無知の涙

おじさんの独り言

ハイスクール落ガキ「留年決定!?」

2010年08月16日 | 思い出
停学が明けた。

先生から確認の電話を取った後、学校行ってない友達の家で他の友達が帰って来るまで桃鉄をやるのが僕の日課だった。

久しぶりの学校。
他クラスのフトシ君とも仲良くなれたし、だんだん楽しくなってきた。

隣の席の女の子とも仲良くなれた。

だが、フリーターの道を選んだ友達がスーパーファミコンを買ったせいで、僕はファイナルファンタジー4に夢中になり、休みがちになっていた。


そうして時は過ぎ、期末試験も終わり、世間は夏休みを迎えようとしていた。


僕は隣の席の女の子が好きになり、フテブテくんもクラスに好きな子がいるらしかった。

「一緒に告白しようぜ!」
とフテブテくんは言った。

いやいやいや。
アホ。


ほどなくして期末試験の結果が返ってきた。

思っていたほど悪くない。
ホッとしていると、担任の女教師が突然言った。

「あんたもうテストの結果関係ないから。留年だから。」

ななななんですと!?

「ちょっと待って下さい!1学期で留年になるんですか?」

「そうよ。あんたどれだけ1学期で休んだと思ってるの?休みだけじゃない。遅刻に早退も多い。まさか停学が有給休暇だとでも思ってないわよね?停学だって欠席扱いなのよ?」


そんな・・・
停学はカウントされないとフテブテくんが言ってたのに。

ガックリと肩を落とす僕。
まさか、留年とは。


そんな僕にフテブテくんが声を掛けてきた。

「なあ、一緒に告白しようぜ!」

うるっさい!
一人でしろ、そして帰れ。

チッキショウ、こんなアホ高校でダブったりなんかしたら、笑い者じゃないか。

退学。
もはやそれしか道はない、のか?

自業自得とは言え、
中学の恩師たちが必死に入れてくれた高校なのに、俺は何やってるんだ。


翌日。

女教師から職員室に呼び出された。

「留年なんかしたくないわよね?」

「はい」

「じゃあ最後のチャンスをあげるわ」

「え?」

「補習よ。夏休みずっと。お盆と日曜以外はずっと学校に来なさい。1回でも遅刻したり、休んだらダメよ。できる?」

「やります!」


こうして夏休みの補習授業が始まった。


次回「告白」

懐かしい品

2010年06月12日 | 思い出

先日、中古CD屋で値崩れしたCDを買いあさっていると、
思わぬ掘り出し物を発見。



ちょっと見づらくてすみません。
マクロスプラスのサントラです。


パチンコで出たマクロスとは別のマクロス。


このCDにはちょっとした思い出あります。


このCDと出会うことになったのは、
僕が21歳のとき。



そのとき僕は、とある施設の管理のバイトをしていました。


勤務時間が融通きく上に、時給も高い。
けっこう倍率高いだろうな、と思いつつ
面接受けてみたら、受かってしまった。


この仕事、土日は数千人の人間が訪れるため戦場と化すけど、
平日はあまり仕事がない。

自転車並べたり、駐車場を巡回したり、
モニターチェックしたり。

それなのに社員が7人もいる。
部長なのによくテンパる小島氏。推定55歳。
カツラで何故か常時睡眠薬を携帯している謎の男、沢田氏。推定50歳。
穏やかで真面目だけど家のローンに苦しむ長谷川氏。推定47歳。
バツイチだけどメルヘンチック純情無垢な女性、笠原さん。推定35歳。
気の良いヤンキー、高梨さん。23歳。
気の悪いヤンキー、原島さん。27歳。
ツンデレーションがヒドイ女の子、石川さん。18歳。



初めて職場に行ったときの感想。
濃いっ!



戦場と化す土日には更に土日限定の応援要員が来る。
7人も。

そんでその応援要員7人がまた18~19のヤンチャ坊主。
お客さんに敬語使わない。
見た目が金髪やら長髪やら威圧的。
そしてその7人専用の休憩室行ったら、エロビデオの山。
お前らは7人の悪魔超人か。
もうやりたい放題。



そんな感じの愉快な仲間たちとの仕事が始まったのだが、
初仕事から大変な目に。

午後からラストまでのシフトだったので昼に行ったら、
いきなり部長がテンパってる。
「あ、あいつら、どこ行ったんだ!!」とワサワサしてる。

どうやら高梨、原島ヤンキーコンビがサボってて行方不明らしい。

そしていきなり僕に捜索命令がくだった。
ちょっ、他にもいっぱい人いるじゃん!
僕はまだこの施設じたいよく分からないし。

石川さんなんて奥でたまごっちやってるよ!真剣に。
そんなにずっと見てるゲームじゃねぇだろ。
てゆーか、職場で真剣にゲームをするな。



納得はいかないが、新参者が使いっ走りになるのは世の掟。
仕方なく探しに行くが、全然見つからない。

どこでサボってんのかと思えば、
高梨さんはゲーセンで鉄拳に夢中、
原島さんは自分の車の中で熟睡。

ひどい。


こんなメンツなのでエピソードはいろいろあるけど、
そうして月日は流れ、季節は夏をむかえた。


僕も働き始めてから既に3ヶ月経ち、
この愉快な仲間たちともそれなりに上手くやっていた。


ただ、謎の男、沢田氏が謎の失踪を遂げてしまうという事件があった。
部長が心配して沢田氏のアパートへ乗り込んだのだが、
何故か愛用してたカツラだけが部屋に残されていたという。
ダイイングメッセージのように。

このカツラに何かメッセージが込められているのではないか、
と部長が言い出し、社員全員と僕で推測したが、謎は深まるばかりであった。


ちなみに、各人の推測。
高梨氏の推測、ケガじゃないから(毛がないから)心配すんな。
原島氏の推測、神かくし(髪かくし)。
石川さんの推測、自分探しの旅。

みんなひどい。
でも笑ってしまった。

部長は高梨氏の推測が気に入ったようであった。



夏といえば、夏休み。
土日ほど混まないにしても、
普段の平日より忙しくなる。


夏休み限定で新たにバイトが2人はいった。
歳は19歳で同じ大学に通う友達同士らしく、
1人はポッチャリしてひょうきんなお調子者の金田くん。
もう1人はガリ痩せで人とのコミュニケーションが得意でない感じの寡黙な多田くん。

2人合体すればちょうど良い感じになるのだろうが、と思った。



同じ自転車通勤ということで、
この2人とはよく一緒に帰った。


金田くんとの話の流れで多田くんにも話をするが、
やはり反応は薄い。

僕もけっこう人見知りするので、そんなに気にしない。


だが、そんな多田くんを見て、金田くんが言う。
「そんなんだから、お前はダメなんだよ!」


金田くんなりに多田くんが心配なのだろうが、なんせ口が悪い。

「人それぞれ得意、不得意があるんだから、ダメとか言うなよ」
と僕は金田くんを諭す。
一見、多田くんをかばっているように見えるが、完全に自己弁護である。



その頃、とあるローカルテレビで夏休みスペシャルとして
放映されたガンダム映画3部作をキッカケに、
職場の若者中心にガンダムブームが巻き起こる。

僕もちょうどその前にエヴァを観たのをキッカケに
ガンダムを見直してハマっていたので、
その輪に難なく入っていった。

さらに7人の悪魔超人たちもそれに乗っかってきた。

彼らの休憩所にジオンの国旗が掲げられるまで、
そう時間はかからなかった。

休憩時間になると、みんなで集まってガンダムの話をし、
仕事終わったらカラオケ行ってガンダムの曲を熱唱するほどの加熱ぶり。

そこに僕がみんなにエヴァを薦めてしまい、
さらに変な熱が加わってしまった。
高梨さんに貸したビデオテープがたらい回しにされて、
しばらく帰ってこなかった。

そして7人の悪魔超人たちが、
一気に怪しい集団に変貌したのは言うまでもない。


そんな時にも多田くんは輪に入れ切れずにいた。
まるっきり興味がないハズはないと思うのだが。


ある時の休憩時間にやはり輪に入らない多田くんに僕は訊いてみた。
「多田くんのオススメって何かないの?」

その時は何も返事が返って来なかったのだが、
それから少し経った帰り道で、
いきなり多田くんから紙袋を手渡された。

中にはマクロスプラスと書かれたビデオテープと、
1枚のCDが入っていた。

そのCDが冒頭で紹介したCDです。

内容はともかく、音楽の素晴らしさに圧倒されました。
それまで菅野よう子という方を全く知らなかったけど、
今でもいろんな作品に携わっているとか。

いちおうテープにはダビングしたのだけど、
そのCDが欲しくて欲しくて、本当に探し回った。
インターネットなんて全く普及してなかったので、
新宿、池袋、渋谷などの大型CDショップはもちろんのこと、
秋葉原にまで足を運んだけど、結局は見つからず。

そんな思い出のCDでした。

 


ハイスクール落ガキ「フトシ覚醒」

2010年01月18日 | 思い出

「ツラ貸せよ」とフトシ君にスゴまれ、フトシ君のあとに着いてゆく。

まぁ2~3発は殴られんだろう、とは覚悟はしていた。


あまり人の多いとこで公開処刑はヤメてもらいたいが、
とにかくツベコベ言う資格は僕には無い。


いくつかの広場を通り過ぎ、駅が見えてくる。
駅の便所は汚いからヤメて欲しいなぁ。
そう思いつつ改札を入り、ホームに立つ。

やがて電車が来る。
電車に乗る。
電車に揺られる2人。


ツラ貸せよ→ちょっとそこまで
という感覚だとそれまで僕は思っていた。

行動範囲は概ね20メートルくらい。
教室→トイレ
教室→屋上
教室→校舎裏 と言った感じ。


ツラ貸せと言われてから電車に乗って移動するとは思わなんだ。
そしてようやく4つ目の駅で降りる。


嫌な予感がする。
まさか地元の仲間集めんじゃないだろうな…。
暴飲暴食の連中に、暴飲暴食されるのではあるまいな・・・。

いやいやフトシ君に殴られんのは仕方ないけど、
etcの連中に殴られんのは理不尽だ。

逃げるにしても、くねくね曲がりながら、けっこう歩いて来てしまった。
見知らぬ土地でこの極・方向音痴が逃げ延びることは無理だ。
運よく駅に着いたとしても、30分に1本しかない電車なんかノンビリ待っていたら、
完全にアウトだろ。


そんな風に悶々と考え事をしていると、
フトシ君の歩みが止まった。

ハッとして見てみると、一軒家の前であった。
名札にはフトシ君の苗字が書いてあった。


家の扉を開けて中に入るフトシ君。
「おう、入れよ」

ええっ・・なぜ家に・・・。
やはりヤバイんじゃないだろうか。

まぁここまで来たんだ。
ジタバタしても仕方ない。
僕は言われるままに家に入った。

 

「2階の突き当たりの部屋が俺の部屋だから入っててくれよ」
フトシくんはそう言うと1階の奥の部屋に姿を消した。

僕は2階に上がり、奥の部屋の扉を開けた。
タバコの匂いが染み付いた部屋。
窓にはフトシ君が吸ってると思われるマルボロの空箱が芸術的に並んでいた。

床にはマンガと雑誌が散らかっていた。
テレビの脇が押入れになっていて、そこに真っ黒な特攻服が掛けれていて、
金色の刺繍で「暴飲暴食」と縫ってあった。

本当に暴飲暴食って名前なのか。
当て字にするのは良く見かけるけど。
てっきり暴音暴蝕とかそんなアレかと思ってたら、
そのまま暴飲暴食なのか。

正月のオッサンか。

フツフツと笑いがこみ上げて来たところで、
扉がガチャッと開いた。

ハッ!!

「かっこいいだろ、その特攻服」
と得意げにフトシ君は言った。

「うん」と僕は言った。特攻服は。

フトシ君は手にお盆を持っていて、
そこにはジュースとお菓子が載っていた。

「ろくなもんないけど」とフトシ君は言ってお盆を床に置いた。

「いやいや、おかまいなく・・・」と僕。

「まぁ、座ってくれよ」とフトシ君。

僕は座ってから改めて詫びを入れた。
「ほんと申し訳なかった。言い訳する気はないけど、そんなつもりなかったんだ」

「そのことなんだけどよ」とフトシ君は言った。
「その話は忘れてくれよ」

え?

「俺がお前に負けたみたいに思われるからよ。いや、あそこ砂利道だったろ?あんとき投げられたトコに大きいゴツゴツの石があって、その角にぶつけたみたいでよ。それであれだけダメージ負ったんだよ。みっともないったらねぇよ、ほんと。だからあんまり触れないでくれよ。」

「あぁそっか。よかった」
心底ホッとした。

「停学になっちまったみたいで、悪かったな。俺も恥ずかしいから、すぐにあの生活指導に大丈夫だって言ったんだよ。でもダメだったみたいだな。あいつお前のこと目つけてるぜ、気をつけろよ」

「あ、ああ。ありがとう」と僕は言った。実はイイ奴なんだな、フトシ君。

「じゃあ、俺帰るから」と言って立とうとした瞬間、
フトシ君が言った。

「なぁ、お前うちのチームに入らねぇ?」

はい?
チームとおっしゃいますと?

「え?暴走族に?」と僕。

「そう」とフトシ君。


無理無理無理無理。
ただでさえ暴走族嫌いなのに、
暴飲暴食なんて恥ずかしい、いや個性的な名前のチームなんて無理。

「い、いや、俺は暴走族なんて向かないからさ。根っからのマジメでビビリだし、そんな暴走族なんて向いてないったら向いてない」

「本当にマジメな奴は自分で根っからのマジメなんて言わねぇ」とフトシ君。

あ、あら、するどい。

「まぁ飲めよ」と言ってコップにサイダー注ぐフトシ君。
そして散らかってる雑誌を僕に見せた。

「ほら、これ!俺らのチームが雑誌に載ったんだぜ、スゲーだろ」

チャンプロードというバイクの雑誌の一番後ろに様々な暴走族の投稿写真が掲載されていて、その中の1枚に暴飲暴食が写っていた。

7人のコワモテの男たちが腕を組んでこっちを睨んでいる。
投稿者の部分を見てみると、(○○県・暴飲暴食フトシさん)

ふざけたペンネームみたいになってる。
プフーッと噴き出しそうになったが、死の予感を感じたので耐えた。

「す、すごいね!」と笑いを誤魔化す為に言ってみた。


「そうだろ!なかなか載らないんだぜ、これ」とフトシ君。


たぶん名前が面白かったからだと思う。


「そこに写ってる7人が3年の先輩たちで、その写真を撮ってる俺を含めて8人しかいないんだ。卒業したら先輩たちも族やめるみたいでよ。俺1人しかいなくなっちまうんだ。だからお前に入って欲しいんだ」


いや、だから、なぜ僕なんだ!?
どう切り替えしたら良いか、僕は考えた。

沈黙が重たかったのか、フトシ君はテレビを点けた。
テレビではドラゴンボールの再放送がやっていた。
ちょうど悟空がピッコロ代魔王を倒す回だった。


「なんにしても俺はちょっと無理だよ。家も遠いし。2時間近くかかるんだ。急に呼ばれてもすぐに来れないし。やっぱそういうのは地元で集めた方が」


「じゃあ、ここに住めよ。部屋も空いてるし」とフトシ君。


ムチャ言うな。
なんで住み込みで暴走族やらなきゃいけないんだ。


「い、いや、そんなの無理だよ。俺にだって地元の友達がいるんだ」と僕は言った。


「そうだよな、やっぱ地元が一番だよな」とフトシ君は少し寂しそうに呟いた。


そうして僕はフトシ君から解放された。


僕は暴走族が嫌いなのだ。
群れてないとツッパることもできないのか、と思う。
やけに組織的だし、戒律みたいなのも厳しいし。
上下関係も厳しいし。

そういうバカげた価値観に腹を立てて、
反抗しているうちに不良と呼ばれ、
いつしか不良として生きていた、
というような人間が、いわゆるこの学校にワンサカいるような不良たちであり、
そういう人間が何故わざわざよりバカげた組織に入ってゆくのか、
僕には理解できないのであった。

暴走族できちんとチームのルール守って、
先輩に従順して素直にやっていけるなら、
学校でもマジメにやっていけるだろうよ、と。

つづく

 

次回 「留年決定!?」


 



 


ハイスクール落ガキ「停学2」

2010年01月15日 | 思い出
「前っ代っ未聞よっ!」

女教師は夏の嵐のように荒れていた。

「停学明けた日に停学になるなんてっ!」


ケンカを止めたハズが、勢い余って相手にケガさせてしまい、遠足が終わったその足で職員室に呼び出されているでごさるの巻。


「アンタのせいで、うちのクラスがまた停学率トップじゃない!生活指導の先生にガミガミ言われるし!きぃっ!」

そう言うと女教師は両の手ので僕の両ほっぺをムンズと掴みチギれんばかりに揺さ振り始めた。

いだだだ!
「ひゅ、ひゅいまひぇん、ひょんにゃちゅむょりはにゃきゃっちゃんへす」

「は?なに?」ようやく手を離す女教師。


「すいません、そんなつもりはなかったんです」正直に。

女教師は砂漠のようにカラカラに渇いたタメ息をついて言った。

「まぁ、事情はだいたい聞いてるわ。確かに全てアンタが悪いわけじゃない。でも実際にケガ人が出てる以上、無罪放免というわけにはいかないのよ、分かる?」

「はい」

フテブテ君が必死に庇ってくれたおかげで、だいたいの状況は担任も把握してくれていた。


フテブテ君のおかげでっつーか、元はと言えばアイツが喧嘩っ早いせいじゃねーか、ちっきしょう。


「と、いうわけで、2週間の停学よ。いいわねぇ、もうほとんど長期休暇じゃない。1ヶ月もあれば世界一周旅行できるわよ」

ぐっ…。


「あ、あと、ちゃんと坊主にするのも忘れないでよ。そんな中途半端なスポーツ刈りじゃなく、ちゃんと坊主にすんのよ、分かった?」

「はい」

「あ、それから親御さんに電話しないといけないわね」

「ちちちょっと待って!先生!お願いします!電話は勘弁してください!停学明けの日に停学になったなんて聞いたら、母ちゃん倒れちゃうかも知れません!親には僕からよく言って聞かせますから!」


「なんでアンタがよく言って聞かせるのよ。」



「先生!ホント今回は悪気は無かったんです。アイツに…俺…」


「…はぁ。分かったわ。確かに結果はアレだけど、イザコザを止めようとした事は認めてあげるわ。それに免じて今回は連絡しない。でも、ちゃんと言うのよ?」


「はい」


ようやく長かった説教タイムが終わりに向かいつつある空気になりホッとしていると、女教師が言い出した。


「ねぇ、アンタ部活は入らないの?それだけ身長があって、力もあり余ってるようだし、スポーツに活かしなさいよ」


いやだ。
ただでさえ1日4時間以上も通学時間に浪費してるんだ(まぁ、まだほとんど通学してないけど)。部活なんかやったら完全に遊ぶ時間がなくなる。

「いや、家まで帰るのに時間かかるから、部活はちょっとやめておきます」


「そう。まぁちょっと考えておきなさいよ。じゃあいいわよ帰って。2週間ちゃんと家にいなさいよ、毎日電話かけて確認するから」


そして僕は職員室を出た。

はぁ。散々だな。
時間は夜の7時を過ぎていた。

田舎なので、夜の7時ともなると真っ暗である。

こんな遅くまで学校にいたことなんてないから、少しは慣れてきた通学路が全く違って見えた。


そんな夜道をとぼとぼと駅まで歩き、改札口に入ろうとしたところで後ろから名前を呼ばれた。

フテブテ君だった。
「何してんだよ、こんな時間まで」と僕は聞いた。


どうやらフテブテ君は僕を待っていたらしかった。
「なんか俺のせいでゴメンな」とフテブテ君は言った。

間接的には悪いけど、直接的には悪くない。

「いいよ別に。ただホントその喧嘩っ早さは少し直せよな」

「直そうと思ってんだけど、すぐにカッとなっちまうんだ」とフテブテくん。


ほんと未だにこの凶暴な男が中学の頃イジメられてたというのが信じられん。

イジメようがないと思うんだけど。


そうして僕らは帰路についた。



――翌日

僕は通学路の途中に潜伏し、フトシ君の帰りを待っていた。

もちろん謝るためだ。

しかし下校時間を1時間過ぎてもフトシ君の姿は見えない。

まさかケガのせいで休んでるのか…?

さっき通りかかったフテブテ君に状況聞けばよかった。

そんな風に悶々と待ち続けていると、ようやくフトシ君が現れた。

しかもラッキーなことに1人だ。


僕はすかさずフトシ君に近づき、その前に立った。

「あ、お前!」とフトシ君は僕の顔を見るなり言った。

「昨日はケガさせてしまって、申し訳なかった。」と言って僕は頭を下げた。


「お前ちょっとツラ貸せよ」とフトシ君はドスの効いたドスい声で言い放った。


あーやっぱそうなるよね。


つづく

ハイスクール落ガキ「社会科見学2」

2010年01月11日 | 思い出
パン工場から向かった先は、なんとアスレチック公園。

い、いや、だから。


小6の遠足と卒業旅行で来たって!ホントに。


小6の遠足で来て楽しかったから、卒業旅行で来たのだ。

当然この日だって小学生たちがウヨウヨ遊んでる。


そんなに小学生たちの平和を乱したいのか。


バスから飛ぶように降りてゆくクラスメイトたち。

そんな光景をぼんやり見ている。


「どうしたよ?行かないのか?」とフテブテ君が声をかけてきた。


「え?ああ、ちょっとバス酔いした」と適当に答える。

「パンも食ってないもんな。じゃ休んでた方がいいな」と言ってバスから出てゆくフテブテ君。


僕は座席に深々と座り直し、目を閉じる。

中途半端、か。
さっき女教師に言われたことが頭の中で反芻する。

3ヶ月前までは何も疑問なんてなかった。

ただ全てくだらないと思っていた。


でもそうではなかった。



少し眠ってしまったらしく、ドヤドヤとした声が聞こえてきて目を覚ました。

フテブテ君の他数名がバスに乗り込んできた。

みんなビショビショに濡れていた。

ここのアスレチックには池にアスレチックが設置された水上にコースがあり、失敗するとビショビショになるのだ。こいつらのように。


「ちょっとビショビショじゃんよ」と僕は驚いた。

「こいつが押すんだもんよ」

「なに言ってんだ、おめーが押したからだろ」

とみんなでヤイヤイ言い合っている。


ふとブルーハーツのTRAINーTRAINの冒頭が頭を過ぎった。


ここは天国じゃないんだ
かといって地獄でもない
いい奴ばかりじゃないけど
悪い奴ばかりでもない


「まだ気分悪いか?」とフテブテ君は僕に聞いた。

「うん、もう大丈夫」と僕は答えた。


ここで終わってくれれば大団円なのだが、終わらないのがこの学校。

みんなで他のクラスメートたちが遊んでるところに向かっている途中、事件は起こった。

ふざけ半分で歩いていたフテブテ君が他のクラスの生徒とぶつかった。


その相手が悪かった。
ほとんど学校行ってない僕でも知ってるワルだ。

なんとかフトシ君。
暴飲暴食とかいう暴走族の頭という話だ。


フテブテ君とフトシ君はいきなり臨戦体勢。

お互いの胸ぐらを掴み合ってメンチ切ってる。

ちょっ待った待った!
僕は2人の間に割って入った。

「ちょっ、待って!こんなとこで喧嘩すんなって」

だがフトシ君は僕を押しのけ、再びフテブテ君の胸ぐらを掴む。フテブテ君も応戦する。

次第にギャラリーが増えてくる。やばい。

僕はクラスメートに先生呼んで来るように頼んだ。

そして僕はフトシ君を後ろから羽交い締めにし、そのまま背中から倒し、すぐさまフテブテ君を押さえた。

「むやみやたらな暴力はよせって言ったよな!自分が後悔するんだぞ!」


ようやくフテブテ君が落ち着きを取り戻してゆく。


「コラッ!なにやってんだ!」

クラスメートが呼びに行った先生もようやく来たか。

「おい、お前!何やってんだ!何ケンカしてんだ!おい!」そう言って先生は僕に詰め寄ってきた。


えぇっ!俺が?
「いや、俺はケンカ止めてたんですよ!」と僕は抗議した。

「嘘つくな!ケガしてんじゃねーか!」

ハッとして、さっき倒したフトシ君の方を見る。

そこには腰を押さえて苦悶しているフトシ君の姿があった。


そして僕は2回目の停学を受けることになったのである。