感染症・リウマチ内科のメモ

静岡県浜松市の総合病院内科勤務医ブログ

ステロイド治療において注意すべきこと

2014-03-19 | 一般向け
前回のブログでリウマチとステロイドと心血管イベントのお話をしました。このリスクのためにもステロイド使用はなるべく短期間、少量のほうが良いことになります。今回は 一般向け記事の第二弾として、ステロイド治療の副作用について一般に知っておきたいことを書きます。
薬剤の副作用に関しては、普段の診療上もよく質問も受け、またよく説明しておかなければならないことです。 特にステロイド剤は、炎症を軽減して症状を良くしたり、異常な免疫応答を抑制してくれたりで、自己免疫性疾患の治療にはよく登場しますが、その副作用も多彩なので注意です。



まずは副作用と対策について、治療開始前に医師と話し合いを行うべき

・一般的にステロイドの副作用は、1日あたりの薬の量に依存し、それが多いほどでてきやすいです(用量依存的)。
・また服用し続ける期間によって副作用のでてきやすい時期に違いがあって、

開始日から数日ででてくるものに、  不眠、気分変化、食欲増強、血圧の上昇、むくみ、 
開始後の数週間くらいで、  糖尿病、高脂血症、肥満、満月様顔貌、 
数か月以上長期の使用のとき、  皮膚の菲薄化、紫斑、骨粗しょう症、白内障、  などがでてくるようになります。



感染症にかかりやすくなります

・一般的に、細菌や、ウイルス、真菌による感染症の危険性は、用量依存的な増加をしめす。 プレドニゾロンで20mg/日以上の服用では感染症のリスクが増すとされています。 ほかに、感染リスクに影響を与えるものは、慢性呼吸器疾患などの基礎疾患、併用している免疫抑制剤の存在、環境(入院中など)が含まれます。
・20mg/日以上の量を1か月以上服用予定で、ほかにも免疫抑制剤を併用しているなどリスクがあれば、予防的に抗生剤(バクタなど)を服用して、ある種の感染症を予防することがあります。
・20-30mg/日以上の量を2週間以上服用予定では、事前にB型肝炎の検査を受けておいて、すでに潜伏して感染している状態ではないかをみます。潜伏感染なら定期的な監視や早い目に肝炎治療をすることもあります。
・風疹や水痘帯状疱疹などの生ワクチンは、中等量以上のステロイドを使用しているときはうってはいけません。必要であれば治療開始前に考慮します。


糖尿病になることがあります

・もともと糖尿病だったりその予備軍だったりした方は、ステロイド使用によって血糖値が悪化することがあります。
・ステロイド治療による新規の糖尿病発症のリスクとしては、高齢、肥満者、妊娠糖尿病の歴、糖尿病の家族歴
・ステロイド治療開始後は血糖値の確認を行います。血糖値上昇によって、インスリンや経口薬(DPP4阻害薬など)を使います
・ステロイド服用量が徐々に減ってくると、血糖値も良くなることが多いです。


皮膚にアザができやすくなります

・皮膚がうすくなったり、ちょっとした刺激で青あざ(紫斑)ができやすかったりします。多くは手や前腕のところです。ステロイドによる副作用で最も一般的なものです。20mg/日以上の3か月のステロイド治療を受けた方の約半数でみられたとする報告もあります。


顔が丸くなります

・ステロイドの用量とその使用期間によって、体格の変化がでてきます。 体の胴の部分の肥満、肩の肥満、顔が丸くなる(満月様顔貌)などの変化でクッシング様体型といいます。


骨そしょう症になります

・骨もステロイドの用量とその使用期間によって薄くなってきます。骨折発生率も関連して増えます。脊椎の骨折がもっとも一般的ですが無症候性(ご自身が知らない間に発生)のこともあります。
・7.5mg/日の量を3か月以上服用予定では、骨粗しょう症の薬を使って予防することがあります。(カルシウム製剤やビタミンD類など)
・骨密度(BMD)がすでに低い、骨折歴あり、女性、高齢、喫煙、閉経、やせ型のひと、など骨折のリスクがあれば、より強力なビスフォスフォネート製剤を使用します。(歯科処置のある人は、この薬が使いにくいので相談しましょう)



・白内障や緑内障の両方ともステロイドの用量と期間依存的に増加します。 10mg/日以上の量と1年間以上の期間でより一般的とされています。


胃潰瘍など消化性潰瘍
・ステロイド単独での消化性潰瘍疾患のリスクは低く、ほかの鎮痛剤(非ステロイド性抗炎症薬)と組み合わせて使用される場合にリスクは増えるとされています。 リスクのある場合は胃薬(PPIなど)の予防的服用を行います。


ステロイドの服用開始前のチェック  (それぞれの副作用のリスク要因をすでに持っているかどうか)

・糖尿病・脂質異常がすでにあるかどうか
・高血圧・心不全 はないか
・白内障や緑内障:眼科受診歴
・消化性潰瘍の既往歴
・鎮痛剤(非ステロイド性抗炎症薬)の併用使用をしているかどうか
・骨折歴
・骨密度
・慢性感染症の存在:結核歴(本人のみならず、家族などで結核のひとに接したことがあるかどうか)、慢性呼吸器感染、B型肝炎など


ステロイド服用中チェック

・体重増加
・血圧の上昇
・心不全や末梢浮腫
・血糖や脂質の悪化
・白内障と緑内障の監視
・骨密度の監視


ステロイドは急にやめてはいけない

副腎不全
・ステロイドを服用を続けていると、本来自分の体がだすはすのステロイドを作る力が衰えてきます。これを視床下部-下垂体-副腎軸 (HPA)抑制といい、プレドニゾロンで20mg/日以上の量を3週間以上服用者や、朝のみでなく夜の服用も数週間以上続けているひと、はこれが抑制されていると推測されます。
こういったかたがステロイド服用を急にやめると、血圧低下ショック、吐き気、嘔吐、腹痛、脱力、倦怠感、発熱、錯乱や昏睡などの副腎不全症状をきたしますので、自己判断で急にやめてはいけません。
・こういった副作用をさけるためにも、3週間をこえて投与されたステロイドの減量はゆっくり行われることが多いです。
・HPA抑制をなるべく減らすため、ステロイドの隔日投与法が行われることもあります。

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