◇日本沈没
藤岡弘の同僚としてゲスト出演する小松左京のこの原作だけど、当時、うちの父親の本棚にも入ってた。あんまり本に興味のないぼくだったけど、これはなんとなく開いてた。まあ、無意味にいきなり海岸でまぐあう主人公のふたりの挿し絵を見返していたっていった方がいいかもしれないけど。
映画でもこの場面はサービスカットになってる。天城山が爆発するのを目撃するだけなら、なにもいしだあゆみが黒のビキニでいる必要もないし、お見合いをしたばかりの藤岡弘の腕の中で「ねえ、抱いて」とかいう、なんとも奔放な台詞をいってしまうんだから、サービス以外のなにものでもない。
それにしても橋本忍は地球から始まるのが好きなんだな。途中でも、マントル対流の説明があって、これを小松左京は「半熟のゆで卵」と表現するんだけど、当時のぼくにとって衝撃的な台詞は「個体が流れる」という丹波さんの台詞だった。説明するだけの場面なんだけど、当時のSF映画には必須のことだったんだろう。
しかし、橋本忍にしてはなんというか薄っぺらで中途半端な人間描写な気がしないでもない。群像が多すぎるからかもしれないけど、ちょっと類型的すぎるんじゃないかな。ま、リメイクよりも断然おもしろいのはいうまでもないが。
おもしろさの重要な因子は、もちろん、役者だ。みんな若くて、張り切ってる。丹波さんも、藤岡弘も、小林桂樹も、いちばん好い顔だった時代だろうなあ。だからいいってわけじゃないけど、なんかみんながみんな切羽詰まった感じを漂わせてるのは演技なのか時代なのかはよくわからない。