執事・メイド・従僕・使用人について。あらゆる作品が対象。出版元の詳細は記事中の作品名をクリック。amazonに行けます。
執事たちの足音
『エロイカより愛をこめて』 名前のない執事
本日の召使 : エーベルバッハ少佐の執事(名前???)
『エロイカより愛をこめて』秋田文庫より
世の中に、エーベルハッハ少佐(以下、少佐)に仕える執事ほど、
“名前はないけど、キャラが立っている”執事はいないでしょう。
少佐に呼ばれるときも「執事!」「おい執事!」
といっこうに名前が出てこない。愛が足りない。
「こんなにもご主人への愛情に満ちあふれ、忠義に徹した執事なのに…」
と思わずわたくし、ボヤきそうになります。
なぜ執事に名前がないのか?
少佐はNATOに勤務する生粋のドイツ人。
秩序の乱れを第一に嫌い、便宜を優先に自分の部下さえ
A(アー)、B(べー)…Z(ツェット)とアルファベットで呼ぶくらいですから、
自分の執事こそ、ただの「執事」と役職名で呼ぶのが最適であると
少佐はお考えなのでしょう。きっと。
名前が無い代わりに(というか、この執事さんの場合「執事」が名前となっているのですが)、キャラは立ちまくっています。
見た目もただのハゲでなく「すだれ頭」なところが、
はかなげな人間味を感じさせます。
(あ、ハゲはKGBの主要キャラ「仔熊のミーシャ」に取られたのか?)
無償の愛をささげる、名なしの執事
ストーリーの合間にはさまれる数々の執事エピソードから、
彼の人となりや仕事ぶりをちょっと挙げてみましょう。
■忠義一徹。先代のご主人(少佐の父)の頃からエーベルバッハ家に仕えている。
■少佐が赤ちゃんのころ、子守唄で寝かしつけた。(メリーさんのひつじ…?)
■少佐のおむつだって替えた。
(慣れぬ育児に苦労はしたが、
「おさっしのよいご主人様はおむつのとれるのも早く…」
と感謝感激している)
■泥棒伯爵のエロイカ(以下、伯爵)に、
少佐の人質として捕らえられたときのセリフ。
「わたしはもともとご主人様のためなら命をすてる覚悟なのだ!」
「そんな刃物などこわくはない! さあ殺せ! 殺してみろ! 泥棒め!」
(汗だくだく、涙はらはら、鼻ぐすぐすの熱血ぶり。
すっかり鼻白んだ伯爵と少佐は、戦意消失。)
■家中の時計はすべて正確に合わせる。
(置時計が「4秒進んでいるぞ!」と少佐に注意されたこと有り。)
■昔は毛がふさふさだった!(文庫本204ページに若き頃の姿が…)
■少佐が少年期にゆいいつ心を許した女性、シスター・テレサに
惚れていたフシが ある。
(本人は否定しているが、少佐に突っ込まれて頬を赤くしているシーン有り)
少佐は幼い頃に母をなくしているので、
執事が代わりにナース(乳母)も務めたようですね。
(普通は名家となればナースを雇うのが常識ですが、そこは漫画。いや、無粋なことを言って失礼。)
少佐がケーキを好まないことについて、
「お小さい頃に私どもがおいしいケーキを作ってあげられなかったからです」
とため息をつくなんて、泣かせるじゃないですか。
まるで心配性の母親のような、慈母愛に満ちた執事。
彼の仕事は「無償の愛」を少佐に捧げることなのです。
*** *** ***
さていっぽう、少佐と敵対する伯爵には、
「主人に無償の愛をささげる」執事はいないのか?
伯爵はれっきとした貴族なのだから、執事がいてもおかしくないのですが…
これが、いません。
しかし、執事兼従僕と言ってよい存在なら、確実にいます。名前もあります。
会計係のジェイムズ君? いえいえ、違います。
従僕の資質を充分に兼ね備えたその人とは、
伯爵の有能な部下の第一人者、ボーナム君です!
(次回につづく)
さて、慈母愛に満ちた執事の召使評価です。
なんだか“主人への献身”以外に
取り得がないように見えますが…
執事さんが悪いのではありません。
少佐が悪いのです。
気難しい主人に仕えるのが、どんなに大変なことか。

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『エロイカより愛をこめて』秋田文庫より
世の中に、エーベルハッハ少佐(以下、少佐)に仕える執事ほど、
“名前はないけど、キャラが立っている”執事はいないでしょう。
少佐に呼ばれるときも「執事!」「おい執事!」
といっこうに名前が出てこない。愛が足りない。
「こんなにもご主人への愛情に満ちあふれ、忠義に徹した執事なのに…」
と思わずわたくし、ボヤきそうになります。
なぜ執事に名前がないのか?
少佐はNATOに勤務する生粋のドイツ人。
秩序の乱れを第一に嫌い、便宜を優先に自分の部下さえ
A(アー)、B(べー)…Z(ツェット)とアルファベットで呼ぶくらいですから、
自分の執事こそ、ただの「執事」と役職名で呼ぶのが最適であると
少佐はお考えなのでしょう。きっと。
名前が無い代わりに(というか、この執事さんの場合「執事」が名前となっているのですが)、キャラは立ちまくっています。
見た目もただのハゲでなく「すだれ頭」なところが、
はかなげな人間味を感じさせます。
(あ、ハゲはKGBの主要キャラ「仔熊のミーシャ」に取られたのか?)

ストーリーの合間にはさまれる数々の執事エピソードから、
彼の人となりや仕事ぶりをちょっと挙げてみましょう。
■忠義一徹。先代のご主人(少佐の父)の頃からエーベルバッハ家に仕えている。
■少佐が赤ちゃんのころ、子守唄で寝かしつけた。(メリーさんのひつじ…?)
■少佐のおむつだって替えた。
(慣れぬ育児に苦労はしたが、
「おさっしのよいご主人様はおむつのとれるのも早く…」
と感謝感激している)
■泥棒伯爵のエロイカ(以下、伯爵)に、
少佐の人質として捕らえられたときのセリフ。
「わたしはもともとご主人様のためなら命をすてる覚悟なのだ!」
「そんな刃物などこわくはない! さあ殺せ! 殺してみろ! 泥棒め!」
(汗だくだく、涙はらはら、鼻ぐすぐすの熱血ぶり。
すっかり鼻白んだ伯爵と少佐は、戦意消失。)
■家中の時計はすべて正確に合わせる。
(置時計が「4秒進んでいるぞ!」と少佐に注意されたこと有り。)
■昔は毛がふさふさだった!(文庫本204ページに若き頃の姿が…)
■少佐が少年期にゆいいつ心を許した女性、シスター・テレサに
惚れていたフシが ある。
(本人は否定しているが、少佐に突っ込まれて頬を赤くしているシーン有り)
少佐は幼い頃に母をなくしているので、
執事が代わりにナース(乳母)も務めたようですね。
(普通は名家となればナースを雇うのが常識ですが、そこは漫画。いや、無粋なことを言って失礼。)
少佐がケーキを好まないことについて、
「お小さい頃に私どもがおいしいケーキを作ってあげられなかったからです」
とため息をつくなんて、泣かせるじゃないですか。
まるで心配性の母親のような、慈母愛に満ちた執事。
彼の仕事は「無償の愛」を少佐に捧げることなのです。
*** *** ***
さていっぽう、少佐と敵対する伯爵には、
「主人に無償の愛をささげる」執事はいないのか?
伯爵はれっきとした貴族なのだから、執事がいてもおかしくないのですが…
これが、いません。
しかし、執事兼従僕と言ってよい存在なら、確実にいます。名前もあります。
会計係のジェイムズ君? いえいえ、違います。
従僕の資質を充分に兼ね備えたその人とは、
伯爵の有能な部下の第一人者、ボーナム君です!
(次回につづく)
さて、慈母愛に満ちた執事の召使評価です。

取り得がないように見えますが…
執事さんが悪いのではありません。
少佐が悪いのです。
気難しい主人に仕えるのが、どんなに大変なことか。
ひかえめ 2- 少佐の幼少のころの思い出話をしみじみと語る。
すると「つまらん事を思い出すな」と少佐からピシャリ。
でもついつい語ってしまう。
機転 2- 気難しい少佐に振り回されっぱなしです。ほとんどのコマで汗をかいてる。
機転はないが、しかしそこは優しい人格でカバー。
献身 5- この執事にとって少佐は、
永遠に「クラウスぼっちゃま」のままなのでしょう…。
実の親より深い愛情です。
主人からの愛情 2- 親の心子知らずたぁ、このことだ。
執事が心配ゆえに口をひらけば、少佐はその3倍の反論を返してくる。
スタイル 3- 「すだれ頭」がほんとうにすだれているので、ちょっと悲しげ。
胃腸が弱そうだなー。


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コメント ( 3 ) | Trackback ( 0 )
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その名は「コンラート・ヒンケル」さんです。
お兄さんが1人います。
そのころは、まだ部下Aも部下Bも、部下の群像に埋まっていますから、後々キャラクターが固まってきたんでしょうね。
そうか、名前はやっと31巻で判明するんですね。
ボーナム君は有能だし、運転も上手だし、わりとマトモな人物ですから、従僕資質は十分ですね。
ボーナム君の記事、楽しみにしてます。
おお、さっそく31巻を買いに行かなければ。
わたしはブックオフに通っては、買い集めていました。でも文庫で18巻で止まってしまって…。(しかも本当は単行本がほしい)
貴重な情報、ありがとうございます!
コンラート・ヒンケルさん、かぁ…。
しっかりドイツ人だなぁ。
Konrad Hinkelって綴りだろか…。
>くろにゃんこさんへ
執事さんは「No.6 インシャー・アッラー」の章でキャラが確立されたのでしょうね。
冒頭の食卓シーンで丁寧に描かれています。(もう汗をかいている)
わたくし所蔵の『エロイカ…』には、
ボーナム君(らしき人物)が部下群像に初登場したコマと、
伯爵が初めて「ボーナム君」と呼んだコマに付箋がついております…。