徒然なるままに、一旅客の戯言(たわごと)
*** reminiscences ***
PAXのひとりごと
since 17 JAN 2005


(since 17 AUG 2005)

気象通報式における風

気象通報式における“風”の表記について、少し詳しく説明します。

風向・風速は;
風向:真方位による風向を10度に丸めて3桁で示す。
風速:観測時刻前10分間の平均値を2桁で示し KT が付けられる(ただし、100kt 以上のときは P99 と表記し、"Above one hundred knots" と通報する)。
※風向・風速は滑走路から高さ6~10メートルで代表する風の水平成分を観測する。
となっています。

ところで、世の中には『風任せ』という言葉があるように、風は常に上述した観測方法に適したように吹いてくれるとは限りません。

以下で気まぐれな?風の全ての状態を表現できる100%の保証はないのですが、気象通報式に定める約束事を列挙してみます。


・穏やかな風
風速が0.4ノット以下(静穏)の場合は 00000KT と表記し、"Wind calm" と通報されます。


・風向を特定できない風(その1)
-平均風速が3ノット以下で風向変動幅が60度以上ある場合
-平均風速が4ノット以上で風向変動幅が180度以上ある場合
-1つの風向を特定できない場合
には、3桁の風向部分は VRB と表記し、続く2桁で風速を示します。
例) VRB03KT、VRB10KT


・風向を特定できない風(その2)
-平均風速が4ノット以上で10分間の風向変動幅が60度以上180度未満の場合
平均風向風速に続いて変動する風向の両端の値を V をはさんで時計回りに表記します。
例) 09010KT 050V130 ... 風向変動幅は80度
※風向変動幅が180度以上の場合には先に示した(その1)に該当します。


・風の息
-観測時刻10分間の 最大瞬間風速 が、平均風速を10ノット以上上回っている場合
平均風速の後に G を前置して最大瞬間風速が示されます。G は Gust の略です。
例)17020G40KT
※このような Gust は風向変動と共にパイロット泣かせです。進入から着陸にかけて揺れたり、エンジン音が頻繁に変るような場合、パイロットがラフエアーと闘って機体の姿勢を安定させようと頑張っているに違いありません。[条件が悪くもないのに、やたらパワー出し入れしたり、エルロンをバタバタさせていると、PAXのご機嫌が悪くなります]


・観測時刻前10分間に顕著な風の変化があった場合
-変化前後において、風速が10ノット以上で30度以上の風向の変化が2分以上続いた場合
-10ノット以上の風速の変化が2分以上続いた場合
変化後の 平均風向・平均風速・最大瞬間風速・風向変動が示されます。
よって、このような場合には対象となった平均時間は10分より短いことになります。


・その他
通報される風が、当該飛行場の代表測器でない測器の値の場合や、目視観測による場合には、記事(RMK)にその旨が示されます。
例) WIND EST ... 目視観測による



補足:
管制塔や ATIS(Automatic Terminal Information Service) で報じられる風向は、磁方位で表されます。つまり、航空機内の計器が示す値をそのまま使ってオフセットを即座に計算できる訳です。
例)[Tower] All Nippon 52, cleared to land Runway 34L, wind 330 at 9.
(全日空52便、滑走路34Lに着陸を許可する。風は330度から9ノット)
※このときの風向330度は磁方位
※蛇足(でも重要):管制塔は着陸を 許可する と言っているのであって、着陸せよ とは言っていません。着陸するかしないかの最終決定権はパイロットにあります。

日本付近では、真方位磁方位との差は、磁方位が西に7度程度偏向しています。
つまり、磁石の指し示す真北は、地図上の経度線より西にずれています。
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