無知の涙

おじさんの独り言

ハイスクール落ガキ「社会科見学1」

2010年01月11日 | 思い出
なんだか今までの2週間あまりが嘘のように、いきなりクラスに溶け込めてしまった僕。


これで休み時間に寝たくもないのに寝たフリしなくて良いんだ。


いやぁ、停学もなってみるもんだね。


そして相変わらずなフテブテ君とアホな話しをしながら、僕らが社会科見学に向かった先は・・


とあるパン工場。



あのう、ここ小3の社会科見学で来たんですけど。


「なぁ」と僕はフテブテ君に言った。「俺ここ小学生の時に来たわ」


「マジか。パンもらえた?」とフテブテ君。


そうして200人近い高校1年生相手に、やけにテンションの高い工場長がパンを作る過程を説明してゆく。


もちろんほぼ誰も真剣に聞いてやしない。

そんな僕らの態度を見て担任の女教師が吠える。

「ねぇ!あんたたちっ!ちゃんと工場長の話しを聞きなさいよ!!ほら!イースト菌よ!ほら見なさいよ!あんたたちィィィ!」


いちばん工場長の邪魔をしてる女教師。


 
そうこうしていると、遥か後ろに他の学校からの見学生が見える。

そう、たくさんの小学生たちが。


見学時間をズラしてるものの、やはり折り返して戻る時に接近してしまう。


明らかに我々の個性的な容姿を見て恐怖を抱いてる小学生たち。そして完全に警戒体勢に入る引率の先生たち。


恐怖、警戒、敵意、蔑み、そういった目で見られるのは日常茶飯事だし、もちろん自業自得だし、もうとっくに慣れてしまっているが、こういう風に団体として見られると少し恥ずかしいと思った。


そんな雰囲気のなかフテブテ君が問い掛ける。

「なあ、さっきから気になってんだけど」

まぁこうも悪人扱いされると気になるよな。

「パンもらえんのか?」

おまえもう帰れ。



もはや見世物と化して出口を目指す。

女教師が近くに来た時に聞いてみた。

「なんでパン工場なんですか。小学校で来る場所ですよ」


「小学生でパン工場なんて、むしろ早いと思うわよ。小学生でパン作ってる過程見たって、美味しそうだとかそんな客観視しかできないでしょう。でもアンタたちくらいになれば役に立つわよ。パン工場で働くときとか。」


働かないから。


そうしてようやく出口に着く。

出口では工場長が満面の笑みで生徒たちにパンを配っている。

フテブテくんもパンを貰ってはしゃいでいた。

そんな光景をなんとなしに見ていると、女教師が僕の横に立った。

「アンタ小学生の集団から見られて恥ずかしいと思ったんでしょう」

「そんなことないス」

「中途半端ね」と女教師が言った。

「中途半端?」と僕は聞き返した。

「そうよ。少なくとも他の連中は恥ずかしいなんて思ってないわ。それが正しいとは言わないけどね。ただ悪いとさえ気付かず変えない人間、悪いと知りつつ変えない人間。私は後者の方が人間として悪いと思うわ。まぁ少なくとも後悔しないように今を生きなさい。」


痛いとこをつきやがる。
半年前なら疑問にさえ思わなかった。

自分の弱さ、自分の愚かさ大人の強さ。

それを、とある先生が僕に諭してくれたのだ。

先生…


「おーい」とフテブテ君が僕の名を呼びながら近づいてくる。

「ほら」と言ってフテブテ君は僕にパンを差し出した。


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