井財野は今

昔、ベルギーにウジェーヌ・イザイというヴァイオリニスト作曲家がいました。(英語読みでユージン・イザイ)それが語源です。

大志の歌

2011-09-15 23:38:25 | 井財野作品

画家で詩人の安野光雅氏による詩集のタイトルである。内容は校歌・寮歌のパロディと言えば良いだろうか。様々な架空の学校が登場し、そこの校歌や寮歌はこんな感じ、という具合に作られている。

筆者の好みにぴったりだったので、これにはぜひ曲をつけて、さらに本物の校歌らしくしたいと思った。

筆者が選んだ歌は、以下の5曲。

・蝦蟇の歌

・注文の多い料理店

・仙波山寺

・さんごの宮

・サバダッテバ

それで出版社を通して安野先生に連絡をとったのである。

しばらくして返ってきた回答が、以下の通り。

あのうたには、先約があります。

作曲については先約の人と相談しますが(中略)、ともかく今回お申し越しの歌詞に限り、了解します。

あぁ良かった・・・が、

「注文の多い料理店」「仙波山寺」「さんごの宮」については、すぐにわかりません。私のうたかどうか、不安です。この点を改めて教えてください。

いやぁ、大作家というのはすごいな。昔、シューベルトが自分の作った歌を聞いて「いい歌だね、誰が作ったのかな?」と言ったことがあると聞いていたけれど、まさにそれと同じだ。

とりあえず、お礼の手紙をしたためると、またお返事がきた。その中に・・・

「さんごの宮」とか「仙波山寺」など、名前がきれいなので、私がかいたものとは思わなかったという、恥ずかしいゴカイによるものです。

やはりシューベルトと同じだ! とにもかくにも許可が下りた訳で、めでたく作曲にとりかかったのであった。

それから発表するのにしばらく時間が必要だったのだが、来年 (2012年) の3月4日、混声合唱団トニカの定期演奏会で発表できる運びとなった。

そしてプログラミングが進むのだが、紆余曲折を経て、「大志の歌」の後には信長貴富作曲の「スピリチュアルズ」が演奏されることになった。

組曲「大志の歌」の最後に配していたのは「サバダッテバ」。これは鯖が「サバダバダ」と歌う内容。だからジャズ風の曲にしてある。

一方「スピリチュアルズ」は黒人霊歌のスピリチュアルの発展形と言えば良いだろうか、本番では打楽器も導入して、思いっきり「ジャズ」になる予定だ。

この「思いっきりジャズ」の前に「ジャズもどき」なんて、とても恥ずかしくて発表なんかできない。何かに差し替えなくては、と思うものの、「大志の歌」の中で一番フィナーレにふさわしいと思って選んだのが「サバダッテバ」なのだ。そうそう簡単に代わりはみつからない。

何カ月も逡巡した挙句に選んだのが「おやゆび姫」。これはバラードになっている。

また、恐る恐る安野先生に打診のはがきを出しんた。すると、

おやゆびひめ

かいてマシタカネ?

アッタラ

どうぞ

やって下さい

安の

というはがきが来た。安野先生の絵が印刷されている絵ハガキだ。絵は大変叙情的でわかりやすいのだが、文面を解読するのは、なかなか大変。漢字とひらがなとカタカナが混じり、縦書きと横書きが混じったこともあった。上記の文は、たぶんこう書いてある、というもので、正確なところはやや自信がない。「さっきの手紙のご用事なあに」とも訊けないしな・・・。

いやぁ、芸術的だなぁと、ひたすら感動しながら、毎日眺めて過ごしていたら、次のお葉書が・・・。

いい曲になります様

ねがっております。

ア、返事出したかな?

まずい、ひたすら感心ばかりしていて、お礼の返事を出すのを忘れていた。慌てて返信したところだが、ついつい文面の確認をしてしまいそうで・・・。これじゃ本当に「やぎさんゆうびん」になってしまうよ。

という次第で、現在「おやゆび姫」を作曲中。来年、福岡県粕屋郡にある「サンレイクかすや」での発表となる。都合よろしければ、ぜひお越しいただきたい。

ついでに「やぎさんゆうびん」も来る9月19日、佐世保市民会館で演奏する。こちらもよろしくお願いします。