徒然なるままに、一旅客の戯言(たわごと)
*** reminiscences ***
PAXのひとりごと
since 17 JAN 2005


(since 17 AUG 2005)

トロント ピアソン国際空港

 さる8月2日午後4時3分〔現地時間〕、カナダはトロントのピアソン国際空港でエールフランス358便( Airbus A340-300 型機)が着陸後に大破・炎上する事故を起こしました。

機体が炎上するにまで至った事故にも関わらず、乗務員の的確な避難誘導と乗客がパニックに陥らずにそれに従ったために、機体に火が回りだす前に、幼児を含む297名の乗客と12名の乗員、当該便に搭乗していた計309名全員が無事に生還することが出来ました。

この事故に関しては、
 8月3日 「激しい雷雨の中での事故でした
 8月4日 「Airbus A340 事故続報
 8月14日 「エールフランス機事故に対するALPAの見解
に稚拙な投稿をしております。

事故は、Runway 24L に着陸後、滑走路内で停止できずに滑走路をオーバーランし、滑走路先のくぼ地で機体が停止、大破・炎上にいたったものでした。

今回、事故が発生したカナダ・トロントのピアソン国際空港のチャート類を入手しましたので、その一部(二種類)を参考までに紹介します。

先ず、空港の見取り図です(タイトル画像にも使用しました)。

ピアソン国際空港には、北東-南西方向に伸びる平行滑走路が3本と、それに直交し北西-南東方向に伸びる平行滑走路が2本、計5本の滑走路を有する大きな空港です。

旅客ターミナルは空港の北東側に位置し、管制塔は空港敷地のほぼ中心部に位置しています。誘導路も複雑で旅客ターミナル・エリアも複雑なことから、エプロン領域をコントロールする管制塔が別に設けられています。

今回の事故は、エールフランス機が空港で一番東端に位置する Runway 24L に進入・着陸し、そのまま滑走路内で停止できずに Runway End を通り過ぎ、オーバーラン。Runway 06R の進入灯が設置してあるくぼ地に突っ込んでようやく停止しました。

Crashed_Plane_image


エールフランス機事故に対するALPAの見解」でも ALPA の指摘を紹介しましたが、Runway 24L の終端にはオーバーラン・プロテクション・エリアがありません。
※オーバーラン・エリアという意味では、この空港にはオーバーラン・エリアを供えた滑走路が一つもありません。

また、Runway 24L はピアソン国際空港の5本の滑走路中、一番長さが短く、ILS の Glide Slope にのって接地帯に降りた場合、使用可能な滑走路長は2363mとなります(滑走路そのものの長さは2743mありますが、接地帯は滑走路端から内側に入り込んだ位置にありますので、Glide Slope の電波に乗って接地した場合、その先に残された使用可能な滑走路長は短くなります)。

一番短い滑走路と言っても、成田のB滑走路よりは長い(本来の計画長よりも長い)ですし、ILS Glide Slope Usable Length も羽田のB滑走路( Runway 22 )の2161mよりも長いのです。

当然、Airbus A340-300 型機が着陸するのに必要な滑走路長は十分に満たしており、当該滑走路に進入・着陸を許可したことに問題はありません。

ただ、事故発生当時の気象状況(激しい雷雨が続いており滑走路面も滑りやすい状態であったこと)と、Runway 24L は接地帯の標高が 547feet、滑走路終端の標高は 525feet と 22feet (約6.7m)下り勾配となっていたことは、オーバーラン・プロテクト・エリアが無いことと相まって、安全サイドからは悪い要素だったと思います。

それなりの画像サイズになってしまいますが、そこそこ文字が読み取れるピアソン国際空港の空港見取り図は「ここ」に置きました。
※事故後の8月12日に revise されているチャートですが、大きな変更はない筈です。



次に、358便が進入・着陸した Runway 24L の Approach Chart を示します。

CYZZ_ILS_Rwy24L_approach_chart


ピアソン国際空港には、ILS CAT II, IIIA, IIIB, IIIC まで備えた滑走路 Runway 06L があるのですが、当時の気象状況や Traffic Flow から358便が指定された滑走路は Runway 24L でした。
この滑走路は、通常の ILS (ILS CAT I) ですが、minimum (Decision Height)(着陸決心高度:この高度まで降りても滑走路が視認出来ない場合には missed approach procedure にしたがって着陸復航を行なわなければならない)が、地上 250feet (約76m)と、一般的なフル・スペックの ILS CAT I のそれ 200feet よりも若干高めです。地上の障害物に影響されてのことだと思いますが。

悪天候の場合には、たかが 50feet されど 50feet であります。

Airbus A340 事故続報」の交信記録にある KIREX fix が ILS のビーム上に示されています。

チャート下側の Profile 図を見ると、KIREX fix から Missed Approach Point ( ILS Glide Slope にのって地上から高度 250 feet に達する地点)までは、4.7 海里(約8.7km)で、対地速度 140kt (時速約260km)で進入した場合に要する時間は約2分であることがわかります。

Runway 24L の Approach Chart についても、そこそこ字が読み取れるチャートを「ここ」に置きました。
Comment ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 事故の連鎖か...どうなってるの »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。