英国の執事や召使いの特徴に「無表情」があります。
使用人が主人の前で無表情でいるのは、平静さを示すための「装い」です。
もし主人や客人が目の前でとんでもない失敗をしたとしても平然と対応できるように、また恥ずかしい思いをさせないための「礼儀」なんですね。
「まあ!」「あらやだ」クスクス笑い…なんて人らしい反応は、残念ながら召使いとしては失格です。
そりゃあ分っちゃいるンですがね、映画や小説の中で . . . 本文を読む
『Gold Rush!―ぼくと相棒のすてきな冒険』
(シド・フライシュマン/著, 金原 瑞人・市川 由季子/共訳, 矢島 眞澄/絵)
表紙のつるはしを持って立っているヒゲ面の男性は、となりの男の子のお父さん…ではありません。執事です。
わたくし、まだこの新刊児童書を読んでおりません。
それじゃなんでこの男性が執事だと知ってるんだい、と仰るそこのお方。
それはですね、この作品は、
いまや . . . 本文を読む
本日の召使 : アルフレッド・ペニーワース(Alfred Pennyworth )(バットマンの執事)
Batman Begins
バットマンには、執事がいる―
知りませんでした、わたくし。
バットマンには、執事がいる―
バットマンは世界でただひとり。
ならばバットマンのお世話をする執事も、世界でただひとりの執事。
これ、ちょっとスゴイぞ。いや、かなり、だ。
執事の名は、アルフレッド・ . . . 本文を読む
『ドリアン・グレイの肖像』
貴族のそばに、召使あり。
貴族が主人公の小説を読むと、
召使というのは、
貴族を描くのに欠かせない「点景」なのだと、つくづく思います。
たしかに、貴族がお茶を飲みたければそのお茶を入れるのは召使なのですから、
おのずと貴族と召使が同じ絵におさまるのは自然なことです。
『ドリアン・グレイの肖像』の主人公ドリアン・グレイも、またしかり。
ドリアンが朝食をとり、手紙 . . . 本文を読む
本日の召使 : ルイ・ラトゥール(バジル・ウォーレン卿の召使)
(『バジル氏の優雅な生活』JETS COMICSより)
坂田氏が描く世界、1ページ、1コマの中には、
「ゆるやかであたたかい空気」が含まれている。
春風駘蕩。すべて世は事もなし。
『バジル氏の優雅な生活』の舞台となる19世紀イングランドの貴族風俗に、その綿毛のような「空気感」が、なんとも合っている。
さらに、たくさんの召使たちが . . . 本文を読む
19世紀イギリスの君主・ヴィクトリア女王の従僕に、
ジョン・ブラウンという人物がいます。
もとは女王の夫・アルバート公の従僕だったのですが、アルバート公の死後、長い喪に服すヴィクトリア女王の従僕となりました。
ひょっとしたら「女王の従僕」よりも「女王の愛人」と噂された評伝の方が有名かもしれません。
このハイランド地方出身の無骨な従僕と、尊厳の権化であるヴィクトリア女王の悲恋物語は『クィーン・ヴィ . . . 本文を読む
ポール・バレル、という名前を聞いてピンとくる方は、そうとう英国王室に詳しい方だと思います。
名前を知らなくとも、1997年に交通事故死亡した「ダイアナ元妃の暴露本を出版した人」と聞けば「ああ、あの人か…」と思い出される方はいらっしゃるでしょうか。
ポール・バレル氏はダイアナ元妃の執事をしていた方です。
氏は1976年に18歳でバッキンガム宮殿に入り、エリザベス二世の専属スタッフを経て、チャール . . . 本文を読む
前回のブログで、
「執事はその威厳ある風采により、しばしば外部の訪問客からお屋敷の当主と間違えられる…というエピソードを何度か目にします」
と書きました。
前回取り上げた『エムズワース卿の受難録』に絡めながら、ここで「執事と主人の取り違え」について、ちょっと補足します。
執事がお屋敷のご主人さまと間違えられるのは、執事が「威厳ある風采」をそなえているから…だけではありません。原因はご主人の服 . . . 本文を読む
本日の召使 : ビーチ(エムズワース卿の執事)
(P.G.ウッドハウス選集Ⅱ『エムズワース卿の受難録』文藝春秋/2005年より)
つくづく思いました。
ウッドハウスの描く執事には、本当にハズレがない。
いや、「ハズレがない」なんて、ちょっと余裕ありげな言い方したりして、かっこつけてますね。いやらしいです。
本当は、福引の鐘を腕の付け根から振り回して叫びたい。
執事ビーチおおーあたぁーり~。
. . . 本文を読む
本日の召使 : バクスター(執事)
(『おおきいツリー ちいさいツリー』ロバート・バリー作 光吉夏弥訳 大日本図書 2001より)
『おおきいツリー ちいさいツリー』
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もうすぐクリスマスですね。
今回はクリスマスにふさわしい執事をご紹介しましょう。
ウィロビーさんの屋敷仕える執事バクスターです。
物語は、ウィロビーさんのお屋敷に
クリスマス・ツリーが運ばれてくるところから . . . 本文を読む
本日の召使 : ジァン(従僕)
映画『仮面令嬢』および戯曲『令嬢ジュリー』(ヨーハン・A・ストリンドベリ作 内田富夫訳 中央公論事業出版/2005年)より
『恋の火遊び/令嬢ジュリー』
作品中で従僕が、待遇や仕事について不満やグチをこぼすことはよくあります。
しかし、従僕の身分であることを「不本意だ」と主張する従僕は、そういません。
今回の従僕ジァンは、複雑な性質の従僕です。
自尊心と諦念( . . . 本文を読む
あなたの“専属の執事”から豪華なサービスを受けられる、
クリスマス限定の宿泊プランがあるそうです。
場所は、ホテル西洋銀座(東京・銀座)。一泊60万(!)。
クリスマスの夜にサービスをしてくれるこの執事さんは、
いったいどんな執事さんなのでしょうか?
気になってホテル西洋銀座のホームページをのぞいたら…
【ホテル西洋銀座】1日1組限定の Gorgeous & Homey
すべてがスペシャルな . . . 本文を読む
執事が「執事の職」を退いたら、次はどんな職業を選ぶのだろう?
庭師になった元執事もいますが(『シシリーは消えた』)
これは例外でしょう。
イギリスが舞台の小説や映画などでは、執事に限らず、
使用人たちはまた同じ職業に就くことが多い。
というのもイギリスでは“経験”が重視されるからです。
また面接の前に必要不可欠なものがあります。
前の雇用主の推薦状(reference)です。
イギリスの . . . 本文を読む
本日の召使 : ボーナム君(“エロイカ”こと伯爵の部下)
『エロイカより愛をこめて』 秋田文庫より
前回のブログではエーベルバッハ少佐の執事を取り上げました。
「名前のない執事」と題しましたが、その後コメントを頂きまして、
“31巻でこの執事の名前が「コンラート・ヒンケル」であることが明かされた”と教えてもらいました。
(コメントをくれた“執事さん”ありがとう!)
さて、今回はボーナム君を取り . . . 本文を読む
本日の召使 : エーベルバッハ少佐の執事(名前???)
『エロイカより愛をこめて』秋田文庫より
世の中に、エーベルハッハ少佐(以下、少佐)に仕える執事ほど、
“名前はないけど、キャラが立っている”執事はいないでしょう。
少佐に呼ばれるときも「執事!」「おい執事!」
といっこうに名前が出てこない。愛が足りない。
「こんなにもご主人への愛情に満ちあふれ、忠義に徹した執事なのに…」
と思わずわたく . . . 本文を読む