徒然なるままに、一旅客の戯言(たわごと)
*** reminiscences ***
PAXのひとりごと
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気象通報式の読み方(その2)

「気象通報式」の読み方(その2)は、定時飛行場実況気象が題材です。

前回の“短距離飛行用飛行場予報”の読解と共通部分もありますが、今回は“実況気象”ですから、より具体的な項目が追加されています。

今回も地点は札幌・新千歳空港(地点略号:RJCC)を選びました。以下の英数字列が、本日(2月6日)の午前7時(日本時間)に観測された、札幌・新千歳空港の「定時飛行場実況気象」です。

METAR RJCC 052200Z 32008KT 3000 -SHSN SCT005 BKN010 BKN020 FEW020CB
M02/M03 Q1011 RMK 3ST005 5ST010 7CU020 1CB020 A2987 8000NE-SE CB 5KM S MOV S=

METAR RJCC 052200Z
1.観測の種類:METARは以下の通報が定時観測気象報であることを示しています。
観測の種類は次の2つの識別符で示されます。
METAR:定時観測気象報であることを示す
SPECI:定時観測以外で気象現象に一定の重要な変化があった場合等に実施された特別観測気象報であることを示す
2.地点略号:RJCCは、読み方(その1)で紹介したように、札幌・新千歳空港の地点略号です。
3.観測日時:2桁の日付に続いて4桁(時分)の世界協定時(UTC)にZを付加して示されます。
052200Zは世界協定時の5日22時00分ですから、日本時間では6日07時00分になります。

32008KT 3000 -SHSN
4.風向・風速:真方位による風向を10度に丸めて3桁で示し、風速は観測時刻前10分間の平均値を2桁で示しKTが付けられます。風速の単位はノットです。
ここでは真方位320度の方角から風速8ノットの風であることを示しています。
※風は航空気象では重要で、他にも種々の状況通報則が定められているので、別の機会に詳しく説明します。
5.卓越視程:(どのくらい先まで見通せるか)を10km以上は9999、10km未満の場合はメートル単位で4桁の数字で示されます。4桁のステップは5000~9999は1000m間隔で、5000m未満は100m間隔となります。100m未満の場合は0000で示されます。
ここでは、卓越視程が3000メートルであることを示しています。
6.滑走路視程距離(RVR):この例では通報されていません。
※滑走路視程も航空機の運航において重要な要素を持ちますので、別の機会に説明することにします。
7.現在天気:かみなり(雷電)等の特殊な現象を除き、飛行場とその周辺(半径約10キロメートル以内)の運航上重要な天気現象について、天気略号を適切に組合せて重要な順番に最大3群まで示されます。天気現象が天気略号のいずれにも該当しない場合には省略されます。

-SHSNは、3つの現象コンポーネントから成っています。
強度現象を表す-、特性を表すSH、降水現象を表すSNです。

(1) 強度現象を表す記号
- 弱(light)
記号なし 並(moderate)
+ 強(heavy)

(2) 特性を表す記号
SH しゅう雨性(shower)
TS 雷電(thunderstorm)
FZ 着氷性(freezing)
など、他にもあります。組み合わせられる現象にも決りがありますので、別の機会に詳細な説明が必要ですね。

(3) 降水現象を表す記号
DR 霧雨(drizzle)
RA 雨(rain)
SN 雪(snow)
SG 霧雪(snow grains)
IC 氷晶(ice crystals)
PL 凍雨(ice pellets)
GR ひょう(hail)
GS 雪あられ/氷あられ(snow pellets and/or small hail)

この他にも
(4) 視程障害現象を表す記号
(5) その他の現象を表す記号
があります。

-SHSNは、「弱いしゅう雨性の雪」であることを示しています。

SCT005 BKN010 BKN020 FEW020CB
8.雲:雲量、雲底の高さ、雲形の順番に並べた群で示されます。
雲量は、読み方(その1)で紹介したように、全天空に対する見かけの割合が次のように報じられます。
FEW 雲量 1/8~2/8 (Few)
SCT 雲量 3/8~4/8 (Scattered)
BKN 雲量 5/8~7/8 (Broken)
OVC 雲量 8/8 (Overcast)
雲底の高さ(地表または水面からの垂直距離)は100フィート単位の3桁の数字で示します。不明または観測できないときには///で示します。
雲形はCBとTCUだけ本文に示されます。CB=積乱雲(Cumulonimbus)、TCU=雄大積雲(Towering Cumulus)で何れも対流性の雲で、航空機の運航に支障をきたす雲です。

M02/M03 Q1011
9.気温・露点温度:摂氏で示した気温と露点温度を斜線を挟み1度単位の2桁の観測値で示します。0℃未満の場合は2桁の値の前にMを付けます。
この例では、気温氷点下2℃、露点温度氷点下3℃です。
10.高度計規正値(QNH):
Qを前置きしてヘクトパスカル値が4桁の数字で示されます。海面気圧を表します。
※QNHについて;飛行機が空港にあるときに,気圧高度計がその空港の標高を指示するように,すなわち海面からの気圧高度を指示するよう高度計をセットします。このような方式をQNHセッティングといいます。

この例では報告されていませんが、
11.過去天気
12.低層ウィンドシェア情報
が該当する場合には報告されます。

RMK
13.国内記事:日本ではRMKに続いて、該当する項目があれば示されます。

3ST005 5ST010 7CU020 1CB020
8分雲量による雲量、雲形、雲底の高さを示しています。この例では、以下のようになります。
(本文):SCT005、(記事):3ST005
(本文):BKN010、(記事):5ST010
(本文):BKN020、(記事):7CU020
(本文):FEW020CB、(記事):1CB020
3ST005:3/8の雲量の層雲(stratus)が雲底500フィートで観測されている
5ST010:5/8の雲量の層雲(stratus)が雲底1000フィートで観測されている
7CU020:7/8の雲量の積雲(cumulus)が雲底2000フィートで観測されている
1CB020:1/8の雲量の積乱雲(cumulonimbus)が雲底2000フィートで観測されている
と、本文に比べて雲の様子が詳細に報じられています。

A2987
QNHの水銀柱の0.01インチ単位による表示。ここでは29.87インチ。
※航空機に搭載されている気圧高度計の補正には、このインチ単位の数字を用いています。

8000NE-SE
卓越視程が5000メートル以下で卓越視程の2倍以上または半分以下の方向視程がある場合と、卓越視程が5000メートルを超えていて、卓越視程の半分以下かつ5000メートル以下の方向視程がある場合。
この例では、本文で報じられている卓越視程は3000メートルでしたが、北東・南東方向の方向視程は8000メートルあることを示しています。

CB 5KM S MOV S
視界内に存在する飛行に影響を及ぼす現象(TS, CB, TCU 等)が観測された場合は、その位置、移動方向を飛行場から見た存在方向を8方位またはOHD(over head)を用い現象と共に示します。
この例では、CBが空港の5km南に観測され、それが南に移動していることを示しています。


昨日今日と、かなりマニアックな話題になりましたが、単なる英数字の羅列にしか見えない「気象通報式」も読解できるようになると、各地のお天気の様子が想像できるし、自分なりの予報の一助ともなり、面白いものです。

勿論、パイロットやディスパッチはこれらを難なく読みこなし、さらに深い読みをしている訳です。お天気は刻々と変化しますので、単発の通報式ではなく、時系列で複数の通報式を読解・解析する力が求められます。それに加え、各種天気図、悪天予想図、レーダー画像、気象衛星画像などからの情報も考慮し、総合的にお天気を解析できるようにならなければなりません。

小生も一PAXを名のる!?からには、搭乗する前にはそれ相応の資料を揃え、空の旅を別の観点からも楽しんでいます。さらには、フライト後には、飛んでいたころの各種天気図や気象通報式と照らし合わせ、Look Backを積極的に行なうようにして、航空気象と運航について理解を深めるよう努力しています。
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