最近数年間で、県内の非常に多くの産科施設が分娩取り扱いを中止しました。さらに近い将来に分娩取り扱いを中止せざるを得ないだろうと予想される病院も少なくありません。分娩取り扱い施設数は全県的に急減し続けていて、近い将来に産科施設が全滅しかねない医療圏もいくつか出てきました。
今、急速に進行している産科医療の崩壊は、全国的、全県的な現象であり、一人の医師や一病院の取り組みで打開できるような問題ではありません。
現場の産婦人科医達が職場放棄せざるを得ない極限状態になるまでとことん放置すれば、最悪の場合、県内の病院の産婦人科が全滅してしまうかもしれません。全滅してしまってから、一から立て直すのは大変なことですから、手遅れにならないうちに、国や県が強力な指導力を発揮して将来残すべきいくつかの重点化病院を決定し、残すべき病院がちゃんと残るように対策を講ずる必要があると思います。
集約化・重点化によって産婦人科が消滅してしまう地域には、負担を強いることになってしまうかもしれません。このことで地域住民の理解・納得を得るのは非常に難しいかもしれません。しかし、一人医長の産婦人科を県内に万遍なく点在させて、県内すべての地域で産婦人科がどんどん消滅してしまえば、かえって住民のためにはならないと思います。
*** 医療タイムス社、長野、2006年12月25日
「このままでは産科2次医療は崩壊する」
県地域医療対策協議会で信大産婦人科・金井講師
信大医学部産科婦人科講師の金井誠氏は22日の県地域医療対策協議会(会長・渡辺康子県衛生部長)で、県内の産科医療体制について、「このままでは2、3年以内に産科の2次医療体制は崩壊する」との懸念を示し、早急に産科医の重点化などの対策をとる必要性を強調した。これに対し、委員からも地域内で機能分担する必要性を指摘する声が相次ぎ、産科と小児科医療体制の集約化・重点化の軟着陸をめざす方針を確認した。
「県産科・小児科医療対策検討会」の委員を務める金井氏は、これまでの検討状況を報告する中で、勤務医が疲弊しきっている県内の産科体制を説明した。金井氏によると、現在、県内には分娩を取り扱っている医療施設は53施設あるが、この5年間で23施設、特に最近1年間で11施設減少したという。さらに来年は2次医療を担っている2病院の産科部長が離職、1病院が廃止、2病院が分娩制限をせざるを得ない状況になっているという。
また、県内は病院での出生割合が7割を超えるが、金井氏は「2次病院といえども産科医は2~3人で、年間300~500件の分娩を扱い、さらに帝王切開や手術、外来も対応している。これが2次病院の現状。若い医師からは『現状の勤務状況は限界』との声があがっており、産科医は限界を超えて使命感だけで患者を受け入れている。このままでは2、3年以内に県内の産科2次医療は崩壊する。この数年のうちに何か手を打たなければならない」と訴えた。
県内の産科体制を維持するための方策として金井氏は、「本質的な解決策は産科医を増やすしかない」と前置きした上で、当面の対策として ①医事紛争の問題解決 ②高次病院への産科医療の重点化 ③報酬面での優遇 ④助産師のサポートシステムの確立-をあげた。このうち「重点化」については、県内を2次医療圏にとらわれず、いくつかのブロックに分けて、そのブロックごとに産科医を重点配置する病院を作り、そこから地域病院に産科医を派遣するシステムを構築するもので、「将来的な理想の医療と言っているわけではない。緊急避難的な対策として行うべき。(重点化により)不便な思いをする住民もいると思うが、このままでは産科体制が崩壊する」と述べ、重点化に理解を求めた。
(以下略)
(医療タイムス社、長野、2006年12月25日)
しかし、暇なときだからゆっくりしていられるかといえばそんなことはありませんでした。
いつ呼ばれるかもしれないという恐怖との戦い。
これが一番つらかった。特に私は1st callでしたから、循環器疾患が疑われたら真っ先に呼ばれました。呼ばれてから30分以内に駆けつけなければならないことになっていましたが、循環器疾患はいつ何時急変しないとも限りませんので1分1秒でも早く駆けつけなければなりませんでした。
そのために、何をしている時も「呼ばれるかもしれない」と常に考えています。食事中、子供と入浴中、就寝中など。外食をしようと車を走らせているときに呼ばれたことも何度もありました。
そんな状況ですから、日曜日でさえ家族そろって遠出なんて出来ませんでした。銭湯にいくのもためらわれます。(入浴中で携帯電話が手元に無い時に連絡があったら困るから)
(唯一4-5日間の夏季休暇は大丈夫でしたけど)
そういうことですので、職場に居ないからといってゆっくりとしていられるわけではありません。
まさに奴隷ですね。今後はそんなことするつもりはありません。モチベーションが下がってしまった馬鹿馬鹿しいしので。
一人医長の勤務時間は分娩待機時間全てですから、月に24時間*30日=720時間です。外来診療・病棟回診・分娩などの実働時間は私の場合、平日1日4時間、休日1時間の週22時間でしたので月100時間程度になります。年間180件の分娩数でした。
この記事を見ると何だか産婦人科医はあまり働いていないような印象を受けるんですけど、産婦人科医はこのくらいしか働いてないとアピールしてるんですか?毎日新聞さんよ、、