命のカウントダウン(健康余命3605日)

トレッキング、カメラ、陶芸、スキー、釣り、カヌー、遊びなら何でも大好き。仕事も好き、時間がない!

反省

2023-07-24 21:59:53 | 在宅医療
昨日は、在宅のがん末期患者さんが急変されました。大阪に居たときに状態が悪い、息が苦しいと言われています という連絡を訪問看護師から受けたのですが、まだ時間に余裕があると思ってしまったので、在宅酸素の手配をして、2時間ほどで用事が終わるので、できるだけ早く帰って往診します。と返事をしました。
30分ほどして、在宅酸素がまだ届かないうちに 「息が止まりました」という報告を受けてしまいました。

金曜日には元気に振舞っておられました。食べることは出来なくなったけれど、飲水できるし、何よりも声が元気でした。土曜は、経口で残っていた数少ない薬も持続皮下注入に代えました。それまでも、イレウスに対してオクトレオチドの持続皮下注をしていました。22日土曜からは痛みに対するオピオイドのPCAポンプの持続皮下注も増えて、持続皮下注が2本になったのです。状態は確かに悪化していたから、その悪化に対応した治療をしていたのですが、どうしても自己採点って甘くなりがちなのですよね。私、日曜日の昨日、危機感なく大阪に出かけていました。
 それで、看取りには間に合わなかったのですが・・・・間に合わなかった事は全く問題視しておりません。医者が看取りに間に合っても、何のメリットもありませんから。患者さんが正に亡くなろうとしている、そんな場に出くわすことあるのですが、正直困ってしまいます。

 というのは、正に亡くなりそうだという時、病院医師、特にICUやCCUの医師なら、やれボスミンだのサクシゾンだのと注射したり心臓マッサージや挿管して人工呼吸を始めたりするのでしょうが、在宅医は何もしないのです。何かすることは、苦しみを引き延ばすことになるだけだと知っていますから。ICUやCCUみたいに、その場をやり過ごしたら明るい未来がやってくる可能性はゼロなのですから。だから、がん末期をみとる在宅医は、患者さんが亡くなりそうなとき、何もしない 唯のでくの坊なのです。在宅医も医師ですから、死にゆく人を目の前にして、何もしないで突っ立っているのは苦痛なのですよ。でも、何もするべきではないと知っている。ですから、そのような場にはできるだけ出くわさないようにしています。亡くなりましたというご家族や訪問看護師の報告が入ってから出向くようにしているのです。間に合う必要がないと思っているから、カツオ釣りになんて行けるのですよ。

 話がそれました。そういう意味では、昨日はその通りにストーリーは進んだのです。でも、私は、亡くなるのはもう数日先だと思っていました。それで、申し訳なく感じました。昨日の日曜日、何もできなかったのは、そういう私の反省からです。ちょっと落ち込んで身動きできませんでした。反省!!

今日と同じ明日は来ない

2023-06-05 23:25:57 | 在宅医療
私達は何時か死を迎えます。
でも、それを実感することなく、今日と同じ明日が来ると思って毎日生き続けています。
今日と同じ明日が来ないかもしれませんよ
と、言われたらどうなるのか?

貴方は末期がんです。
この夏を超えるのは難しいです
そう、宣告された40代後半の患者さんに対する初回訪問診療に今夜行ってきました。
○○癌、両側肺多発転移、癌生胸水、癌性リンパ管症 という病名です。
彼女は現在元気です。
癌性リンパ管症で、息苦しくなって5月末に入院、そして、酸素療法を開始、病状が落ち着いたので、本日夕方に退院されて自宅療養が始まりました。

酸素を吸う事は在宅医療でも可能です。在宅酸素療法と言いますが、多くの場合は酸素濃縮装置を使います。液体酸素を使う事もありますが、私は未だ一件しか経験したことがありません。例外的です。

そしていずれの場合にも、外出などの場合には酸素ボンベを使用します。
携帯型の酸素濃縮装置や携帯型の液体酸素装置を使う事もありますが、それも例外的な事です。
この患者さんは、自宅では酸素濃縮装置、外出時には酸素ボンベという一般的な装置を使用することになりました。

呼吸不全を訴えて入院する前の5月中旬とは違う自分になってしまっている訳です。退院前に入院中の主治医から「今年の夏を超すのは難しい」と言われたそうです。今日のあなたが、明日もある保証は無いよと言われたわけです。
相当に動揺されていました。

人は皆、今日と同じ明日が来るものと何の疑問も無く思っています。それが崩れるから、貴方ガンですよ。と言われると、皆さん全員「俺が私がガン?ガーン」と判で押したような漫画チックな衝撃を受けるのです。かくいう私も、そう言われたら、同じような反応を示すだろうと想像します。

今日現在、彼女は酸素さえ少量(1.5L/min)吸えば通常の生活が可能です。「私は元気です。」と、彼女は強調します。確かに元気なのですよ。日常生活、酸素さえ吸っていたら、何の問題も無いです。ですが、明日は分からないのです。だから、自動車の運転も止められました。日常生活に色々と制限が掛かって来ています。最大の制限は時間的スパンです。何しろ、この夏は越せない可能性が高いと言われたのですから。

しかし、医者の言う予後は、当たらないことも多いです。貴方が予後を宣告せざるを得ない立場の医者だったらと考えてみてください

その立場になって、この患者さん、今後2か月から6か月くらいで最期を迎えられそうだなと予想したとします(相当に大雑把ですが、そんなものです)。貴方は、患者さん、患者さん家族にどう伝えますか?正直に2か月から6か月くらいかなぁ。よくわからないけれど と、伝えるのか、 短ければ二か月と言う事もあります。と伝えるのか、4か月プラスマイナス2か月程度だと推定されますと伝えるのか。いずれも嘘は言っていないけれど、言われた側の印象は大いに違いますよね。

そして、短ければ2か月と言われて2か月で亡くなった場合と、4か月プラスマイナス2か月と言われて2か月で亡くなった時のご家族の印象はどうでしょうか?
医者が予後を短めにいうだろうなぁとは想像できませんか?

まあ、そんな事もあって、医者の言う予後、ご本人は気にしない方が良いです。医者は、後で責められないような事しか言わないと思ってください。

私98歳の胃癌患者さんを紹介され、予後3か月以内ですから と言う言葉を信じて、半年後にスキーの長期旅行に行く予定があるにもかかわらず、引き受けてしまったことがあります。その患者さん、それから5年、103歳まで生きられました。末期胃癌だった筈なのに、癌、いつの間にか消えてました。亡くなったのは、癌が原因ではなくて、老衰でした。不思議な事もあるのです。
私、誤診では無かったのかと前医のカルテを確かめに行きました。胃カメラの所見では確かに進行胃癌がありました。それが何故か100歳の時に撮ったCTでは消えていました。

とは言え、医師が予後何か月程度と言うのは、同じがんの同時期の方がどれくらい生きられたかという統計に基づいているので、多くの場合は、予想に近い形に病態も変化していきます。・・・しかし予想外の事も少数ですが確かにあるのです。ですから、予想外の事を信じるしかないがん末期と診断された患者さんは、予想外の事が起こり得る事を願ってください。

ただ、何度も言いますが、人は必ず死にます。早いか遅いかだけの違いです。でもその違い、大きいのですよね。40代で死に直面するのは辛いと思います。私、69歳ですが、この夏超えるのは難しいですよと言われたら超動揺するに決まってます。私、この歳でも尚、今日と同じ明日が来ると何の疑問も無く思っていますから。

今日と同じ明日が来るだろうと思える日がいつまで続くのか・・・・
いつか死ぬのに、いつか死ぬことが実感できていない私です。
想像力が欠如しているのか、その方向への想像力が働かないことが生物としての本能なのか・・・・これまで皆さんよりも多分圧倒的多くの「死」に遭遇してきた私なのですが・・・・自分自身の「死」は想像できないのでございます。

夜間緊急往診から帰ってきました。

2023-04-09 22:50:06 | 在宅医療
たった今、緊急往診から帰ってきました。

胃瘻(PEG)という胃に食べ物を直接注入するチューブのトラブルでした。

胃瘻チューブは下の図の様になっていて、風船を膨らませて抜けにくくしているのですが、その風船が破けてしまってゆるゆるになっちゃっていました。
風船が何故破けたのか不明です。
胃瘻チューブがおかしいと言う家人の訴えで緊急訪問した訪問看護師から連絡を貰いました。
「抜け落ちないようにテープで固定してください。明日、訪問しますから。」
と、言ったのですが、家人の不安が強いため、往診することになりました。
今日は、久しぶりに真菅のイタリアンレストラン ロアジでゆったりとディナーをいただいたので、勿論キコシメシテおりました。
それもあって、明日で良いでしょうと、主張したのですが・・・迎えに行きますから!という看護師さんに押し切られました。

胃瘻交換はトラブルが無ければ超簡単です。今回も3分くらいですべての手技が終了しました。送迎してくれた看護師さん、有能な方ですので、彼女だったら十分出来たと思います。私よりうまいかもしれません。でも、してはいけないのです。

特定行為研修という面倒な研修を受ければ可能になります。しかるに、私達医師は(少なくとも私が医師になった35年ほど前は)胃瘻交換も尿路カテーテル挿入も全く研修せずに医師になりました。そして、医師免許さえあれば、医療行為は全てOKでした。極端な事を言えば、医師免許を取ったその日に
開業医になる事も複雑な手術をする事すら可能なのです。日本の医師は、野放しにされ過ぎていると私は思います。良心による自制で、なんとかなっていますが、そのうちに変な奴が出て来て、変えざるを得なくなる時がくっると思います。
その反対に、看護師に対しては規制が強すぎます。特に、訪問看護師に出来る医療行為の範囲を増やさないと、日本の在宅医療は前に進まないと私は感じています。

出来る訪問看護師は。へなちょこな医師よりも余程有用です。
ただ、個人差は大きいですし、規制を緩めればいいというものでは無いとも思いますが・・・・兎に角、ベテラン訪問看護師の出来る医療行為の幅を拡大することには大賛成です。

今日、夜間往診し、有能なベテラン訪問看護師に助手に着いてもらって胃瘻ボタンを交換して、そう実感しました。

訪問看護師の活動範囲を広げる事に私は大賛成です。それが訪問看護師のやりがいにもつながり、数を増す事にもつながると思っています。

明日香に生きる 見てきました!!!

2023-03-05 23:45:05 | 在宅医療
「美しい自然に恵まれた奈良県明日香村。そこで生まれ、死んでいく人々と診療所の医師、看護師との交流を描く。病院死が当たり前になった現代社会に、自宅で家族に見守られながら死を迎えることの幸せを伝える秀作。」 
明日香に生きる  を見てきました。
と言うか、大ファンである佐々木慈瞳さんの挨拶を聞きに行った意味も大きいですが・・・・
映画は、主役の武田以知郎先生や佐々木慈瞳さんを始め、奈良県立医科大学附属病院 緩和ケアセンター長の四宮敏章先生、管理栄養士の豊田綾子さん、尊厳死に深くかかわっておられる公益財団法人 日本尊厳死協会 関西支部 事務局長の浦嶋 偉晃 氏など、友達、知り合いが多数出演されていて、とても興味深く見る事が出来ました。

ただ、一般の方が見られたら・・・・・少しく冗長ではあろうとも思ってしまいました。

地域の四季の変化、主役の医師の「在宅での普通の生活を援助する医療」に対する切り取り方が、どこかで見た感じがするなぁと思いました。アッ そうそう、「四万十 いのちの仕舞い」と、そっくりやんか!!
そして、調べてみたら、やはり同じ溝渕雅幸監督の作品でした。

興行的にヒットするとは決して思えません が・・・・
人の生き方を問う佳作であることは間違いありません。
溝渕監督は、他にもホスピスの生活をえがかれた作品もあります。
アクション映画みたいなドキドキワクワクする要素はないけれど、地道に人の生き方を問う作品を作り上げておられるのだと感じました。


もし、時間があったら見に行ってください!!!

武田先生は、第二回の奈良県お薬師さん大賞を受賞しておられます。
そして、済みませんが自慢です。
私、第3回のお薬師さん大賞を受賞させていただいております。
武田先生との個人的な繋がりも浅くはないとおもっております
そして、佐々木慈瞳さんには、個人的にも色々と相談に乗ってもらっていて、本当に我が家の精神的な支柱になってもらっているのです。
いつも、満面の笑顔の佐々木慈瞳さん、そして、明日香のイチロー先生を始め、映画の出演者の皆さま、素敵な記念を残されましたね!!
羨ましいなあとおもっております。

皆で、奈良の在宅医療を盛り上げていきたいと思っております。
唯、在宅医療には「嫁」などの犠牲者が出る事が多いです。
誰も犠牲者を出さない在宅医療を心がけていきたいと私は思っております。
そのためには、無理をしない事です。無理のない在宅医療
難しいけれど、何とか実現していきたいと思っています。
そのためには、公的なサポートが不可欠です
そして、それをうまく生かす患者や医療者側のテクニックも必要です。

皆が笑顔でいられたらいいなと、思っております!!!

たった今、死亡確認してきました。

2022-12-24 03:17:25 | 在宅医療
先ほど、死亡確認して帰ってきました。
私、飲酒していたので、配偶者に起きてもらって、車の運転頼みました。

数時間前に状態が悪化したコロナ患者さんとは別な患者さんです。

100歳の方で、老衰と言って良いでしょう。ご家族に看取られての大往生でした。

私は、死亡確認に行き、ほんの1分ほどお邪魔しただけです。

私に連絡をくれたのは訪問看護師で、彼女は、私が到着する前から呼ばれていて、私の死亡確認を待って、死後の処置を始めます。

私が在宅医療を始めた20数年前は、私も死後の処置をしていました。
在宅医療の重要性が声高に叫ばれるようになって、訪問看護ステーションが出来始めた頃から、医師は死後の処置には関わらなくて良い様になり、最近では全く死後の処置に手を出すことはなくなりました。

昔は良かったの逆ですね。昔は大変でした。
今は、死後の処置を始め、訪問看護師のお陰でずいぶん楽に訪問診療が出来るようになりました。

在宅医療の中心は医師ではありません。訪問看護師です。
訪問看護師をサポートするのが医師の役割だと思っています。
綺麗ごとではなく、心からそう思います。

訪問看護師の訪問時間は、最低30分、長ければ1時間です。一方、私の訪問診療の平均時間は数分です。稀に30分、1時間滞在することもありますが、あくまでも例外です。医師は、効率的に患家を回って、指示を出すのが役割です。司令塔です。実際に動いて患者さんに対して医療処置をしてくれるのは訪問看護師です。

在宅医療はチーム医療、上下の関係ではなく、横並びの関係なんて馬鹿げたことを言う人もいますが、私は上下関係は明らかにあって、医師は司令塔で、訪問看護師やヘルパーさんは指令下の駒だと思っています。見下す気はありません。横並びの関係なんて口先で行っている奴に限って・・・・

ちょっと口が滑り過ぎたかもしれません。言いたいのは、訪問看護師には大いにお世話になっていて、彼女らのおかげで(男性の訪問看護師、未だ見たことが無いです)在宅医療は成り立っていると言いたいのであります。人間的には横並びは当然ですが、役割分担では横並びではない(しつこいなぁ!)

もう、寝ます。おやすみなさい!!