◎ボトル・ドリーム カリフォルニアワインの奇跡(2008年 アメリカ 109分)
原題 BOTTLE SHOCK
staff 監督/ランドール・ミラー
製作/J・トッド・ハリス、マーク・トベロフ、ブレンダ・ローマー、
マーク・ローマー、ジョディ・セイヴィン、ランドール・ミラー
原案/ロス・シュワルツ、ラネット・パドン、ジョディ・セイヴィン、ランドール・ミラー
脚本/ジョディ・セイヴィン、ランドール・ミラー、ロス・シュワルツ
撮影/マイケル・J・オジアー 編集/ランドール・ミラー、ダン・オブライエン
美術/クレイグ・スターンズ 音楽/マーク・アドラー
cast クリス・パイン アラン・リックマン ビル・プルマン レイチェル・テイラー
◎1976年5月24日午後、パリ
世にいう「パリ、テイスティング事件」が起こったのは、
インターコンチネンタル・ホテルのパティオだ。
世界的なワイン通で知られる9人の審査員による、
カルフォルニア・ワインとフランス・ワインとのテイスティング・イベントで、
主催したのは、
マドレーヌ広場の近くでワインショップを経営する34歳の英国人で、
アラン・リックマン演ずるところのスティーヴン・スパリエだ。
このイベントは、フランスのワイン通からはそっぽを向かれていた。
マスコミもほとんどが無視した。
あたりまえの話で、
伝統的なフランス・ワインが無名のカルフォルニア・ワインに勝てるはずがない、
と、誰もがおもっていたからだ。
ところが、いざ蓋を開けてみると、とんでもない結果になった。
白ワインも赤ワインも、優勝したのはどちらもカルフォルニア・ワインだったんだから。
この事実は、
たったひとりイベントに参加していた新聞記者によって報道された。
記事のタイトルは『パリスの審判 Judgment of Paris』で、
タイム誌のパリ特派員を勤めていたジョージ・テイパーによる。
世界中がびっくりした。
フランスはこの世の終わりのように沈黙し、
アメリカは建国200年の最大のニュースのようにそこらじゅうが湧いた。
そしてなんとも恐ろしいことに、
フランスによるリターン・マッチと称して、
1986年と2006年にこのテイスティング・イベントは催されたんだけど、
どちらも、勝ったのはカルフォルニア・ワインだったんだよね。
ちなみに、
1976年の赤ワインの優勝は、
スタッグス・リープ・ワインセラーズ1973で、
白ワインの優勝は、
シャト・モンテリーナ1973だった。
1986年は赤ワインの審査だけだったんだけど、
優勝したのはクロ・デュ・ヴァル1972で、
さらに2006年、
優勝したのはリッジ・モンテベッロ1971 で、
スタッグス・リープ・ワインセラーズ1973は2位だった。
ちなみに、リッジ・モンテベッロ1971 ってのはすごいワインで、
1976年は5位、1986年は2位だったんだ。
いやまあ、呑んだことはないけど、とっても美味しいんだろう、たぶん。
で、映画はアラン・リックマンがいかにも板についた英国紳士を演じてるんだけど、
なかなか味わいぶかい。
几帳面ながらも自分の舌に絶対的な自信を持っていて、
フランスワインが世界一だっていうのは幻想だといいきり、
わざわざカリフォルニアまで出向いていって、美味しいワインを探してくる。
こういうあたり、イギリス人とはおもえないくらい行動的で、
いかにもアメリカ人が好みそうな人物ぶりだ。
この映画は食に対するこだわりだけど、
世の中、得てしてこんなもんで、
世間がおもしろいとか口をそろえる映画や小説なんてものは、
たいがい観たり読んだりしないでおもしろいと流される。
自分の舌や眼がいかに大切なものかってことを、
他人の意見に左右されず、
自分の感覚を信じないといけないってことを、
この映画は教えてくれてるんだよね。