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湿地

2022年07月06日 22時16分17秒 | 洋画2006年

 ◎湿地(Myrin)

 

 アイスランドのレイキャビックが舞台となれば、こりゃもうどんよりした空の下の暗い物語になるだろうなあっていう偏見をまったくもってそのとおりに見せてくれた。そういう意味での期待は、はずされなかった。ほんと、なんとまあ荒涼としたロケーションだろう。だけじゃなく、ドライブスルーで普通に羊の頭の丸焼きをくれとかいって買えるのもすごい。食文化の違いなんだけど、この羊の頭蓋骨の比喩、バルタザール・コルマウクル、見事な演出だったね。

 でも、イングバール・E・シーグルズソンが登場してきたとき、まさかこの顎鬚の還暦まぢかなおっさんが主役の刑事だとはおもわなかった。でも、誰の種かもわからない子を妊娠した麻薬中毒の娘オーグスタ・エヴァ・アーレンドスドーティルをかかえて、狭い凍てついた町で奮闘しなくちゃいけない老年の刑事ってのも辛いもので、こりゃあ、悲哀をとおりこして悲劇に近いんじゃないかっておもってたら、事件の中身はもっと冷酷なものだった。

 30年前に強姦されたことで神経線維腫症のウィルスに侵され、そのために母親から息子に、さらに娘に遺伝して死を迎えざるを得なかったことで生まれた殺意による事件なわけだけれども、この全容がわかるまでに複数の縦軸が用意されていて、つまり、臓器を保管している通称「瓶の街」の住人つまり研究者がその息子アトゥリ・ラフン・シーグルスソンなんだけどこの軸、これにメインの軸になるイングバール・E・シーグルズソンの地道な捜査が交互に語られるんだけれども、これが複雑なんだ。

 のっけから、なんの予兆もなく物語が始まるものだから、湿地っていったいなんのことだよ、この舞台になってるところが湿地なのかっていう疑問も束の間、どんどん物語は進行して、やがてかつてのレイプ犯のひとりが殺した死体を床下に隠してるんだけれども、その家が湿地を埋めたところに建てられているものだから、地面を掘れば水が湧いてくるため、そこで死体が腐乱してるっていうとてつもなく気持ちの悪い展開になる。

 いや~二度観たい映画じゃないけど、おもしろかったわ~。

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