ポール・バレル氏・執事の職業倫理について思ったこと

ポール・バレル、という名前を聞いてピンとくる方は、そうとう英国王室に詳しい方だと思います。

名前を知らなくとも、1997年に交通事故死亡した「ダイアナ元妃の暴露本を出版した人」と聞けば「ああ、あの人か…」と思い出される方はいらっしゃるでしょうか。

ポール・バレル氏はダイアナ元妃の執事をしていた方です。
氏は1976年に18歳でバッキンガム宮殿に入り、エリザベス二世の専属スタッフを経て、チャールズ皇太子夫妻の執事となりました。皇太子夫妻の離婚後はダイアナ妃の執事となり、彼女が亡くなるまで仕えました。

ダイアナ元妃の死後、バレル氏はダイアナ元妃の所有物を盗んだ疑いで起訴されたり(裁判はその後、王室側が提訴を取り下げ、バレル氏は事実上「無罪」となる)、
『ダイアナ妃 遺された秘密』(原題:A Royal Duty )と題したいわゆる暴露本を出版したりと、当時の王室がらみの話題ではすっかり有名人となりました。

他にもゴシップを付け加えますと…
JAPAN JOURNALS LTD.の記事によれば、暴露本出版のほかにも「英国王室の身勝手な方針の犠牲となった哀れな執事」としてテレビ番組(主にアメリカ)のインタビューに出演したり、講義活動(どういう内容なんでしょうか?)を行ったりして、約200万ポンド(3億6,000万円)の収入を得たそうです。

「ダイアナ元妃をネタに金儲けをしている」と大衆からヒンシュクを買いながらも、バレル氏の名が王室関係の話題やニュースから消え去らないのは、事故の真相の鍵とされるダイアナ元妃がバレル氏に宛てた手紙の存在があるからです。

事故死する10ヵ月前、ダイアナ元妃はバレル氏に宛てた手紙に「夫がブレーキ故障による事故を計画している」と書いていた。この手紙は2004年に始まった死因審問で明らかになり、現実の事故とあまりにも似ていたので世間の注目を集めました。

「ダイアナ元妃殺害計画」の陰謀説は後を引き、最近ではチャールズ皇太子がロンドン警察の事情聴取を受けたと英紙のサンデー・タイムズが報じました(2005/12/11付)。


昨年、ニュース映像で初めてポール・バレル氏の姿を目にした時、
「はて、この顔はどこかで…?」
以前から知っていたような気がしたのです。

気になってわが家の本棚の執事コーナー(というものがあります。うちには)をのぞいてみると、ありました。にっこり笑顔で表紙を飾っている彼の著書が。
In The Poyal Mannerという英国王室特有のテーブル・セッティングに関する豪華ハウツー本です。裏表紙にはこれまたニッコリ顔でダイアナ元妃と肩を並べているバレル氏のプライベート写真が一面に大きく載っています。

出版年月を見ると、1999年。ダイアナ元妃が亡くなった翌年です。

バレル氏の商魂のたくましさに圧倒されながらも、わたしは表紙の彼の笑顔を眺めて考えました。
いくら欲しかった執事に関する資料本とはいえ、この本の著者と、ダイアナ元妃の暴露本を書いた元執事とが同一人物だと知っていたら、わたしはこの本を果たして買っていただろうか?

もとの主人のプライベートを本人の承諾なく公にする事は、
執事の職業倫理(主人の秘密を保持する。情報の守秘)からおおきく外れた行為だとわたしは思います。
それが守られないのが世の常だとしても。

悪徳執事の金儲けに、間接的に手を貸してしまった気がして、あまり良い気分ではありませんでした。

しかし、執事の職業倫理について、また別の、ひとつの想念が頭に浮かびました。

バレル氏のように、もとの主人のゴシップをばら撒くのは問題外として、
もし執事が、主人に仕える業務の中で、国家的な陰謀を知ってしまった場合、職業としての倫理と、人としての倫理と、どちらを優先するのか?

陰謀を立証できるのが自分しかいなかったら?
陰謀が、人の命に関わるものだとしたら?
秘密を墓場まで持っていくのは、果たして「本当に」正しいことなのか?

執事として、正しい対処方とはいったい…?

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