。(286ページ) 文字鎖だ。
まず、縦に7つ。それから横に7つ、和歌を記す。
最初の縦の7つの歌が、横の七つの歌と、ことごとく文字が重なり合ってゆく。
しかも斜めに二つ、四角形の対角線が描かれるようにして、同じように和歌になっている。
四角形の十六本の線が、全て和歌である。線が重なり合う点では同じ言葉が共有されている。
一文字たりとずれることはなく、完璧につながりあっているのである。
ただ単に、重なった文字を共有しているだけではなかった。
四角の辺にて、異なる和歌同士が重なった頭文字を、右上から右下へ、さらに左下へ、そして左上へ、
という順番で拾い出して読むと
登有勢宇能美屋散無志右佐牟具半以喜越騰部良夫有太
とうせうのみやさむじうさむくはいきをとぶたふうた
すなわち、「東照の宮、三十三回忌を弔う歌」
では、内側の重なっている五文字・五列はどうか。
也九師不津 屋久之布都 夜来思婦徒 弥倶斯武頭 八苦四副通
五つ全て、「やくしぶつ」すなわち「薬師仏」と読める。
しかもなんと、全ての文字が一つきりだった。同じ文字を、決して、二度使ってはいない。
ググッたら、後水尾院「蜘蛛手の歌」を見つけた。
この小説では光圀に贈られたものだということになっているからには、
その根拠になる史料も残っているのだろう。
それにしても、この言葉遊びはスゴイ!!
天地明察が上映中だ。
今日は水曜日、レディスデーだが他に用事がある。
来週の今日まで上映していたら観に行こう。