コメント(私見):
都立墨東病院の場合、産婦人科の常勤医の離職が相次ぎ、2006年11月から通常分娩の取り扱いを中止し、分娩取り扱い件数が2006年度の1306件から2007年度の438件まで約3分の1に激減しました。現在、産婦人科の常勤医数4名で、今年7月から土日は当直1人体制となり、緊急患者の受け入れは原則できないと関係機関に文書で通知してあったそうです。2人当直を維持している平日であっても、上席の医師が外部の非常勤の場合は受け入れが難しいケースがあることを関係機関に通知してあったそうです。現状では、マンパワー的に、総合周産期母子医療センターとしての機能を十分に果たせるような状況ではないようです。
「救命救急センター」や「総合周産期母子医療センター」などに指定されると、それだけで毎年何億円もの補助金が厚労省から支給される上に、診療報酬の加算があるなどの財政的なメリットもあり、大赤字に悩む自治体病院の経営陣としては、一度指定されたら何としてでも指定解除だけは避けたいと考えるのは当然なのかもしれません。しかし、『常勤医師数が極端に不足しているにもかかわらず、周産期医療の最後の砦として、産科の最重症救急患者をいつでも受け入れて、適切に対応しなければならい』という義務を現場の医師達に押し付けたら、医師達は疲弊し、遅かれ早かれ全員が燃え尽きてしまうでしょう。都内にはマンパワーや設備のより充実した大学病院や有名病院が数多く存在しますから、実情に合わせて、指定医療機関を随時フレキシブルに入れ替えていく必要があると思われます。
長野県の場合、胎児や新生児の最重症救急患者は県立こども病院(総合周産期母子医療センター)が受け入れ、母体の最重症救急患者は信州大病院が受け入れることになってます。この2施設が県の周産期医療の最後の砦という位置付けになってます。通常の産科救急患者は各医療圏の基幹病院(地域周産期母子医療センター、高度周産期医療機関)が受け入れて対応します。各状況により受け入れ可能な医療機関はほぼ1施設に限定されるため、受け入れ医療機関が見つからずに右往左往するということは、今までほとんど経験してません。ただ県内でも最近は産科医不足が深刻化し、分娩を取り扱う施設が激減してます。地域周産期母子医療センターに指定されている国立病院機構長野病院も分娩取り扱い中止に追い込まれました。『現在の周産期医療提供システムを今後も維持していけるのか?』が大きな課題となっています。
****** 共同通信、2008年10月25日
「周産期センター返上を」の意見
墨東病院内部で、都も把握
複数の病院で受け入れを断られた妊婦(36)が亡くなった問題で、搬送をいったん断った後、受け入れた東京都立墨東病院内部から医師不足を理由に「総合周産期母子医療センターの看板を下ろしたい」などとする声が以前から上がっていたことが25日、分かった。都も、病院内で指定解除の要望が出ている事実を把握していた。
墨東病院は5年前から産科医が定数9人に達しない状態が続いていた。関係者によると、同病院では週末の当直医が7月から1人になったが、それ以前から「このままでは周産期医療センターの看板を下ろさないとつらい」などの声が出ていた。
しかし同病院は都立病院唯一の総合周産期母子医療センターで、墨田、江東、江戸川区の周産期医療の拠点病院。そのため「代わりの施設がない」と、現場の医師の努力で維持していたという。
都病院経営本部によると、病院側との会合で「『看板を掲げていていいのか』との声が出ている」との報告を受けていたという。
(共同通信、2008年10月25日)
****** 時事通信、2008年10月25日
以前から「看板下ろしたい」=減員で総合センター維持厳しく-妊婦死亡の墨東病院
東京都内で8つの病院に救急搬送を断られた妊婦(36)が脳内出血で死亡した問題で、最初に断った都立墨東病院(墨田区)は、以前から高度産科医療を提供する総合周産期母子医療センターの「看板を下ろしたい」と、都に窮状を訴えていた。医師が減り、体制維持が厳しくなっていたが、地域の拠点施設をなくすわけにいかず、踏みとどまっている形だ。
墨東病院の常勤産科医の定数は9人だが、2006年4月には6人に減少し、同年11月からは新規の外来患者の受け付けを中止した。その後も減り続け、今年4月には3人に。10月から1人増えたものの、定数の半分に満たない。
都病院経営本部の谷田治課長によると、7月に週末当直が1人体制となる以前から、同病院の医師から「看板を下ろしたい」「きつくて対応できない」という話を常に聞いていたという。
(時事通信、2008年10月25日)
****** 読売新聞、長野、2008年10月24日
総合センター核に連携
「受け入れ拒否、基本的にない」
東京都内で脳出血を起こした出産間近の妊婦(36)が、病院から受け入れを拒否され、出産後に死亡した問題では、「総合周産期母子医療センター」が機能していなかった。県内では、「総合センター」を中核に、計19病院で連携をとる態勢が組まれており、医療関係者は「妊産婦の緊急搬送の受け入れ拒否は起こりえない」と話している。
県内では2000年9月に、県立こども病院(安曇野市豊科)が、最重症の妊産婦や新生児の救命にあたる「総合センター」に指定された。病床数は163床で、スタッフは産科医6人、新生児を専門に診る小児科医8人、研修医4人。当直は、産科医1人、小児科医2人、麻酔科医1人に加え、医師2人が15分以内にかけつけられる態勢だ。
こども病院が年間に扱う約200件の分娩(ぶんべん)のうち、約130件は、他の医療機関からの緊急搬送。中村友彦センター長は「基本的に患者の受け入れを拒否することはない」と話す。
周産期救急には、母体救急、胎児救急、新生児救急の3分野があり、こども病院が担当するのは、胎児救急と新生児救急。今回のように、母親が脳出血を起こすなど、母体への治療が必要な場合は、信州大病院(松本市)に搬送する。
また、県内5地域に、それぞれ「地域周産期母子医療センター」が置かれており、比較的高度な治療を担当している。非常に危険な場合は、こども病院に搬送することになっており、2時間以内での搬送が可能という。
そのほか、帝王切開の必要な異常分娩に対応出来る13の「高度周産期医療機関」が「地域センター」に準ずる形で設置されており、計19病院で、正常分娩を扱う一般の病院や診療所からの緊急搬送を受け入れている。
事情があって緊急搬送を受け入れられない時は、責任をもって別の受け入れ先を探すことを申し合わせている。「病院が横のつながりを持って、リスクを分散させることが大切」(中村センター長)という。
一方、危険な状態だった母子の容体が安定した場合は、こども病院から他の18病院に転院してもらうことになっている。
ただ、県内でも、産科医の絶対数の不足や、分娩を扱う医療機関の減少などの問題は深刻だ。県健康づくり支援課は「現時点では各医療機関の連携がうまく機能していると思うが、今後、お産を取り巻く環境が変わる中で、今のシステムを維持していけるかが課題だ」としている。
(読売新聞、長野、2008年10月24日)
****** 朝日新聞、2008年10月25日
妊婦死亡 墨東病院のみ当直医不足
都内の9センター
脳出血をおこした東京都内の妊婦が八つの病院に受け入れを断られ、その後死亡した問題で、最初に受け入れを断った都立墨東病院(墨田区)だけが、都内9カ所ある総合周産期母子医療センターのうち、最低2人とされている当直態勢を確保できていなかったことが分かった。7月以降、当直が1人の土、日曜日、祝日の急患受け入れは原則断ってきており、「センターの機能を果たせていない」との声が出ていた。
総合周産期母子医療センターとは、危険性が高い出産や母胎管理のための地域の砦(とりで)的存在の医療機関。都の指定基準によると、24時間体制で産科を担当する「複数の医師」が勤務していることが望ましい、とされている。
都によると、墨東病院では6月に産科の非常勤医が辞めた後は2人での当直が維持できなくなり、7月以降は土、日曜日と祝日に限って1人で当直を担当していた。
このため、土、日、祝日の妊婦の急患受け入れは原則断り、平日でも2人の当直医のうち上席の医師が外部からの非常勤医の場合は「ハイリスク分娩(ぶんべん)の受け入れが困難なことがある」と地元の墨田区・江東区・江戸川区の産婦人科医会会員に伝えていた。
地元の医師たちは「医師不足のなかで、墨東病院も頑張っていた」としながらも、最近の状況については「センターとして機能しないのは異常」との声が出ていた。
しかし、墨東以外の8病院に朝日新聞が取材した結果、全病院で2人以上の医師を当直に配置。最大4人の当直を置く病院もあった。
都立病院の医師不足について、都病院経営本部は24日に開かれた都議会委員会で「都立病院は給与水準も低く、敬遠される傾向にあった」と説明。都によると、05年度の都立病院医師の平均給与は、47都道府県と14政令指定市の公立病院のなかで最下位だった。今年度から産科医については年収で200万~300万円上積みしたが、それでも中位程度とみられるという。
日本赤十字社医療センター(東京・渋谷)の杉本充弘・産科部長は「かつて都立病院医師の給与は平均的な在京病院より高かった。待遇が悪くて人がいなくなり、仕事がきつくなり、さらに人が来なくなっている」として、「こうした状況を招いた都の責任は大きい」と話した。
都は当直の基準を満たせていない墨東病院を総合周産期母子医療センターに指定し続けていることについて、「望ましくない状況にある」との認識を示しつつ、「大学などに依頼し、一日も早く元に戻したい」としている。
(朝日新聞、2008年10月25日)
****** 産経新聞、2008年10月25日
【妊婦死亡】墨東病院のみ今後も「当直1人」
東京の妊婦死亡問題で、切迫流産などリスクの高い妊婦を受け入れる総合周産期母子医療センター設置の都内の医療機関のうち、問題が発生した都立墨東病院(墨田区)だけが土日、今後も1人当直体制をとり続けることが24日、わかった。墨東病院は7月から週末の当直が1人態勢になり、基本的に搬送を受け入れていなかった。
都から総合周産期母子医療センターの認定を受けているのは全9施設。産経新聞が土日の当直体制について聞いたところ、8施設から回答があった。このうち、墨東病院は問題発生後も土日1人当直体制を続行。問題発覚後初めての土曜となる25日は、問題発生時の当直医と同じ現場研修年数を積んだ別の当直医1人が入る。
他の7施設は、杏林大医学部付属病院(三鷹市)が2~3人、東京女子医科大病院(新宿区)が2~3人、日赤医療センター(渋谷区)が3人、東邦大医療センター大森病院(大田区)が3~4人、昭和大病院(品川区)が2人、日大医学部付属板橋病院(板橋区)が4人、愛育病院(港区)が2人で、いずれも複数の当直体制を取ると回答した。
墨東病院は「人手不足はすぐに解決できない。2人体制を目指したいが、それができないのが現実」としている。
(産経新聞、2008年10月25日)
****** 毎日新聞、2008年10月24日
妊婦死亡:15病院が常勤医5人以下 全国の産科救急拠点
脳内出血を起こした東京都内の女性(36)が8病院に受け入れを断られた後に死亡した問題で、厚生労働省は24日、産科救急の拠点になる全国の「総合周産期母子医療センター」の医師数を公表した。産科の常勤医が、搬送拒否で問題になった都立墨東病院(墨田区)の3人と同数以下の病院はほかに5施設、5人以下は14施設あり、複数人の24時間対応が望ましいとする国の指針を守るのが難しい実態が浮かぶ。
民主党の厚労部門会議で示された資料によると、4月1日現在で、5月に開設した奈良県立医大病院を除く全国73カ所の総合周産期母子医療センターの常勤医は、産科が694人、小児科が394人。厚労省は96年に通知した整備指針で「24時間体制で産科医の複数確保」を求めているが、49施設が常勤10人以下、15施設が5人以下と、不足がまん延している。墨東病院より少ない常勤2人の病院も1施設あった。
受け入れ人数との関係では、母体・胎児集中治療室(MFICU)のベッド数より常勤医数が少ない病院は、墨東病院も含め26施設だった。指針で1人以上の24時間体制を求めている小児科は、38施設が常勤5人以下で、1人が4施設あった。
ただ、大阪大病院のように常勤医が3人しかいなくても、非常勤医が7人いるなどのケースもあるほか、非常勤医の人数を報告していない病院も多い。厚労省は「当直体制なども併せて早急に再調査し、勤務状況を把握したい」としている。【清水健二】
(毎日新聞、2008年10月24日)
****** 共同通信、2008年10月24日
常勤3人以下が6施設 周産期拠点病院の産科医
厚生労働省は24日、産科医療の拠点となる全国の「総合周産期母子医療センター」のうち、常勤の産科医数が3人以下なのは東京都立墨東病院を含め6施設に上るとの調査結果を公表した。妊婦(36)が複数の病院に受け入れを断られ、いったん拒否した墨東病院で死亡した問題を受け、同日開かれた民主党の厚労部門会議で同省が明らかにした。
センターの運営に関する国の指針では「当直時でも複数の産科医の確保が望ましい」としており、会議では「3人で当直を回すのは困難」との指摘が出た。
調査は4月1日時点でセンターに指定されていた73施設(現在は74施設)を対象に実施。
常勤医3人は墨東病院のほか、群馬県立小児医療センター(群馬県渋川市)、大阪大病院(大阪府吹田市)、国立病院機構岡山医療センター(岡山市)、宮崎大病院(宮崎県清武町)の4施設。2人は富山県立中央病院(富山市)。
国立病院機構岡山医療センターでは、3人の常勤医だけで当直をこなすのは困難なため、地元の開業医に協力を求め、計7人態勢で当直業務をしている。
厚労省は各センターでどのように当直態勢を組んでいるのか、近く実態を調査する方針。
総合周産期母子医療センターは胎児集中治療管理室などを備え、ハイリスクの妊婦を受け入れる。地域での産科医療の拠点的役割が求められ、24時間態勢で運営されている。
墨東病院が妊婦の受け入れを拒否したのは土曜日で、当時、研修医が1人で当直勤務をしていた。
(共同通信、2008年10月24日)
****** 共同通信、2008年10月26日
常勤医は4人と修正報告へ 岡山医療センター
東京の妊婦死亡問題を受けて厚生労働省が公表した全国の「総合周産期母子医療センター」の常勤の産科医数に関する調査結果について、国立病院機構岡山医療センター(岡山市)の青山興司院長は25日、「国の調査では3人となっているが、正しくは4人」と事実関係を明らかにした。
同センターは24日、共同通信の取材に、「当直は常勤と非常勤の医師に加え、地域の医師に協力を求め計7人態勢でこなしている」と説明したが、青山院長は「実際は常勤医4人に非常勤の医師4人を加え計8人で当直を回している。開業医に応援は頼んでおらず、他の医療機関からも緊急時を除いてはほとんど協力を求めていない」と話している。
(共同通信、2008年10月26日)
****** NHKニュース、2008年10月26日
搬送先探すシステム機能せず
脳内出血を起こした妊娠中の女性が東京都内の8つの病院に受け入れを断られたあと死亡した問題で、搬送先を探すシステムが機能しなかったことが明らかになりましたが、全国の3分の2の自治体でも、このシステムが十分機能していないことがわかりました。
この問題は、東京に住む36歳の妊娠中の女性が今月4日、脳内出血を起こし、都内の8つの病院から次々と受け入れを断られたあと、3日後に死亡したものです。搬送先を早く見つけられるよう全国の都道府県には、新生児の集中治療室のベッドの空き状況などを表示する「周産期医療情報システム」が整備されていますが、今回「空きがある」となっていた3つの病院は、満床などで受け入れられませんでした。こうしたシステムの問題が全国で起きていることが、お産前後の医療を担う拠点病院の協議会が去年9月、システムを整備していた42の都道府県を対象に行った調査でも裏付けられています。それによりますと「システムが機能している」と答えた自治体は12にとどまり、64%に当たる27の自治体が「十分機能していない」と答えました。機能していない理由を尋ねたところ、「情報が更新されない」が最も多く11、次いで「電話のほうが確実」が8、「ベッドがいつも満床でシステムの意味がない」が3で、運用がおろそかになり、システムへの信頼が失われていることがわかりました。救急医療に詳しい杏林大学医学部の島崎修次教授は「1日2回の更新ではリアルタイムといえないが、忙しい医師に頻繁に入力をさせるのは困難だ。こうした業務を行うコーディネーターを導入することなどが必要だ」と話しています。
(NHKニュース、2008年10月26日)
****** 中国新聞、2008年10月24日
産科救急、広島県内も窮迫 妊婦受け入れ拒否
現場「人ごとでない」 医師確保や搬送対策急務
東京都内の妊婦が都立病院などに受け入れを断られ、脳内出血を起こして死亡した問題で、慢性的な産科医不足に悩む県内の病院は「人ごとではない」と受け止める。高度な医療が可能な「総合周産期母子医療センター」などの医師の勤務は過酷で、専門医の確保や搬送を円滑化する対策が急務だ。
母体・胎児集中治療管理室がある「総合周産期母子医療センター」は、都道府県が指定する。県内は県立広島病院(広島市南区)と広島市民病院(中区)。両病院とも複数の医師が二十四時間態勢で交代勤務し、当直医一人だった都立病院より医師数は多い。
ただ、広島市民病院の「総合センター」主任部長の林谷道子医師は「このまま医師が増えない実態が続けば、広島でもいつ同様の惨事が起こるか分からない」と危機感を示す。
センターのベッド数は六十六床。昨年度は妊婦と新生児を合わせ計千六百五十一人を受け入れた。うち三百五十九人は三次、東広島など市外を含む他の産院から、妊婦または新生児が緊急搬送されたケースだった。受け入れられなかったケースは昨年七件。いずれもベッド数が満床だったためだ。
診察に当たる医師は十六人。夜間は新生児担当二人、産科医一人が当直する。林谷医師は「特に新生児担当の勤務実態はきつい。経験年数が六年以下の三人を含めて六人しかいないため、宿直は三日に一度の頻度。一人でも倒れたら回らなくなる」と明かす。
「総合」に準ずる高度医療を担う「地域周産期母子医療センター」は県内に七カ所ある。JA尾道総合病院(尾道市)の黒田義則院長も「産科医の絶対数が足りない。がけっぷちで踏みとどまっている」と訴える。
過疎地の実情は厳しい。年間約五百人の分娩(ぶんべん)を受け持つ三次市立三次中央病院の大谷清事務部長は「断ったら患者は行くところがない。どんな状況でも受け入れざるを得ない。絶対的な使命」と強調した。
中核病院にコーディネーターを置く制度を望む声もある。連絡窓口となって病状を的確に把握し、搬送先の病院を指示するのが役割。大阪府が昨年、千葉県が今年に設けた。
中国労災病院(呉市)は「明確な要請があれば受け入れ準備の態勢を取りやすい」と県に設置を求めている。【藤村潤平、田中美千子、永里真弓】
(中国新聞、2008年10月24日)
****** 毎日新聞、埼玉、2008年10月25日
記者日記:産科医不足の悲劇
身につまされる問題が東京都で起きた。妊娠中に脳内出血を起こした36歳の女性が複数の病院に受け入れを断られ、手術3日後に死亡したことだ。私の妻も妊娠中で、現在9カ月。さいたま市内の病院で診察を受けているが、もし何かあって転院になれば、県内の大病院はちゃんと対応してくれるのか不安になる。
この問題の背景に産科医不足が挙げられる。産科医を取材したことがあるが、緊急のお産や手術もあり帰宅は遅く、宿直も多かった。「お産は成功して当たり前と思われ、何かあれば訴訟になる」と嘆く。これは体力、気力面からも過酷な仕事だと思った。産科を選ぶ若い医師が少なくても不思議ではない。
しかし、この状況が続いていいわけがない。特別に報酬を補助したり、医療設備を整えるなど、国は産科医を増やすための対策を急ぐべきだ。奈良で妊婦が長時間転送されず死亡したのは06年。同じ問題が何年も繰り返されるようなら、行政に対し訴訟を起こしたい気持ちだ。【桐野耕一】
(毎日新聞、埼玉、2008年10月25日)
****** 朝日新聞、2008年10月24日
厚労相、墨東病院を視察
妊婦死亡めぐり実態調査
脳出血を起こした東京都の妊婦(36)が8病院に受け入れを断られ、その後死亡した問題で、舛添厚生労働相は24日午前、いったん要請を断ったが最終的に受け入れた都立墨東病院(墨田区)を訪れ、新生児集中治療室(NICU)などを視察した。事態を重くみて、厚労省と都が共同で調査を実施した。
舛添厚労相は視察後、記者団に「一番構造的な問題は医師不足。今後、全国のセンターについて現状を把握したい」と述べた。また墨東病院で当時、当直の産科医が1人だったことについて、「開業医のみなさんに支援してもらうのも手。緊急策として地域の人材を総動員する必要がある」とした。
今後、ほかの7病院にも同省と都が調査する。
舛添厚労相はこれに先立ち、閣議後会見で「ERの設置の仕方など東京都には改善してもらわないといけない問題が山積している」と指摘。また報道機関の取材で発覚するまで問題発生を国に報告しなかった都の姿勢について「とてもじゃないけど、都に任せられない」と批判した。
(朝日新聞、2008年10月24日)
****** m3.com医療維新、2008年10月24日
救急医療の危機◆Vol.10
妊婦搬送問題で、舛添大臣が都立墨東病院を視察
「医師不足が原因」と指摘、全国の総合周産期母子医療センターの実態調査を指示
橋本佳子(m3.com編集長)
舛添要一・厚生労働大臣は10月24日午前、東京都内の妊婦(36歳)が8施設に受け入れを断られ、出産後、脳内出血で死亡した問題で、最終的に受け入れた東京都立墨東病院を視察、病院関係者と話し合いを行った。
会議自体は非公開だったが、会議後、舛添大臣は下記のように述べ、この問題の根本原因が医師不足にあること、また他の総合周産期母子医療センターでも医師不足が懸念されることから、今回の件を限定的なものにとどめず、全国的な問題ととらえ、実態調査を指示した。一般紙が今回の問題を最初に報道したのは10月22日のこと。医師不足問題に危機感を抱く舛添大臣の異例の迅速な視察となった。24日の午後には、都の関係者などへの調査も行い、今後の対応を検討する予定。
会議に出席したのは、病院側は、小林剛病院長をはじめとする病院幹部と東京都の関係部局責任者の計10人。厚労省側は舛添大臣や外口崇・医政局長ら計7人。会議の冒頭、小林氏は「いろいろと心配をおかけした。話し合いをさせていただき、いい方向に持っていきたい」と挨拶。舛添大臣も、「全国的には産科、小児科、そして救急医療などでの医師不足がある。今回の件では、医師不足、産科と救急医療の連携など、様々な問題が浮かび上がった。今回のことを大きな教訓として何をすべきかを議論したい」と述べた。
【視察後の舛添大臣の記者会見の内容】(代表質問者とのやり取り)
――どのような説明を受けたのか。
今回の件について、どんな経過であったのかということと、会議の冒頭で私が言ったように、基本的には医師不足が最大の問題であるので、今の墨東病院の現状がどうなっているのか、特に各科の医師や看護師などについて議論した。NICUなども視察した。
――今日の閣議後の記者会見で「東京都の責任もある」という趣旨の発言をしたが、墨東病院は都の東側の大きなエリアをカバーしている。医師配置など、東京都の施策についてどう考えているのか。
第一義的には、医療、介護は地域に密着すべきものなので、地域にがんばってもらう。しかし、国、東京都も含め、皆で力を合わせてやっていかないといけない。救急医療であれば、第3次救急、総合周産期母子医療センター、これらがなければ「最後の砦(とりで)」がなく、医療体制が確立しない。
やはり一番構造的な問題は、医師の不足。あと1~2人産科医がすぐにここに来ればほとんどの問題は解決する。(産科医不足の対策は)短期的、長期的の両方でやっているので、さらに何かできることがあれば工夫してやりたい。
総合周産期母子医療センターは全国に70数カ所あるが、現実にどんな状況にあるのか、何人くらいのスタッフで回しているのか。墨東病院では7月から産科医が減り、当直を2人体制から1人体制にするという苦肉の策でやっていると聞いた。同じような状況にあるセンターがどの程度あるのか。あるのであれば、改善が必要。また例えばこの地域の開業医の協力を得るなど、様々な地域でいろいろな取り組みをやっている。今まさに困っているのだから、その手を打つために現状把握をやる。
――今まさに手を打っていく中で、どのような工夫が考えられるか。
例えば、当直が1人体制であれば、地域の医師会の協力を得て、地域の開業医にサポートに入ってもらう。それが一つ。
また今、臨床研修制度の改革を進めている。今日、明日に変えられるものではないが、例えば今、案として出ているが、研修期間を2年から1年にすれば、8000人の医師が生まれることになる。
緊急策として、それぞれの地域で持っている医療資源、特に開業医の先生方を含め総動員してやるしかない。
――今朝の閣議後の記者会見で「大臣への報告が遅れた」ということも言っていたが。
マスコミの報道が先になった。この部分も含め、今日の午後に、都などからもっと細かい調査を行う。今日はむしろ産科体制の不備、特に医師不足、NICUの不足の状況を見に来た。
(m3.com医療維新、2008年10月24日)
****** NHKニュース、2008年10月25日
医師会 2月に都に改善要望
妊娠中の女性が東京都内の8つの病院から受け入れを断られたあと死亡した問題で、最初に受け入れを断った都立病院の産科医不足を解消するよう地元の3つの医師会が、ことし2月の時点で東京都に文書で要望していたことがわかりました。
この問題は、東京の妊娠中の女性が今月4日、脳内出血を起こし8つの病院から受け入れを断られたあと3日後に死亡したものです。このうち受け入れを最初に断った都立墨東病院は、緊急の治療が必要な妊娠中の女性を受け入れる医療機関に都から指定されていますが、常勤の医師が5年前から定員割れとなり、ことし7月からは産科の当直の医師が1人だけという事態になっていました。こうした状況に危機感を抱いた地元の墨田区や江東区、それに江戸川区の3つの医師会が、墨東病院の産科医不足を解消するよう、ことし2月の時点で東京都に文書で要望していたことがわかりました。要望では産科医が減り続けている原因を明らかにしたうえで、大学病院からの医師の受け入れ方法を再検討するよう求めていました。都は「要望はしんしに受け止め、実現に向けて協議をしているところだ」としていますが、これまでのところ明確な回答はしていないということです。要望書を出したうち江戸川区医師会の徳永文雄会長は「都から回答がないことは疑問に思うが、都だけで簡単に解決できる問題ではなく、国を含めて産科医の解消に努めてほしい」と話しています。
(NHKニュース、2008年10月25日)
****** NHKニュース、2008年10月24日
全国の施設で当直医師不足
脳内出血を起こした妊娠中の女性が東京都内の8つの病院から受け入れを断られたあと死亡した問題で、NHKが全国の「総合周産期母子医療センター」を調べたところ、3分の1以上に当たる26施設で、医師不足などが原因で当直の医師が1人になるケースのあることがわかりました。
この問題で、受け入れを断った東京都内の8つの病院の中には、お産前後の周産期にリスクの高い医療に対応する「総合周産期母子医療センター」が3施設含まれていました。このため、NHKは全国に74ある「総合周産期母子医療センター」を対象に患者の受け入れ態勢を調査し、71施設から回答が寄せられました。この中で、夜間、何人の医師が当直しているか尋ねたところ、全体の37%にあたる26施設が、医師が1人で当直することがあると答えています。厚生労働省の指針は、夜間も産科を担当する医師が2人以上勤務していることが望ましいとしていますが、ほとんどの病院では、医師不足で配置できないとか、緊急のときには呼び出しで対応すると答えています。問題の再発を防ぐため何が必要か尋ねたところ、26施設が「医師不足の解消」をあげました。このほかには、救急の患者を必ず受け入れる病院を地域ごとに設けるべきだという意見や、産科が脳神経外科などほかの診療科と連携して母親の病気に対応するべきだという意見が多くなっています。
(NHKニュース、2008年10月24日)
****** NHKニュース、2008年10月24日
妊婦死亡 厚労省と都が調査へ
脳内出血を起こした妊娠中の女性が東京都内の8つの病院から受け入れを断られたあと死亡した問題で、厚生労働省は24日から東京都と合同で本格的な調査を始めることになりました。受け入れを断った病院から当時の状況を詳しく聞き取り、原因の解明を進める方針です。
この問題は、東京に住む36歳の妊娠中の女性が、今月4日、脳内出血を起こし、都内の8つの病院から次々と受け入れを断られたあと3日後に死亡したものです。事態を重くみた厚生労働省は、24日から東京都と合同で、受け入れを断った8つの病院に担当の職員を派遣し、本格的な調査を始めることになりました。これまでの調査で、最初に受け入れを断った都立墨東病院は、リスクの高い妊婦を受け入れる総合周産期母子医療センターに指定されているにもかかわらず、常勤の医師はわずか4人で、週末の当直には1人しか充てられなかったことがわかっています。また、ほかの病院も、新生児の集中治療室に空きがなかったり、当直の医師が別の患者の対応中だったりして、受け入れを断っていたということです。このため厚生労働省は、当時の診療態勢やベッドの空き状況、それにほかの診療科との連携などについて病院から詳しく聞き取り、原因の解明を進める方針です。厚生労働省が直接、医療機関から事情を聞くのは異例のことで、今後、原因を分析し再発防止策を検討することにしています。
(NHKニュース、2008年10月24日)
****** NHKニュース、2008年10月24日
妊婦死亡 厚労相が病院を訪問
脳内出血を起こした妊娠中の女性が、東京都内の8つの病院から受け入れを断られたあと死亡した問題で、舛添厚生労働大臣は、24日午前、女性の受け入れを最初に断った東京・墨田区の病院を訪れ、当時の状況について院長から説明を受けました。
厚生労働省は、問題の原因究明と再発防止策を検討するため、24日から東京都と合同で本格的な調査を始めることにしており、午前中は、舛添厚生労働大臣が、女性の受け入れを最初に断った東京・墨田区の都立墨東病院を訪れて、小林剛院長から当時の状況について説明を受けました。舛添大臣は、冒頭、「妊娠中の女性が死亡するというたいへん不幸なことが起こった。全国的な医師不足のなか、緊急医療体制をきちんとしていくため、教訓としていかなければならない」と述べました。これまでの調査で、都立墨東病院は、リスクの高い妊婦を受け入れる「総合周産期母子医療センター」に指定されているものの、常勤の医師は4人で、当時、当直の医師が1人しかいなかったことがわかっています。病院側の説明を受けた舛添大臣は、記者団に対し「いちばん構造的な問題は、医師不足だ。短期的・長期的にさらに何かできないか考えたい。例えば、当直の医師が1人でどうしようもないなら、地域の開業医にサポートしてもらうのも手だ。また、臨床研修の見直しを行い、現場に出る医師を増やすなど、あらゆる手を総動員してやっていく必要がある」と述べました。
(NHKニュース、2008年10月24日)
****** NHKニュース、2008年10月24日
厚労相“東京に任せられず”
舛添厚生労働大臣は、閣議のあとの記者会見で、脳内出血を起こした妊娠中の女性が東京都内の8つの病院から受け入れを断られたあと死亡した問題について、国に情報を上げてくるのが遅く、「とても東京都には任せられないという思いだ」と述べ、東京都の対応を批判しました。
この中で、舛添厚生労働大臣は「問題が起きてから2週間も東京都から厚生労働省に情報が上がってこなかった。総合周産期母子医療センターに、週末、当直の医師が1人しかいないことについても、もっと早く『何とかならないか』と伝えてくるべきだ」と述べました。そのうえで、舛添大臣は「文句を言うときだけは、『国は、しっかりしろ』と言うが、問題があったときに情報も上げないで、言われてもどうしようもない。わたしがやっていることが完璧だとは言わないが、とても東京都には任せられないという思いだ」と述べ、東京都の対応を批判しました。一方、東京都の石原知事は記者会見で「医師不足を招いたのは国だ」などと述べ、今回の問題の大きな責任は国の医療行政にあるという考えを示しました。石原知事は「今回は妊娠した女性が脳内出血を起こし、出産とも重なるというレアケースだが、医師の数が多かったらここまで至らなかったかもしれない」と述べました。そのうえで、石原知事は「国に任せていたら産婦人科と小児科の医師の絶対数が足りなくなった。こういう事態を招いたのは国であり、国にこそ任せられない」などと、厚生労働省の医療行政のあり方を強く批判しました。
(NHKニュース、2008年10月24日)
****** 毎日新聞、2008年10月24日
妊婦受け入れ拒否死亡:厚労相、異例の視察 都立墨東病院病棟など
脳出血を起こした東京都内の女性(36)が8病院に受け入れを断られた後に死亡した問題で、舛添要一厚生労働相は24日、最初に搬送を拒否した都立墨東病院(墨田区)を視察した。厚労相が事故直後に現地の病院を視察するのは異例の対応。
舛添厚労相は、産科病棟や併設されている一般救急対応の「東京ER(救急治療室)」などを視察した後、「周産期に対応する全国の病院がどの程度のスタッフで勤務を回しているか把握し、墨東病院と同じようなら改善したい」と述べた。
墨東病院はリスクの高い妊婦の救急治療を担う「総合周産期母子医療センター」に指定されているが、当日は研修医が1人しかおらず、国の整備指針を満たしていなかった。舛添厚労相は「今回の問題は、基本的には医師不足。(開業医など)それぞれの地域で持っている医療資源を使って対応するしかない」との認識を示した。
また、視察前の閣議後会見では「こういう事故が2週間も厚労省に情報が上がってこないのは何なんだ。週末に当直が1人しかいないのに周産期医療センターだと言うのは羊頭狗肉(くにく)で、国に相談してこなかった都にも大きな責任がある」と都を厳しく批判した。【清水健二】
(毎日新聞、2008年10月24日)
****** 毎日新聞、2008年10月24日
妊婦死亡:「国こそ反省を」石原都知事が厚労相に反論
都立墨東病院などの搬送拒否問題で、東京都の石原慎太郎知事は24日、都の対応を批判した舛添要一厚生労働相の発言について「厚労省の医療行政が間違ってきて、お医者さんがこういう体たらくになった。こういう事態を作ったのは国じゃないですか。反省してもらいたいのは厚労省で、担当の大臣様だね」と反論した。
石原知事は死亡した女性(36)のケースについて「これは医療事故じゃない。それだったら国に報告する責任があるが、(最終的に)ER(救急救命室)で処置している。お産というのは非常に危険な作業で、今度の場合はレアケースだった。そういう事態を踏まえてものを言ってもらいたい」と発言。そのうえで舛添厚労相を「年金の問題でも大見え切るけどいつも空振りする。もっと頭を冷やしてものを言ってもらいたい」と批判した。【須山勉】
(毎日新聞、2008年10月24日)
****** 産経新聞、2008年10月24日
【妊婦死亡】石原知事「舛添くん、反省しろ」
東京都の石原慎太郎知事は24日の定例会見で、都内で脳内出血を起こした妊婦(36)が8病院に受け入れを拒否され、死亡した問題について、舛添要一厚生労働相が「都に任せられない」と発言したことに対し、「反省してもらいたいのは厚労省で、今担当のその大臣様だ」と反論した。会見の詳報は次の通り。
--墨東病院で妊婦が死亡した問題で、舛添厚労相が「都には任せられない」と発言したが
「と、いうところまでは承知している。その後のところが大事なんだよな。あの人はね、大見得(おおみえ)きったつもりでいつも空振りするけどね、今度も現場に行ってですね…まあ、こういう発言するときは、現場を踏んでね。起こった事態の事実ってものをちゃんと分折して掌握したうえで物を言ってもらいたい。一国の大臣なんだから」
「年金の問題でもいつも大見得切るけど、いつも空振り。結局なんか、彼が国のけしからん役人を代弁してるみたいな印象にしか写らないじゃないか。今度も何の思惑か知らないけどね、病院に行って事態聞いたあとで、話随分トーンダウンしたじゃないですか。しかもですな、事態を掌握していない証拠はね、これは医療事故ではないんですよ。それだったらね、ただね、お産というのは非常に危険な作業でね、かつて昭和30年代のはじめのころには死亡率が高かった。今まあ、その10分の1に減りましたがね。そういう今度の場合は非常にレアケースでね、妊婦ご自身が脳出血をした。これは30歳代半ばは、そういう事故が割と頻発する年代らしいんだけども、具合悪いことに出産と一緒に重なりましてね。当人は自分に何が起こっているのかわかりっこないんだから。頭が痛い、痛いっていうのに、『私、脳出血です』とは言わないよ。それは医者が判断すること」
「しかし、その頭痛に関してどういう会話があったかわからんけどね。結局、最後は脳出血で手術をしたわけでしょう? ですから、そういう事態を踏まえて物言ってもらいたいんでね。東京に任せてられないんじゃない。国に任せていられないんだよ。厚労省の医療行政が間違ってきて、お医者さんがこういう体たらくになった。足りない。足りないだけじゃなしに、まあ、高福祉高負担というのは当然だけど、日本の場合には高福祉低負担だ。それがまかり通ってね、患者も非常に注文が多くなって、お医者さん非常に苦しい立場で。昔はなかったような医療裁判にさらされて、だんだんなりたい人がなくなってきた。こういう事態つくったの国じゃないですか。国に任せていられないんだよ。誰がやったんですか?国に任してたからこういうことになっちゃったんだよ。反省してもらいたいのは厚労省で、今担当のその大臣様だね。物言うならもう少し冷静に頭冷やして物言った方がいいと私は思いますけども」。
--新しい取り組みは考えているのか
「これはね、本当にレアケースなんですよ。ですからね、こういう万が一の事態ってのはなかなか想定しにくいんでね。それでもやっぱりお医者さんの数が多かったら、ここまで至らなかったかもしれない。それに医者の数増やすのは国の責任だから。東京は東京なりにですね、いろんな誘致をしてますよ。だから、他の県からうらまれているフシがあるけど、それでも絶対数が足りないんでしょ。赤ん坊を産む産科と、産んだ子供を育てる小児科がね、絶対的に医師が足りないということはね、これやっぱり国の責任じゃないですか。舛添くんしっかりしてもらいたいよ、ほんとに。あまり国に任してられないね」
(産経新聞、2008年10月24日)
****** スポーツ報知、2008年10月25日
石原都知事「医師不足は国の責任」vs舛添厚労相「都にも責任」…妊婦死亡問題
脳内出血を起こした東京都内の妊婦(36)が8病院に受け入れを拒否され死亡した問題で、石原慎太郎都知事(76)と舛添要一厚生労働相(59)が24日、舌戦を繰り広げた。舛添氏は午前の閣議後の会見で、「死亡から2週間以上も報告があがってこないのはどういうことか。都にも責任がある」と都の対応を痛烈に批判。これを受け、石原氏は午後の定例会見で「こういう事態をつくったのは国じゃないか」と応酬し、舛添氏を名指しして「大見
もうひとつの点は、もちろん東京のど真ん中でも産科医が不足しているという事実です。管理人さんの地域などの地方はもっと悲惨だという事を広く知って頂く事が先決です。
狭い地域に人口が密集し、多くの医療機関があり、交通の便がいい大阪と比べて、当地域の場合は、広い面積、少ない人口、少ない医療機関、陸の孤島という特徴があり、大阪と同じ考え方では到底やっていけません。
飯田下伊那地域の面積:1929平方キロ
大阪府の面積:1893平方キロ
香川県の面積:1875平方キロ
飯田下伊那地域の人口は約18万人と少ないのですが、面積は大阪府や香川県よりも広いです。当地域の総分娩件数は1500~1600件程度です。また、交通の便が悪いので、医療はある程度までは地域で完結させる必要があります。現在、分娩は3施設で取り扱ってますが、数年以内に1施設のみに集約されるのは間違いない情勢です。かじ取りを間違えればすぐに医療崩壊へまっしぐらです。
長野県ではどこの医療圏も似たような厳しい情勢です。各医療圏の独自の頑張りだけで生き残っていくのは難しく、信州大学を中心にして、みんなで一致協力して前進して行くしかないと考えています。
いずれにせよ、先生がいつも主張されているように、人集めのためには待遇の大幅改善が必要だと思います。
今後ともよろしくお願い申し上げます。
また、関西の丹波地方の県立病院では小児科医が1人しかいなく、その先生も退職予定となり大問題となりました。しかし、住民が立ち上がり、コンビニ受診の自制、小児科医への感謝の気持ちを伝える、待遇面での改善、などを行い現在では常勤医4名になっているとの事です。
私は常勤医1人あたり月10分娩を目標にしていましたが、上記の産婦人科では何と1人あたり3分娩です。この事実を聞いた時には正直衝撃を覚えました。このように驚くような、予想を超えた待遇改善を行えば、自然と医師は集まるのです。全国的な医療崩壊を食い止めるには国民が驚くような医療費の引き上げを断行(つまりかなりの国民負担増)するしかないと思います。
医療崩壊を受け入れるか、安心な医療を手にするか。すべては国民の判断にゆだねられていると思います。
墨東病院の場合、総合周産期母子医療センターに指定された時点では、おそらく、人員も十分に整備されていたと思いますが、その後に常勤医数が減ってしまい、残された医師達への負担がどんどん限りなく増大している状況と推察します。
大学の関連病院でないと、誰かが辞めてもどこからも欠員が補充されず、常勤医数が減ったら減りっぱなしです。職場環境はいったん悪化し始めたら、ますます悪化する一方です。現場の医師達には、一緒に戦う仲間を増やす手段が何もありませんから、このまま現場に残って最後の一兵卒になるまで少ない戦力で戦い抜くのか?あるいは、黙って現場から立ち去るのか?の二者択一を迫られます。
一緒に頑張ってくれる仲間が増えたら、絶対に何とかなります。ですから、『大学ともうまく連携して、一緒に戦う仲間を増やし、みんなで楽しく頑張っていけるような職場環境をつくりたい。そして、次世代にいい形でバトンタッチしたい。』というのが今の私の心境です。
今後ともよろしくお願い申し上げます。
最近、私たちは日本で初めて医師派遣事業を開始し、テレビ局2局が11月放映に向けて取材中です。しかし、その取材姿勢は私から見ると相変わらず的外れです。また、私たちは産科医の待遇改善を成し遂げてきましたが、まだまだ不十分のようです。これ以上の待遇改善をする為には、分娩費の大幅な引き上げ(1分娩100万円?)が必要と痛感しています。
現在の医療崩壊の根源は医師数を抑制し、医療費を引き下げて来た事にあります。つまり国の失政に由来しているのです。その事をもっと素直に認識し、早急に大幅な医療費引き上げを行うことが必要です。しかし、今の政府や国民の認識でその事が実行出来るかと言えば、まず不可能でしょう。