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夏時間の庭

2014年10月19日 02時00分54秒 | 洋画2008年

 ◇夏時間の庭(2008年 フランス 102分)

 原題 L'Heure d'ete

 staff 監督・脚本/オリヴィエ・アサイヤス 撮影/エリック・ゴーティエ

     美術/フランソワ=ルノー・ラバルト 衣装/アナイス・ロマン、ヨルゲン・ドゥーリング

 cast ジュリエット・ビノシュ シャルル・ベルリング カイル・イーストウッド エディット・スコブ

 

 ◇パリ郊外の町ヴァルモンドワ

 ぼくもずいぶんといい年になってきたもんだから、

 ときおり、死ぬときのことを考えたりする。

 まあいろいろと買いあさったものもあったりして、ちっとも整理できてないから、

 このあたりのものをちゃんと整理してから死なないといけないなとおもうし、

 実家の親にまんいちのことがあったりしたら、その整理はどうしようとかと悩んだりもする。

 誰もが身近にそういう心配を抱えている分、この映画は決して他人事じゃない。

 とはいえ、オルセー美術館に寄付できるような美術品のある家はそうざらにないけどね。

 フランスでヒットしたとかいうけど、ほんとだとしたら、フランス人の鑑賞眼はたいしたもんだ。

 なんとなく観に行く映画とはおもえないほどの静寂と哲学と死生観に満ちている。

 家族がそろっているときは、その夏の時間は豊饒であるのに対し、

 母親という鼎がなくなってしまうと、もはや豊饒たる夏はめぐってこない。

 屋敷は朽ち果て、庭は荒れ果てる。

 屋敷も庭も、その時代ごとの風景に移り変わっていく。

 そういう寂寞感が濃厚に漂う内容だ。

 長男だって次男だって長女だって、自分たちの実家や母親の遺品を手放したくはない。

 でも、アメリカにいたり、中国にいたり、新しい家族ができたりしてくれば、

 どうしたところで実家には住めないし、

 どれだけ価値のある美術品があったところで現在の生活には必要ない。

 ここに出てくる家族がまだしも幸福なのは、心の底から憎しみ合ってはいないことで、

 それはおそらく親のしつけが行き届いていたということもあるんだけど、

 なによりお金に余裕があったんだろうっておもったりする。

 金持ちは、喧嘩をしない。

 ただし、成金は、喧嘩をするけどね。

 つまり、潤沢にお金のある良家の人間は怒りをあらわにすることがない、という哲学だ。

 ぼくはそれは真実だとおもってる。

 この作品の家族はおそらくその部類で、役者たちもいかにもそれっていう人間が揃えられてる。

 クリント・イーストウッドの息子までもがフランスに招かれて出演してるんだから推して知るべしだ。

 まあ、ヨーロッパやアメリカの場合、こういう映画は余裕をもって撮れるのかもしれないけど、

 邦画はどうなんだろね。

 なんてことをついおもっちゃったわ。


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