◎娘よ(Dukhtar)
娘たちの会話。女の子が男の子を見て男の子がふりかえると赤ちゃんができる。なるほど、それもそうだ。この会話は、これだけ情報の少ない田舎の国にいるんだってことを示しているのと、これだけこの子たちがまだ幼いのに過酷な運命が待ってるんだってことの暗示なんだけど、このあたり、よく練られてる。アフィア・ナサニエルの処女作らしいけど、いろいろと気のつく演出だわ。
で、虹の話をしてる。母サミア・ムムターズはいう。目には見えるけど本当はそこに存在してないの。とかいってて娘サーレハ・アーレフがフレームアウトし、会話が続く。そこへ、ドアが破られて夫が入ってくる。誰もいない。ワンカットだ。お、すごいじゃん。会話がそのまま伏線とカセットで部屋の外へ聴かせてるトリックになってる。
逃げるときの村の素朴な感じがとてもいい。ロケ地、よく見つけたね。それと、美しい自然とは相容れないモヒブ・ミルザーの運転するド派手なデコレーショントラック。これがふしぎに調和してくる。絵がいいんだな。食堂を出るとき、串刺しされた鳥の丸焼きなめの去っていくトラック。いや~。音だけじゃなくて、絵も利いてる。
モヒブ・ミルザーの語るカブール川とインダス川の悲恋物語は興味深い。カブールの血の流れ、インダスの涙の流れ。そして合流。つまりは、この映画のあらすじがここにあるわけで、実話の映画化にしては脚本が練られてる。で、合流するおばあちゃんと内緒で待ち合わせるラホールの夜市なんだけど、これもええ感じだ。
サミア・ムムターズが流れ弾に撃たれ、介抱されながら逃げ去ってゆくところで、あれれ、これ、このまま死なせちゃうこととかなしだよね、カットが変わって山河を背景にした彼女の復活とかが用意されてるんだよねっておもえば、死んじゃったような眼を閉じるカットのあとで、そのまま車内で娘の手をにぎりかえすカットがラストになってる。なるほど、こっちの方が上手だわ。
ありきたりな脱走劇かとおもってたし、まあまちがいではなかったともおもうんだけど、脚本の上手さと映像のセンスの良さで観ちゃうな。