◎マネーボール(2011年 アメリカ 133分)
原題 Moneyball
staff 原案/スタン・チャーヴィン 原作/マイケル・ルイス『マネー・ボール』
製作/マイケル・デ・ルカ レイチェル・ホロヴィッツ ブラッド・ピット
監督/ベネット・ミラー 脚本/スティーヴン・ザイリアン アーロン・ソーキン
撮影/ウォーリー・フィスター 美術/ジェス・ゴンコール 音楽/マイケル・ダナ
cast ブラッド・ピット ジョナ・ヒル ロビン・ライト ケリス・ドーシー
◎1997年10月、ビリー・ビーン、アスレチックスGM就任
昨日のお昼前、何気なくテレビをつけたら、とんでもないことが起きてた。
米メジャー・リーグ、レンジャーズ対アストロズ戦、七回裏。
ダルビッシュが完全試合を目前にして、投げてた。
結果、完全試合はならなかったものの、
9回2死まで無安打、無四球、自己最多の14奪三振にくわえ、
最速97mph(約156km/h)を記録するという快投だった。
「背番号11で111球目に打たれるってのは、やっぱ、ぞろ目はなんかあるな~」
とかいった呑気な話をしようとしてるんじゃない。
このところ、なんだか、野球の話題が多い。
選抜高校野球で、
最速152km/hという済美の安楽智大投手が、5戦772球でちから尽きたとか、
長嶋茂雄と松井秀喜に国民栄誉賞が贈られることになったとかで、
それぞれについて、いろいろと議論が交わされてる。
高校野球にも制限球数を取り入れて、故障を未然に防いだ方がいいとか、
そんなことになったら、
完全試合、ノーヒットノーラン、完封完投、奪三振数とかいった記録が無くなるだろとか、
長嶋はわかるけど、人生の半ばにも達していない松井はまだ早いんじゃないかとか、
ほんとかどうか知らないけど、国民栄誉賞ってなんで総理の一存で決まるんだとか、
そんなふうに報道されてるのを見たり読んだりするだけでも疲れちゃうくらいだ。
ぼくだって、こうして駄文を書いてるんだから、世の中には無数の意見がある。
けど、個人の意見や主張をそのまま押し通せる人間はかぎられてる。
この映画の主人公ビリー・ビーンがそうした限られた人間かどうかはわからないけど、
すくなくとも、自分の信じる野球理論セイバーメトリクスを実践して、
オークランド・アスレチックスに奇跡的な白星を積み重ねさせたのは事実だし、
貧者の野球理論を駆使して自チームを勝利に導くという筋立ては、
弱者が強者に打ち勝つのが大好きなぼくみたいな人間の好むところだ。
けど、世の中、難しいのは、他球団がこうした理論を取り入れ、
やがてメジャーの中では当然の理論のようになってきた今、
金満球団が出塁率の高い選手を一手に取り込んでしまうのが明らかなことだ。
映画とちがって、現実は終わりがないから、ほんとに難しい。
でも、アメリカの好いところは、こうした理論を取り入れようとする姿勢にある。
根性や気合だけじゃどうにもならない世界があるんだって話は、
努力もせずに、ぼんやりと「いいことないかな~」とかって暮らしてるぼくには、
ちょっとばかり手厳しいんだけどね。