命のカウントダウン(健康余命3605日)

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風邪とロキソニン

2019-12-02 07:31:13 | 治療薬
ロキソニン(ロキソプロフェンナトリウム水和物 )は、最近になり、とても有名になった薬です。それは、2012年1月より薬局で処方箋なしに購入できるようになり、TVCM(女優の“貫地谷しほり”さんを起用)やウェブサイト(URL: www.loxonin-s.jp)を通じ て大々的に宣伝されたからです。(メーカーの第一三共によると宣伝ではなくて、適正使用を訴えたのだそうです。)(医療用として発売開始されたのは1986年で、30年以上の歴史ある薬です。)


ロキソニンのように、以前は医師が処方しないと手に入らなかった薬が、処方箋なしで薬局で手に入る薬のことをスイッチOTC医薬品(OTC:Over The Counter(オーバー・ザ・カウンター)の略語 )と呼びます。ガスターやアレグラが有名です。


さて、風邪とロキソニンの話でしたね。
前回の水うがいは有効だけど、イソジンうがいは無効(こんなに具体的には書いてありませんでしたが)と、同じく京都大学の予防医療学(健康科学センター) 川村 孝 先生の研究から引用させていただきました。

http://www.hoken.kyoto-u.ac.jp/wp-content/uploads/2015/11/nsaid.pdf 

風邪をひいたときに早期の回復を求めて医療機関を受診するが、風邪薬で早く治るのか どうかは十分に検証されていない。2002 年から 2004 年の冬季 2 シーズンに北海道から九 州まで全国 23 のプライマリ・ケア医療機関で、解熱・鎮痛作用を持つ抗炎症薬であるロキ ソプロフェンの効果を世界初の自然感染患者に対する無作為割付の臨床試験で検証した。 発症後 2 日以内の風邪で受診した患者を無作為に「実薬群」と「プラセボ群」に割り付 けて治療し、風邪が治るまで追跡した。なお、両群とも抗ヒスタミン薬であるメキタジン を併用した。その結果、抗炎症薬によって発症後 3 日までの重い風邪症状は軽減し、日常 生活活動を制限した日数は 2.7 日から 2.1 日に減少したが、症状がすべて消失するまでの 期間は逆に 8.4 日から 8.9 日に増加した。ただしこれらの差は統計学的に有意ではなかっ た。また副作用は実薬群で多かった(ただし主として併用薬の副作用)。 抗炎症薬は風邪症状を軽減するかもしれないが、早く治すどころかむしろ治りが遅くな る可能性があるので、漫然と使用しないよう気をつける必要がある。なお、この研究は 2007 年の Internal Medicine(日本内科学会機関誌)に掲載された。

というものです。要するにロキソニンを含む「風邪の対症療法(風邪の症状を和らげる治療)」をすると、症状が取れるのは半日ほど早まるが、完治するのは半日ほど遅くなるというデータです。

これは、消炎鎮痛解熱剤にロキソニンを用いたときのデータなので、解熱剤に消炎効果のないアセトアミノフェン(カロナール)を使った時とは違うデータになると思っています。アセトアミノフェンの方がロキソニンなどのNSAIDSよりも良いデータが出るのでは?と期待はしています。しかし、データ探しましたが見つかりませんでした。アセトアミノフェンを含む総合感冒薬であるPL顆粒発売元の塩野義さんにデータがないのか、聞きたいと思っています。

そうそう、ロキソニンなどのNSAIDSでは、胃腸障害、腎障害の副作用が有名ですが、気管支喘息が出ることもあります。
ロキソニンなどの鎮痛解熱剤(NSAIDS:非ステロイド系消炎鎮痛解熱剤)で出現する喘息をアスピリン喘息と言います。非常に強いぜん息症状と鼻症状が出現します。詳しいメカニズムは不明ですが、解熱鎮痛薬全般に過敏な体質をもっているぜん息患者さんに発症すると考えられています。 通常のアレルギー検査ではわかりません。
アスピリンぜん息患者さんの特徴
  • 成人ぜん息患者さんの約5~10%にみられ、男性の2倍の割合で女性に多い
  • とくに20~40歳代で発症した、発作をよく起こす重症のぜん息患者さん
  • ぜん息に、鼻の中のポリープ(鼻茸)を合併している、もしくは手術歴のあるぜん息患者さん
  • 嗅覚の低下があるぜん息患者さん
アスピリンぜん息の症状
解熱鎮痛薬を服用したときに、以下のような症状が現れます。
  • 強いぜん息発作
  • 強い鼻づまり、鼻汁
  • 顔面紅潮や目の充血
  • 腹痛や下痢、吐き気などの消化器症状、胸痛やじんま疹などが見られることもある

この発作は、ロキソニンなどの飲み薬だけではなく、ロキソニンテープなどの湿布薬、ロキソニンゲルなどの塗り薬でも症状出現することがあるので十分な注意が必要です。生死にかかわるような重症発作を起こされることがしばしばあります。



非ステロイド系消炎鎮痛解熱剤NSAIDSで一番有名なロキソニンを例に挙げて話をしましたが、他のNSAIDSでも勿論、胃腸障害、腎障害、肝障害、出血傾向、喘息症状などが出現します。例えばボルタレン、アスピリン、ポンタール、モーラステープやイドメシンゲルなどでも同様です。気軽に使っておられる痛み止め、一旦副作用が出現すると結構厄介なのです。必要性と副作用の可能性を天秤にかけて、上手に使ってくださいね!



風邪予防にイソジンは逆効果

2019-12-02 07:11:31 | 不適切な治療
予防医療学 (環境安全保健機構健康科学センター)の教授 川村 孝
Takashi Kawamura, M.D., Ph.D. Professor による研究で、この「風邪の予防に水うがいが有効」を始めとして、「働き盛りの突然死は4月や週末に多発する」「一般市民による心肺蘇生は胸骨圧迫が第一」「AEDの普及で助かる命が増える」「IgA腎症の透析導入を臨床指標で予測する」など、きわめて身近で日々の健康管理や医療に直接役立つ研究を行っておられます。その報告によると

水うがいで風邪発症が4割減少した。そして、ヨード液(イソジン、ポピドンヨード液など)は、無効であった。
世界初の無作為化試験で実証 
風邪の予防策としてうがいは当たり前のように行われているが、日本独自の衛生習慣であり、 またその有効性は十分に検証されていない。そこで 2002 年から 2003 年の冬季に北海道から九 州まで全国 18 地域で、うがいの風邪予防効果を世界初の無作為割付の研究で検証した。 ボランティア 387 名を募り、くじ引きで「水うがい群」「ヨード液うがい群」「特にうがいをしない 群」の 3 群に割り付け、2 ヶ月間にわたって割り付けられたうがい行動をとってもらって風邪の発 症を追跡した。その結果、発症率はうがいをしない群の 1 ヶ月あたり 100 人中26.4 人に対して水 うがい群は 17.0 人、ヨード液うがい群は 23.6 人であった。多変量解析で群間のばらつきをそろ えると、水うがいをした場合の発症確率はうがいをしない場合に比べて 40%低下することにな る。一方ヨード液うがいでは 12%の低下にとどまり、統計学的にも意味のある抑制効果は認めら れなかった。 水の乱流によって、(ウイルスそのものではなく)埃の中にあってウイルスにかかりやすくする プロテアーゼという物質が洗い流されること、水道水に含まれる塩素が何らかの効果を発揮した ことなどが考えられる。またヨード液でそれほど効果が出なかったことについては、ヨード液がの どに常在する細菌叢を壊して風邪ウイルスの侵入を許したり、のどの正常細胞を傷害したりする 可能性が考えられる。 風邪は誰でもかかる健康障害であり、風邪の治療に約 6000 億円の費用がかかっていることを も考えると、水によるうがいという単純な保健行動の影響は大きいかもしれない。なお、この研究 は 2005 年の American Journal of Preventive Medicine(米国予防医学会機関誌)に掲載された。 
だそうです。この結果は有名ではありますが、一般的にはあまり知られていないようです。それには、うがい液を製造しているメーカーに対するTVなどのマスコミの忖度が働いていると言われています。