SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

BEV KELLY 「BEV KELLY IN PERSON」

2007年11月04日 | Vocal

歌は決してうまくないが、とても魅力のある人だ。
今はもう閉めてしまったレコード店でこのアルバムを見つけたのだが、彼女のこの笑顔が気に入って購入したのを覚えている。実に単純なものだ。
ベヴ・ケリーはパット・モランと組んだカルテットでの歌声も良かったが、ソロ・シンガーとなってからはますますその魅力に拍車がかかったように思う。これはそんな彼女が1960年にサンフランシスコのThe Coffee Galleryというクラブで録音したライヴアルバムである。

彼女の声質はかなりコケティッシュだ。ここには曲の合間に客への曲紹介などをしている彼女の肉声が収録されているが、その生の声を聞けばすぐわかる。しかしそれを売りにしていないところが彼女の魅力なのだ。
歌い方は意外とダイナミックである。もともと声量がない方なので聴いていて苦しくなる場面もあるが、その分一生懸命さが伝わってくる。そういう点で庶民感覚のあるシンガーだともいえるのではないだろうか。
ただ本当に彼女の魅力を伝えているのは「Then I'll Be Tired Of You」や「My Foolish Heart」、「My Funny Valentine」のようなスローなスタンダードナンバーである。耳元で囁くように歌い始め、徐々に盛り上げていくのが彼女の特徴だ。スローなナンバーだとその愛らしさがグッと際立ってくる。
ポニー・ポインデクスターのアルト・サックスも彼女の歌を引き立てており好感が持てる。

だいたいこういったくつろいだ雰囲気が私のお気に入りだ。
クラブで聴く女性ヴォーカルは、あまりしつこい歌い方であってはいけない。要するに歌や演奏よりもお酒や連れとの会話がメインなのである。そこを理解しているかどうかがいいジャズメンかどうかの分かれ道だといえる。
私はクラシックのような大規模なジャズコンサートは好きではない。もっとこぢんまりとしたステージで観たいといつも思っている。
そんな思いを抱くようになったのも、ここでのベヴ・ケリーに影響されたせいかもしれない。