感染症・リウマチ内科のメモ

静岡県浜松市の総合病院内科勤務医ブログ

関節リウマチとステロイドと心血管イベント

2014-03-17 | リウマチ

以前のこのブログでも取り上げましたが、関節リウマチ治療のための欧州リウマチ学会勧告2013 でリウマチ治療でのステロイドに関しては、
ステロイドは低用量(プレドニゾン7.5mg/日以下)で最大6ヶ月までの使用は、初期治療戦略の一部として考慮されるべき としています。ただし他のDMARDsとの組み合わせに追加して使用するのみで、ステロイド単独療法は推奨していません。単独使用は、他のすべてのDMARDが禁忌のときにのみ、例外的な場合に使用されるべきです。
といっても、当科でも特に高齢者のRA例で、従来のDMARDsが効かないか副作用や基礎疾患あって使えないときにやむを得ず、最後にステロイド少量を使っていることもあります。
ステロイドを少量かつ短期間に限るとしているのはその副作用が懸念されるからです。その中で、動脈硬化と心血管イベントについて調べてみました。RAの長期炎症そのものも動脈硬化進展に悪いわけで、炎症をおさえるステロイドはどうなのか、興味のあるところです。




まとめ

・RAでのグルココルチコイド(GC)の主要な副作用は、大規模観察研究によって証明されるように、骨量減少、心血管イベントのリスクおよび感染の危険性である。
・その他の関連付けは、 帯状疱疹、結核、高血糖症、皮膚の異常、消化管穿孔、呼吸器感染症、クッシング様体型、 斑状出血、羊皮紙様皮膚、鼻出血、体重増加と睡眠障害、など

・全体的に、RA患者は、一般集団より新規心血管イベントや死亡リスクが48%高い、MIのリスクが68%増加する
・RAの制御されない炎症が内皮に直接影響を持つし、動脈硬化症の加速や心筋梗塞素因となりうる。
・またリスクは、脂質、高血圧、耐糖能、動脈硬化症進行および凝固障害に対するGCの悪影響によって媒介され得る
・一方で、GCはまた特に低用量では、内皮壁における抗炎症および抗増殖作用により媒介される心臓血管保護作用を示しうる

・コルチコステロイドの使用は動的であり、RAの重症度と関連しやすい。その使用が心血管疾患のリスクを高めるかどうかに関しては以前から議論がある。たいていは観察研究であり既知の共変数調整後でも残留交絡は排除しきれない問題がある。

・集団ベースのコホート内症例対照研究で、現在のGCの使用(過去3ヶ月)は虚血性心疾患と関連していたことを報告(OR = 1.36)、関連は過去の使用と比べて現在の使用で高かった。
・Caplanらリウマチ疾患の国立データバンクを使用して、現在のGCの使用(≤6ヶ月)は死亡率の増加と関連していたと報告。さらに以前のGC使用(>6ヶ月)は、死亡率の増加と関連していなかった。
・Weiらの研究で、炎症性関節炎患者のサブセットのうち、GC高用量使用(> 7.5 mg /日)者の1.2年の平均追跡でCVDの3倍のリスク増と関連した。

・行政健康データを使用した、RA例人口ベースのコホート研究で、多変数モデルは、現在のGC使用はMIの68%リスク増加と関連。 現在の1日量 (HR = 1.14、95%信頼区間1.05、それぞれ5 mg /日の増加あたり1.24)、 累積使用期間  (HR = 1.14、95%信頼区間1.00、GC使用 年あたり1.29) 、および総累積投与量(HR = 1.06、95%CI 1.02、過去に蓄積されたグラム当たり1.10) はまた、心筋梗塞のリスク増加と関連。 
・より高用量の現在のGC用量がMIのリスク増と関連していることがわかった。
・今回の知見からは GC曝露の影響、すなわち、現在のGC露出/用量の即時性、過去の暴露期間の長期影響、の二つの独立した構成要素を有し得ることを示唆。
・MIリスク媒介のGC即時効果は、血管壁、内皮および血管平滑筋、および血管収縮性の増強を含む。 長期的影響については、GCはアテローム性動脈硬化病変の不安定化に関わりうことを示唆。

・10年間の観察コホート研究で、65歳より前の発症したRA患者の間で、 心臓血管イベントCVDおよび死亡率に関連していたのは、RFまたはACPAの存在 、診断時のWBC数、およびCRP、ESRの値。 高齢者におけるGC使用はCVDが高まり,不良な生存率と関連。



参考文献:

J Rheumatol. 2013 Dec;40(12):1958-66.

Curr Med Res Opin. 2013 Sep;29(9):1147-60.

Rheumatology (Oxford). 2013 Jan;52(1):68-75.

Heart. 2004 Aug;90(8):859-65.

Ann Intern Med. 2004 Nov 16;141(10):764-70.

J Rheumatol. 2007 Apr;34(4):696-705. 


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