感染症・リウマチ内科のメモ

静岡県浜松市の総合病院内科勤務医ブログ

赤痢アメーバ 感染について

2014-04-09 | 感染症
消化器内科から慢性下痢の方で便の検査から、赤痢アメーバが検出されたため当科に治療相談がありました。3週間前からの下痢と血便が主訴の方で、内視鏡検査にて、直腸と盲腸にアフタ様びらん、汚い白苔を伴うタコ疣様病変が多発していました。
病理診断にて、軽度の慢性活動性炎症を伴った大腸粘膜で、アメーバ赤痢原虫がみられたということです。HIVスクリーニング検査は陰性でした。
今後、検査、治療をどうするか? 文献をまとめました。


まとめ
・赤痢アメーバ感染(アメーバ症)は寄生虫疾患による死亡原因の第2位である。
・先進国での疫学的研究は、口腔、肛門性交する男性とセックスをする男性(MSM)の間でアメーバ性大腸炎などの侵襲性感染症の有病率増加を報告している
・E histolyticaの感染例の約90%は結果として腸管定着にいたる。
・E histolytica感染はほとんどは無症候性であるが、侵襲性アメーバ症の臨床症状はアメーバ性大腸炎およびアメーバ性肝膿瘍が含まれ、かなりの罹患率と医療費に関連している。 アメーバ性肝膿瘍(ALA)は、赤痢アメーバ感染した患者の1%未満に発症。
・非侵襲的感染の患者では非特異的な胃腸症状を示し、大腸内視鏡検査で非血性下痢と正常粘膜をしめす。
・臨床症状は、発熱、下痢、右上腹部痛、および赤痢が含まれる。症状の性質および強度は、非常に多様である。 大腸炎のすべての患者は便試験にてヘム陽性を示す。
・典型的に突然始まる細菌性赤痢とは対照的に、 アメーバ性大腸炎は、1週間以上の緩やかな発症を持つ。
・下痢、しぶりはアメーバ性大腸炎患者の90%以上で存在するものの、発熱や便の明らかな血性はまれ。(わずか1/3は発熱性)
・危険因子には、アルコール依存症、栄養失調、小児と高齢、妊娠、コルチコステロイドによる治療や同性愛行動が含まれる。

・アメーバ性大腸炎の診断のためのゴールドスタンダードは、赤痢アメーバの吸血性栄養型の発見のまま であり、 新鮮な便検体の顕微鏡検査で または結腸鏡生検で、典型的な潰瘍の検出で 栄養型を示す。
・しかし便検体の顕微鏡検査は、腸アメーバ症の診断のための非常に感度が低い(<10%)。 塗抹標本染色(クローム又は鉄ヘマトキシリン)使用にて感度は25~60 %程度に改善。
・アメーバ性大腸炎における大腸病変は浸潤の程度に応じて、古典的なフラスコ形の潰瘍flask-shaped ulcerations、粘膜壁の肥厚、または腸壁の壊死として表示
・アメーバ症診断のための血清学的検査の感度は、疾患の種類および段階に応じて変化する。感度は急性期では70%程度、回復期は90%以上。急性期アメーバ症のための血清学的検査は陰性例では、繰り返しテストが必要になるかもしれない。

・経験的治療はほとんど支持されない.  治療はE histolyticaが識別された場合にのみ、 または異なる抗生物質の連続した2日間のコースで赤痢菌の経験的治療にもかかわらず原因不明の赤痢が解決しない場合は、治療をお勧め
・未治療患者の約10%が1年以内に浸潤性アメーバ症を発生しうるので、無症候性のE histolytica感染患者は腸管腔作用薬による治療を受けるべき
・非侵襲的な疾患症状の患者を治療する場合には、単独の腸管腔剤が適切
・無作為化試験では、パロモマイシンを受けている患者はジロキサニドフランカルボン酸を受けたものよりも、腸のE histolytica感染の根絶の高い率となった (51%対85%、P= 0.003)
・画像所見に基づくアメーバ肝膿瘍の疑いでは経験的治療を促す必要がある
・アメーバ性大腸炎など症候性アメーバは2剤レジメンが必要:メトロニダゾールなどの殺アメーバ薬と、ジロキサニドフロ、パロモマイシン、およびヨードキノールなどの腸管腔作用性殺シスト剤
・メトロニダゾールまたはチニダゾールは、侵襲性アメーバ症のための治療の主力のままで、それに続けてE histolyticaの再発と性的パートナーや濃厚接触者へのアメーバ伝播を防ぐため腸管腔薬による治療 を行う

・症候性腸アメーバ症は、以下で治療すべき:

  チニダゾール 1g ×2/ d、 3日間、 または
  メトロニダゾール 750mg ×3/d、7-10日間、 のいずれか、
  そして
  パロモマイシン500mg ×3/d、7日間 (または 25-35mg/kg/dを分割して) を続けて。

・パロモマイシンの一般的な副作用である下痢は難しい治療に対する患者の反応を評価するために行うことができるので、メトロニダゾールとパロモマイシンは、同時に投与してはならない
・メトロニダゾール療法において解熱が3.5日(範囲1-11)で達成し、侵襲性アメーバ症の症状は通常、治療に良好に反応する。
・最近のメタアナリシスでは、単剤療法は、アメーバ症のほとんどの場合には不十分であると結論
・渡辺らは、HIVに感染した日本人男性における侵襲性アメーバ症165例を報告し、 ここで83名がメトロニダゾールまたはチニダゾール治療後に腸管腔作用剤を受けた。アメーバ再発が認められたのは 腸管腔薬を受けた6/83(7%)で腸管腔薬を受けなかった6/82(7%)であった。 再発は、C型肝炎ウイルス抗体陽性患者とフォローアップ期間中に梅毒を取得した人(性的行為の兆候)、で多くみられた。 おそらくメトロニダゾールまたはチニダゾール治療後の腸管腔治療は、再感染アメーバに高リスク集団でのアメーバ症の再発を減らさない。
・現在、既存の抗菌剤に対するin vivoでの既知の耐性はない。
・アメーバシストは、塩素またはヨウ素の低用量によって殺されないため、煮沸はアメーバ根絶のために必要。 野菜は、洗剤や石鹸で洗浄した後、シストを除去するために10-15分間酢で浸漬する。
・米国における最近の研究では AIDS患者における大規模な手洗いレジメンの使用により、ランブル鞭毛虫、クリプトスポリジウム、赤痢菌、および大腸菌アメーバ感染によって引き起こされる下痢性疾患の減少を示した


参考文献
CMAJ. 2013 Sep 3;185(12):1064.
Cochrane Database Syst Rev 2009;(2):CD006085.
Lancet Infect Dis. 2012 Sep;12(9):729-36.
PLoS Negl Trop Dis. 2011 Sep;5(9):e1318.
Indian J Gastroenterol. 2012 Jul;31(4):153-62.
Curr Gastroenterol Rep. 2007 Oct;9(5):429-33.
N Engl J Med. 2003 Apr 17;348(16):1565-73.

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