SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

GIL MELLE 「Patterns in jazz」

2008年03月25日 | Baritone & Soprano Saxophone

このジャケットデザインは見事だ。数あるジャズアルバムの中でもトップクラスの出来だと思っている。
これはアルバムタイトルの「Patterns in jazz」を視覚的に表現したものだろう。筆で大きな点を整然と書き記している印象的な抽象画だといえる。どちらかというとワンパターンなジャケットデザインが並ぶブルーノート1500番台にあって、ひときわ異彩を放つ知的なアルバムだ。
ジャケットデザインはもちろんリード・マイルスだが、このグレーのパターンを描いたのがギル・メレ本人だ。
彼は作曲家でありバリトンサックス奏者であるが、それ以上にアーチストとして活躍した人だった。
ジャケットデザインもいくつか手がけている。
例えば「小川のマイルス」で有名なマイルス・デイビス・クインテットや、タッド・ダメロンのフォンテーヌブロー、ウッディ・ショウのベムシャ・スウィングなどがそうだ。
個人的にはどれもあまり好きなジャケットではないが、この「Patterns in jazz」だけは飛び抜けていい。これはリード・マイルスのデザイン力によるものだろうが、ギル・メレの描いた点の集合体もこの時代にしては実に大胆な表現だ。おそらくこのジャケットに影響されたデザイナーも多いのではないだろうか。

ジャズのジャケットデザインにもいくつかのパターンがある。
典型的なのはジャズメンのスナップ写真をダブルトーンで表現したものや、タイポグラフィを大胆に処理したもの、アルバムのイメージをイラストで表現したものなどがある。どのタイプにも傑作があるが、この「Patterns in jazz」のように純粋なアートを感じる作品は少ない。このアルバムが知的な作品に感じられるのはそんなところから来ているのだと思う。

肝心の演奏はどうかというと、タイトルほどに特別難しく考えることはない。終始軽快なサウンドが全編を包んでいる。
バリトンサックスだからといって決して重くない。
バリトンとトロンボーン、そしてギターの組み合わせが意外と新鮮だ。
一言でいえばこざっぱりした作品だという印象がある。これもジャズのパターンなのだろうか。