☆ルイーサ(2008年 アルゼンチン、スペイン 110分)
原題 Luisa
監督 ゴンサロ・カルサーダ
☆猫の名はティノ
飼い猫が死んで、務めてた霊園を経営者が愛人を雇ってやりたいがために解雇され、家政婦として働いてた女優の家からも解雇され、遅配されていた給料はもはや期待できず、銀行の貯金はほぼ底を尽き、手持ちの金は500円しかないから猫の埋葬もしてやれずとりあえず冷凍庫に保存し、乗り方もわからない地下鉄で幸福のカードを売ろうとしたが売れず、ちんばの乞食になったり、めくらの乞食にもなってみたりしたけど無理で、あげくの果てに不良のスリどもからは暴行されるという、人生のどん底まで叩き落とされた還暦の老女の話なんて、いったいどこがおもしろいんだってなところなんだけど、実はすごくおもしろかった。
片足の乞食とアパートの管理人とがなんとか彼女の理解者というか協力者になってくれるから、まあ、孤独だったのが孤独じゃなくなったってことだろうし、最後、猫の火葬を女優のマンションの屋上にあるごみ焼却炉でしてやったときにはちょっとばかり希望の灯が点ったような気もしないではないけど、そういう理不尽な物語を淡々と客観的に描くことで、恥も外聞も見栄もかなぐり捨てて死にもの狂いで生きようとする人間は傍から見てるとなんとまあ滑稽なんだろうってこともひしひしと伝えられてくる。
いや、実にしっかり作られてる。ルイーサを演じたレオノール・マンソっていう女優さんも上手だったしね。けど、アルゼンチンって国はこういう人々が少なくないんだろうか?ブエノスアイレスってなんとなく行ってみたい感じのするところなんだけど、どうなんだろね。