徒然なるままに、一旅客の戯言(たわごと)
*** reminiscences ***
PAXのひとりごと
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エールフランス機事故に対するALPAの見解

 ALPA: Air Line Pilots Association, Int'l (乗員組合連絡会議)が8月2日〔現地時間〕トロント、ピアソン国際空港で発生したエールフランス358便、エアバスA340機の事故について、8月4日付けで声明を出しているのを見つけましたので、概要を紹介します。

声明では、ピアソン国際空港が滑走路の安全区域(具体的にはオーバーラン・エリア)に関して国際基準を満足していなかったことに言及しています。
※ピアソン国際空港に関するチャート類は、後日改めて紹介する予定です。

滑走路の不適切な安全領域の危険性(原文では the dangers of inadequate runway safety areas )に起因する最新の事故である、とした上で、ピアソン国際空港のオーバーラン領域の不備を指摘しています。

過去にも同空港では、Runway 24R (今回の事故は Runway 24L に着陸後オーバーランして発生しました)から離陸しようとした Air Canada の DC-9 が離陸中断( rejected takeoff )し、その後オーバーラン、今回の事故と同じくぼ地に突っ込み、二名の犠牲者を出しました。
そのときのカナダの事故調査結果では、そのくぼ地が死傷者を出す原因となった、と結論付けています(原文: The report from the Canadian government concluded that the ravine "contributed to a high casualty rate". )。

ALPA では、米国とカナダで発生した、滑走路終端付近の障害物により死傷者や損壊の程度が増加した事故について、数多くの調査をしてきているそうです。

幾つかの事故を紹介し、オーバーラン・エリアの必要性とそれを設けていないことによる危険性を警告しています。

対応策として、くぼ地を埋めるといった直接的な解決方法がある一方で、都市部の空港では物理的制約から、現実問題として難しい場合も多いことも指摘しています。

その上で、そのような条件下でもオーバーランによる事故を防ぐ手段として、EMAS: Engineered Materials Arresting System (滑走路上に設置された捕捉システム)の導入事例と効果について言及しており、今後も IFALPA: International Federation of Air Line Pilots Associations (ロンドンに本部を置く国際定期航空操縦士協会連合会)を通して、全ての民間航空機が使用している空港に対して適切なオーバーラン・プロテクションが提供されることを目指す、と結んでいます。



実際に運航に携わるパイロットの組織が、事故調査委員会とは別に“これまで我々が問題視してきた危険要因が不幸にもまた事故を招いてしまった”“我々が指摘する危険要因をこれこれの施策で排除することが、同様の状況下での事故による被害を軽減させるのに有効であるから、今後もその働きかけを続ける”旨のことを言っています。

流石は、航空機の安全運航と共に、万一の事態に陥ったときにも被害を最小限に食い止めるための現場の声を述べることで、社会全体が航空機事故の撲滅と事故による犠牲をくい止めることに自然と向かっているように思えます。

我が国にも日本乗員組合連絡会議 ALPA Japan: Airline Pilots' Association of Japan があり、IFALPA の中でも第3位の構成員数です。

行政(当局や事故調(これが独立した機関でないことが我が国の問題点))が、航空機運航の安全性向上と民間航空輸送産業の健全で安定した発達(労働条件等も含む)を目指す ALPA Japan の活動に協調・協力できる社会になれば良いのですが。



ALPA 声明の原文は、ALPA News Release からどうぞ。
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