かなりなレア盤である。
とにかくジャケットがひどい。写真はまるで新聞に載った小さな写真を強引に引き伸ばしただけという感じだし、タイポグラフィもただタイトルを記述しているだけというつまらないもの。正にドがつくシロウトの仕事ぶりである。
これだけ見た目の悪いアルバムも滅多にない。
ジャケットにこだわる自分としてはもう許せないくらいの仕上がりだ。
これは新宿のディスク・ユニオンで見つけて買った。
というのも実はこのCD、プラケースの上にさらに紙ケースがついており、中のジャケットが見えなかったのだ。
家に帰ってきて紙ケースを取った時点で腹が立った。半分詐欺にあったような気分である。
半ばがっかりしてこのCDをかけてみた。
「あれ?中身は結構いけるなぁ」というのが正直な感想。
小気味いいスイング感が全編に渡って展開されていた。
これはジャンニ・カッツォーラというイタリアのドラマーがリーダーのピアノトリオである。録音は1969年。どうやら彼のデビューアルバムのようだ。録音から既に40年近く経っているのに、まるで新譜のように新鮮だ。
それぞれの楽器の音はややこもり気味ではあるもののしっかり存在感が出ているし迫力もある。
演奏タイプとしてはビル・エヴァンス・トリオの系列で、3人のインタープレイが充分に楽しめる。
個人的にはスローな曲よりもアップテンポの曲に魅力を感じる。特にラストの「SPEAK LOW」が一番のお気に入り。
中身を隠す?紙ケースがなければ絶対に買わなかったアルバムであることは確かだが、今となってはこの紙ケースがあったお陰で楽しめている。危うくこんなにいいピアノトリオを聴きそびれるところだった。
でもやっぱりジャケットがいいに越したことはない。このアルバムがもし素敵なジャケットだったらもっともっと売れただろうにと余計なことを考えてしまう。損をしている作品の代表格だ。