ポケット・ジョークの女中、小間使いたち

おたがいさま
S夫人が小間使いのブリジットに言った。
「ブリジット、あそこにいるのがゲイバー夫人だったら、私は入らないわ」
確かめに行ったブリジッドはもどってきて、
「やはりそうでした、奥さま。あのかたもそれを聞いてたいへん喜んでいらっしゃいました」


それは危険
ピエールが、ご機嫌で深夜の帰宅をした。女中のマリーが、まだ起きていて、
「旦那さま、シャツのえりに口紅のあとがついております」と教えた。
「ありがとう、マリー。おかげで命びろいしたよ。このことは決してだれにも話しちゃいけないよ。いいね」
「もちろんでございます、旦那さま。話すなと言われたときの私は、それこそお墓みたいに、ひっそりとしておりますです、はい。何でしたら、奥さまにおたずねになってみてくださいましな」



『ポケット・ジョーク2 男と女』(角川文庫 昭和55年初版)に掲載されている、使用人が登場するポケット・ジョーク二編です。

「おしゃべりで、ちょっと思慮に欠けたメイド」
これはもう、ひとつのステロタイプなんでしょうな。

しかしつくづく、使用人というのはじつに「隠し事」といったネタに使いやすい人物素材なのだなぁと思います。

仕事上、図らずともつねに他人(主人)の秘め事を知らされてしまう立場にいるわけですから。

メイドたちが「おしゃべり好き」のキャラクターに設定されてしまうのも、
それだけ他人の秘密を山ほど知っている証拠なのでしょう。

今回は女性の使用人のジョークしか見つかりませんでしたが、
こんどは男性使用人のジョークが知りたいところです。

メイドとは反対に、
「主人の秘密を守り抜いたが為のわざわい」がありそうだと予想するのですが…。
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コメント
 
 
 
はじめまして (sima)
2006-09-16 23:47:06
 はじめまして、simaと申します。いつも楽しく通わせていただいてます。

 実は私はジーヴス好き(正確にはウッドハウス好きなんですが…)で、だいぶ前に執事についてネットで漁っていた頃にここを見つけました。後でジーヴス本のあとがきに載るほど有名だと知った時には驚きましたが…。いつも興味深い記事ばかりが更新されていて、管理人さんには頭が下がる思いです。

 残念ながら私が読んだことのある執事本は既出のものばかりなのですが、せっかくなので参考までに知っているジョークをひとつ。かなり有名なのでもうご存知かもしれませんが、この短さが秀逸だと思います。



「旦那様、旦那様、起きてくださいませ。睡眠薬を飲む時間でございます」

 

 それではこれからも更新楽しみにしています!

 
 
 
こちらこそ、どうぞよろしく! (countsheep99)
2006-09-18 19:51:00
simaさん、はじめまして。



>「旦那様、旦那様、起きてくださいませ。睡眠薬を飲む時間でございます」



あっはっは~! いや、初めて聞きましたよ。このジョーク。有名なのか。メモしとこ。



shimaさんはウッドハウス好きなのですね。

わたくしは「執事(召使い)好き」からウッドハウス作品に入ったのですが、これは稀有な例で、従来ウッドハウス・ファンはミステリー・ファンと重なっているみたいですね。



「ミステリーにおける執事(召使い)の役割」なんてのも考察してみたいテーマです。



(でもどの作品から読めばよいのか暗中模索。ミステリー分野に暗いわたくし…。とりあえず今はアシモフの『黒後家蜘蛛の会』を読みはじめました。)



近々、『でかした、ジーヴス』の記事をUPする予定。

ご笑覧あれ。



ではでは、お暇なときに、また寄ってください。

 
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