SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

AL HAIG 「JAZZ WILL-O-THE WISP」

2007年11月21日 | Piano/keyboard

優れたピアニストはその一人ひとりに強い個性があるものだ。何度か聴いているとその特徴が掴めるようになる。
アル・ヘイグはアドリヴの途中に歌心溢れた素早い装飾音を入れ、全体に煌びやかで優雅なピアノに仕立て上げる。
素早い装飾音といってもアート・テイタムのような切れ込む感じのフレーズではない。常に角を丸くしていくような弾き方なのだ。それによって品格が生まれる。この品格を楽しむのがアル・ヘイグの上手な聴き方なのだと思っている。

ジャズを聴き始めた頃は1950年代前半より前の録音盤は敬遠していたところがあった。
単純に音の悪いレコードは聴きたくなかったのだ。曲想を古いと感じていたこともその原因だったかもしれない。
しかし最近は好んで聴くようになった(もちろん限界はあるが)。
音の悪さがあまり気にならなくなってきたということなのだ。加えて曲想も古いとは感じなくなってきた。
なぜだろう。自分でもよくわからない。
最近のジャズが嫌いになったわけではない。新譜もできるだけチェックするようにしているし、新人の登場にも心がときめく。
そういえばビル・チャーラップが登場した時、このアル・ヘイグにずいぶん似ているなと感じたことがある。
チャーラップの弾くスタンダード曲からは古き良き時代の匂いがした。スタンダード曲はもともと古いのだから当たり前じゃないかといわれるかもしれないが、彼の弾き方は若いのにどことなく古風で優雅なのである。
そこではたと思いついた。チャーラップはアル・ヘイグの品格あるピアノに憧れていたのではないだろうかということだ。これはもちろん私の勝手な推測だ。しかしあのための効いた弾き方にはオーバーラップする部分が多いのである。
事実この「JAZZ WILL-O-THE WISP」と同日録音の「AL HAIG TRIO」に収録されている「ス・ワンダフル」のテーマ部分なんかは、チャーラップの出世作である同名のアルバムの曲と曲想がよく似ている。どちらも名演奏だと思う。

心ときめく新人であることの要素は、こうした往年の名プレイヤーの良さをいかにスマートに引き継いでいるかにある。
アル・ヘイグに限らず、往年の名プレイヤーからはまだまだ吸収できる要素がたくさん残っているように思う。だから古い時代の演奏にも新鮮さを感じるようになったのかもしれない。
本物はいつになっても古びないということだ。