呑んべぇ爺さん

呑んべぇ爺さん「音岳」の記録とつぶやき

小聖岳で打止め

2008年03月22日 | 南アルプス

 静かな朝が明けて、テントをたたんでから出発する。昨日自分で付けたトレース(踏み跡)は順調に登れた。その先の2人のトレースは雪山はどこでも登れるとばかりに強引につけられて、藪コギ状態が続いて登りにくく、深みにはまってもがきまくった跡も多かった。

 トレースの最後は「薊平」手前の夏道トラバースルートをキチンと高巻きしていて、上から「薊平」が見えた。遠くに「南岳」から稜線が「上河内岳」・「茶臼岳」・「易老岳」・「光岳」に続いていて、くっきり見える。

 下り始めると、トレースは左の谷方向にそれている。暫く下ると元のルートにトレースは戻ってきていた。先行の2人は「キジ打ち」でもしたのだろうか???。10時前に「聖平避難小屋」に着く。冬期入口の方は人が出入りした形跡が見えないので、夏季入口に向かうと、吹き溜まりの上から何とか入れる。

 扉のレール付近の雪を取り除いて、人が入れる程度扉は開けられる。先行の2人がやってくれたのだろう。何とか中に入ると、タバコのヤニの臭いが強烈に漂っていて辟易する。吸殻が入口付近に10数本むき出しに置かれていた。シュラフなどいくらか荷物が残されていたので、一部をデポしてどこかに出かけたのだろう。

 私も最低の装備だけを持って、ザックをデポして10時半に小屋を出る。下ってきた近道で聖方面に向かうがこちら方面には新しいトレースが無いので、彼らはどこに行ったのだろうかと思う。

 春の日差しはきつく気温も一気に高くなり、直射日光に当たると暑いくらいだ。「薊平」で日の当たる所では、あちこち地面が見えている。稜線通しでアップダウンを繰り返しながら登り続ける。ほぼ空身なので楽だ。

 13時過ぎに、「小聖岳」に近づくと、白い小さな影が見える。おっ!?「雷鳥」ではないかと直感する。もう少し近づくと、間違いなく「雷鳥」だ。白い雷鳥を直接見るのは初めてだ。彼(雷鳥)もこちらに気付いて警戒している。こちらが登ると、彼も一定の間隔を開けて登る。

 追いかける気は無いが、丁度登る方向に彼が居るので、追いかける形になってしまう。デジカメに収めながら、仕方なく追っかけて行く形になる。「小聖岳」に着いても彼に見とれたり、富士山に感激したり、パノラマ写真を撮ったりして時間を過ごす。これを吹っ切って再び登り始めてから時計を見ると、13:35になっている。

 独りで切り開いてきたルートの調子で考えると、これから先「聖岳」を目指すと小屋に帰着できるのは20時を過ぎそうだ。「小聖岳」でかなりの満足感があったので無理せず引き返す事にする。帰る途中で、来る時気付かなかった「富士山」ビューポイントも見つかる。

 「聖平」付近まで下ってくると、「聖平」から「南岳」方面のトレースに気付く。彼ら2人はあちら方面に行ったのだろうかと思う。小屋に帰ると2人は居るかなと楽しみに下る。

 15:15に小屋に着くと、誰も居ない。吸殻は始末されており、デポされていたものも無くなっていたのできっと下山したに違いないと思う。彼らとすれ違っておらず早い下山なので、彼らは今日どこまで行ったのだろかと思う。

 今日、小屋出発の時に水が切れていて、水を作って持って行きたかったが、時間が遅くなるので水を持たず、雪や「つらら」で水分補給をしたが、喉が渇きは続いていたので早くたっぷり水を飲みたかった。これも「小聖岳」から引き返した要因の一つだった。まず飲み物を作って一息いれてから、夕食の準備にかかる。

 アルコールを飲みながら1人寂しく、レトルトカレーなど山ではまだ豪勢な夕食をたっぷり食べる。ふと、冬期入口のガラス戸を見ると、内側からロックされている。いざ避難したい時に使えないような、こんな事を誰がしたのだろうかと思う。

小屋内に、雑記帳が吊るされていたので暇つぶしに見ると、先行した2人の記述があった。それによれば、彼らは昨夜ここに泊まっておらず、途中道を失ってビバークして、今朝元のルートに戻ったとある。あの不思議なトレースはそういう意味だったのだ。

 それに今日は、「上河内岳」方面に登って来たとも書いてあったので、やはり帰りに見えたトレースは彼らのだったと納得できた。明るい間の時間がたっぷりあったので、小屋付近を見て回ると、反対の赤石ダム辺りの登山口方面から、小屋前を通らず聖平小屋の分岐標識に直接向かっているよく判らない最近のトレースが1本見つかった。

 その内、誰か小屋に入ってくるのを期待したが、誰も現れなかった。天気予報では、明日は午前中まで天気が持つようなので、明日は行ける範囲で「上河内岳」方面に登ろうと決める。


【「薊平」の標識が見えた】

【「薊平」からの展望:一番高く見えるのが「上河内岳」でその左が「南岳」。
「上河内岳」から右に「茶臼岳」~「易老岳」~「光岳」と稜線が続く】

【避難小屋の積雪期入口】

【避難小屋】

【避難小屋の夏季入口】

【聖平小屋の入口正面の方向】

【「薊平」のトラバースルート方面】

【小聖岳に向かう】

【左が「聖岳」右が「小聖岳」。右側の稜線を登る】

【む?あれは?ひょっとして?】

【白い雷鳥だ(6倍ズーム)。背景が白いと判り難い】

【最後の登り付近にいるので、登って行くと警戒して先を行く。
ずっとこちらの様子を伺っている(6倍ズーム)】

【こちらが動かなければ雷鳥も止まる(6倍ズーム)】

【追い回すようで、登り辛い】

【「小聖岳」に着くと、ガラ場に下って行った(6倍ズーム)】

【「小聖岳」標識の左下の白い点が雷鳥】

【「聖岳」方面】

【今回初めて目に飛び込んだ「小聖岳」での感激の富士山(6倍ズーム)。
目にはもっと大きく見えるが写真にすると小さい】

【少し「聖岳」方面に進んだ所から。天候が良いのでルートは易しそうだ。】

【「小聖岳」から「聖岳」方面のパノラマ】

【「小聖岳」から「富士山・南岳・上河内岳・茶臼岳・易老岳・光岳」のパノラマ】

【「雷鳥」遭遇に満足してしまって、下る】

【その小さなピークを登り返せば、その先直ぐ「薊平」だ】

【帰り途中に見えた富士山(6倍ズーム)】

【小ピークを越えて現れた「薊平」と遠望の「南岳」、稜線続きで右側の「上河内岳」】

【冬期入口はロックされていた】

【夏季入口は雪が吹き溜まっている】

【小屋正面入口方面】



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