SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

JOSHUA REDMAN 「BEYOND」

2007年11月08日 | Tenor Saxophone

ジョシュア・レッドマンは頭のいいジャズメンだ。
彼がハーヴァード大学の法学部を首席で卒業したという話は有名である。いや、そんなこと以上に彼のジャズに対する探求心に驚くのである。
私なんかはただ聴いていて気持ちがいいからとか、心が揺さぶられるからとかそんな単純な感覚のみで演奏の善し悪しを判断しているが、彼にしてみればもっと違う次元でジャズという音楽を捉えているのではないかと思う時がある。
そのせいで彼のサックスはいつも何か遠くを見ているように私には響くのだ。
いい方は悪いが、彼は目の前のリスナーのために吹いていない、どうもそんな気がしてならない。だから心底好きになれないミュージシャンの一人である。
とはいいつつ、彼の実力を認めないわけにはいかない。
彼のサックスからはコルトレーンやショーターにも通じる強い精神力を感じる。これは理論とテクニックに裏打ちされた圧倒的な自信をからくるものだろうと思っている。同じ若手のテナーマンでもエリック・アレキサンダーらとは確実に一線を画している存在なのだ。
特にこのアルバムでは変拍子の曲が目立っており、彼自身、明らかに次のステップを踏み出した感がある。曲も全曲オリジナル、ここで初めて彼自身のレギュラー・カルテットが結成されるなど、並々ならぬ意欲作に仕上がっている。こういったある意味挑戦的で神秘的ともいえる音世界が好きな人にとってはたまらない作品なのではないだろうか。
但し私は3曲目の「Neverend」、6曲目の「Twilight... And Beyond」などの夢見るバラードに心奪われる。彼にしか出せない音がこのバラードに隠されているような気がするからである。

彼の作品はどれも重いように見えて実は聴きやすい。それは彼が奏でる一音一音が流れるように繋がっているからである。ここが彼の非凡な点であり、これからの活躍を期待できる最も大きな要因なのだ。