銀座松坂屋で行われている「保田勝久」展に知人のご案内で行った。
保田さん(写真中央)とは初対面だったが、色々の話に花が咲き、楽しい時間を過ごした。
保田さんは、「木葉天目」という手法の第一人者として大作のお皿やお茶碗を作る陶芸作家であることを知り、個展会場で売られている作品は、どれも美術的価値のある高価な品々であった。
「目の保養」をさせていただくしかなく、申し訳ないなと思いながら、保田さんの明るく大らかなお人柄に惹きこまれてお話を伺う事が出来た。
木葉天目の名の通り、陶器表面の釉の上に「木の葉」そのものを直接焼き込んで模様とする技法で、この「木の葉」に何を使うかが最大のわたしの関心事であり、質問をさせていただいた。
イチョウ、さくら、樫、けやき、など思いつくままに訊ねたが、それぞれの葉の特質があり、たくさんの失敗を繰り返しながら、もっともふさわしい木の葉に辿り着いたことを話して下さった。
美しい葉脈を残しながら、葉っぱの形や色を再現していく……、ここにも自然から命をいただいて作品に写し込んで行く人がいたとの思いがよぎった。葉っぱまかせの気の遠くなるような手仕事である。
保田さんのこれぞと思う葉っぱを持つ木の名前を伺ったが、なぜか思い出せないけれど、その葉っぱが住まいの近くには無くて、市川の住宅地を歩いているときに見つかり、何度かその家を訪ねたがあいにくの留守。保田さんは我慢が出来なくて、塀に張り出した葉っぱをチョキチョキといただき、用が足りなくなって、何かを近所のお店に買いに行って、その道具を使ってまたチョキチョキ。この何かが枝切りはさみだったのか脚立だったのか、ここの部分も声が遠くて上手く訊き出せなかったのが残念だけれど、夢中になって、結果その木を丸裸にしてしまい、家の人が帰ってきて大目玉を食らい、後日談として、奥様が天目茶碗を持って伺い、「主人は怪しい人間ではありません」と、平身低頭謝り、事なきを得たとか。
何とも楽しそうにご夫妻で話され、天真爛漫な陶芸家と内助の功の奥様との話題に花が咲いた。
保田さんの経歴も面白く、経営コンサルタントから45歳で陶芸家に転進されたとか。極めた人からの作陶風景の一端を伺う事が出来て、いい時間を過ごさせていただいた。