◇友よ、風に抱かれて(1987年 アメリカ 112分)
原題 Gardens of Stone
staff 原作/ニコラス・プロフィット『Gardens of Stone』 監督/フランシス・フォード・コッポラ 脚本/ロナルド・バス 製作/マイケル・レヴィ、フランシス・フォード・コッポラ 撮影/ジョーダン・クローネンウェス 音楽/カーマイン・コッポラ
cast ジェームズ・カーン アンジェリカ・ヒューストン メアリー・スチュアート・マスターソン ジェームズ・R・ジョーンズ
◇1968年、バージニア州フォート・マイヤー陸軍基地
まあ、戦争映画っていうよりは明らかな反戦映画なんだけど、コッポラにしてはなんとも地味な小品っていう印象が濃い。どういうわけかこの作品が封切られたときのことはよく覚えてて、それほど観客もいなかった劇場に出かけて観、それで「へえ~」と感心し、ちゃんとした映画じゃんかとおもいながら帰ったおぼえがある。
というのも邦題がいかにも友情物語のようで、ベトナム戦争の戦場と祖国を行き来するんだろかっておもってたのがまるで違って、アメリカの墓地と基地に終始した物語だったからだ。墓地というのはバージニア州のアーリントン国立墓地で、軍人の墓碑が並んでいることで知られる。原題の「石の庭」はもちろんこの墓地のことだ。このアーリントン墓地に戦死者を埋葬する役目を担っているのが第3歩兵隊(オールド・ガード)で、この部隊は米軍兵士の中では憧れの部隊のひとつらしい。
で、そこで曹長となっているのがジェームズ・カーンなんだけど、恋人のアンジェリカ・ヒューストンはワシントン・ポストの女性記者で平和運動家でもある。つまりは戦闘にちょっと嫌気がさして、もはやベトナムに兵士を送り込むべきではないっておもいはじめてる。ところが、かつての戦友の息子D・B・スウィーニーが部下として配属され、こいつが戦意ばりばりの出征希望者だったことでひと波乱ある。結局、D・B・スウィーニーは恋人のメアリー・スチュアート・マスターソンと添い遂げることもなくベトナムで戦死するんだけど、こういう家族のようなものの死による喪失を見つめていくことで、しみじみとした反戦映画になってる。
実に、うまい。
すべてはメアリー・スチュアート・マスターソンが参列し、ジェームズ・カーンが差配する葬列、つまり、D・B・スウィーニーの納棺から始まり、回想によって構成され、そしてふたたび葬儀で終わるという形式なんだけど、かっちり構成された筋立てと、まったく無駄のない演出と編集で、見本のような映画に仕上がってる。
さすが、コッポラだよね。