SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

KAI WINDING 「THE INCREDIBLE KAI WINDING TROMBONES」

2008年03月05日 | Trombone

ターンテーブルに乗せる回数の多いアルバムだ。
その要因はいくつかあるが、その一つは1曲目「SPEAK LOW」のボブ・クランショーによるランニングベースである。これがまた快感この上なしなのだ。これがジャズの醍醐味である。このベースとオラトゥンジによる魅惑的なコンガのお陰で、カイ・ウィンディングのトロンボーンも快調に突っ走る。いやいや、なかなかの出来である。
ついでに他の曲も全部ご紹介しよう。
2曲目は打って変わってスローなナンバーになり、全体をアンニュイな雰囲気が包み込む。このギャップがウィンディングらしい。曲は「Lil' Darlin'」。カウント・ベイシーお得意の曲だ。
3曲目では彼のたくましい吹奏が存分に聴ける。曲はブルースフィーリング溢れる「Doodlin'」である。続く4曲目の「Love Walked In」共々、ピアノを弾くロス・トンプキンスの出来がすこぶるいい、これには脱帽だ。
5曲目「Mangos」はマンボのリズムに乗ってダンサブルな演奏が続く。好き嫌いはともかく、ある意味この曲がハイライトかもしれない。
6曲目はハイスピード演奏の「Impulse」。ここでの吹奏はJ.J・ジョンソンを彷彿とさせるが、ウィンディングのそれはどこか人間的だ。ロス・トンプキンスも相変わらず見事なソロをとっている。
7曲目は何と「Black Coffee」。そう、あのペギー・リーで有名になった曲である。ピアノはここからロス・トンプキンスに替わってビル・エヴァンスが登場してくる。エヴァンスはあまり目立たないが一音一音に品格を感じる。ここから先はエヴァンスが参加しているということで話題性も高くなっているようだ。
8曲目はお馴染み「Bye Bye Blackbird」。聞き慣れたメロディにも関わらず味わい深く入り込んでくる。エヴァンスの後でソロをとるのはジミー・ネッパーのようだが、明らかにウィンディングとは音色が違う。トロンボーンという楽器の奥ゆかしさも同時に味わえるのが嬉しい。
ラストはウィンディングが娘のために書いたという「Michie」のスローバーションとファースト・ヴァージョンが続けて吹き込まれている。どちらも甲乙つけがたいナイスな演奏だ。エヴァンスのソロもすばらしい。

全曲聴き終えても尚、最初から聴き直したい欲求に駆られることしばしばだ。
カイ・ウィンディング、彼は白人最高のトロンボーン奏者だ。