井財野は今

昔、ベルギーにウジェーヌ・イザイというヴァイオリニスト作曲家がいました。(英語読みでユージン・イザイ)それが語源です。

梅鶯林道3,4,5級

2010-01-19 18:00:58 | 梅鶯林道

 「小学生が弾く曲」をイグラーユさんが紹介した途端に,アクセス数が普段の10倍以上に跳ね上がった。相変わらず「ビバ!~」の影響力はすごい。

 しかし,あれでおしまいではない。それを基に井財野としてはどう考えるか,というのが続くのである。幸いにして,何もせずボーっとしている時間を与えられたので,考えるのにちょうど良い時間になった。

 かねてから思っていた。書道,珠算や柔・剣道,囲碁,将棋の「段」のようなものがヴァイオリンにもあれば良いのに・・・ということ。柔道の段位は,学習者の励みになるために,囲碁将棋か何かを参考に嘉納治五郎が考えたと言われている。20年くらい前には,英語道を考えた人もいたなぁ。

 勝手に考える分には自由なのだから,勝手に考えてみたいと思う。せっかくの「梅鶯林」という鈴木先生の造語をここに活かして「梅鶯林道」。梅鶯凛道の方がきれいかもしれないけれど,やはりここは鈴木翁に敬意を表しておこう。

【5級】
ここから始まることにする。第1ポジションに習熟する段階である。

【4級】〔白い本,第3巻の途中まで〕<鈴木3,4巻相当>
初心者が最初に超えなければならない関門「シフティング」(ポジション移動)をクリアしてからの段階である。
まず,第3ポジションまで習熟する必要がある。
(ガラミアンの音階を応用すれば,第3ポジションまでの音階練習を導入できる。)

筆者としては,この段階で右手首の練習を導入することをお勧めする。使用するのはシェフチーク(セヴシック)作品1-1の11番。

代表的なレパートリーは,
・ヴィヴァルディ:協奏曲 イ短調 作品3-6

【3級】〔白い本,第3巻の後半から第4巻程度〕<鈴木5,6巻相当>
第5ポジションまでの習熟段階で,重音も少しずつ導入される。
2オクターヴの音階(小野アンナ等)も必要。

筆者としては,この段階でトリルの練習を導入することをお勧めする。使用するのはクロイツェル42の練習曲の15番(から22番)。

ちなみに「クロイツェル」,筆者は子供の頃,1番を除いて最初から順番にやったし,今でも生徒さんにはそうさせているが,今回学習段階を整理して思うのは,必ずしも全部を順番に弾く必要はない,ということ。シェフチークやスケールで代用できるものもあるし,クロイツェルに特徴的なのは,このトリルと4番のルーレ(スラー・スタッカート,スタッカート・ア・ラ・コルダ)で,極論すれば,それ以外はやらなくても良いし,逆に,トリルとルーレはぜひやるべきだ。

その代わり,という訳ではないが,「手のヴィブラート」と「指弓」の訓練は,この段階で行いたい。

代表的なレパートリーは,
・アッコーライ:協奏曲
・エックレス:ソナタ
・ヘンデル:ソナタ第3番,4番,2番
・バッハ:協奏曲第1番 イ短調
(SJリスト共に,第1番と第2番は同レヴェルにしているが,両曲において重音の扱い方がかなり違うので,井財野版はグレードを分けることとする。)

・ドルドラ:思い出
・マスネ:タイスの瞑想曲

また,跳ねる弓にも慣れる必要が生じてくるため,お勧めの曲。
・ダンクラ:エア・バリエ第2番

少しだけリコシェが出てくる。


楽隊のうさぎ

2010-01-16 23:34:10 | 受験・学校

 今年もセンター試験がやってきた。受験生は大変だ。とは言え,これはある意味当然。一生のうちに何回かしかない「がんばり時」なのだから,がんばり倒してほしい(ちょっと変な表現?)。

 ところで監督する方も結構大変なのである。問題を配ったり,運んだり,欠席を数えて報告したり,という仕事が大変なのではない。受験生に目を配る以外は何もしてはいけない時間というのがある。この時間が辛い。当然寝てはいけないし,もちろん読書もできない。ただぼーっとしていなければならないのが,ものすごく疲れる。

 中でも辛いのは,数年前に始まった「リスニング・テスト」。これは身動きができない。音をたててはいけないからである。今年もタイム・キーパーという係に充てられた。去年までは,タイム・キーパーのみICプレーヤーの音声を聞くことができた。今年は音声チェック専門の人員が配置され,タイム・キーパーはひたすら時計と受験生を眺めるのみ。
 それでも今年は少し慣れてきたようで,30分間立ちっぱなしが何とかできるようになった。その昔,先輩から聞いた言葉を思い出しながら・・・「ソリストは立つのが仕事ですってU野先生から言われたよ」

 それ以外の科目では,試験問題の冊子をチラチラ眺めることが辛うじてできる。しかし,へたに読もうものなら劣等感が刺激されるだけ。読まないがマシというものだろう。

 そのような中,今年の国語の現代文は「音楽」を扱っており,こちらとしては一時の安らぎを得ることができたのは幸いだった。中学校の吹奏楽部が夏のコンクールを受けるあたりを描いた,中沢けいの小説「楽隊のうさぎ」の一節である。

 試験が終わってからじっくり読ませてもらった。さすがは文学者,音楽屋さんとは違う文学的な表現が随所に現れるのは当然として,音楽屋さんも納得の叙述になっているところが嬉しい。演奏する人やコンクールを受ける人にしかわからないと思われる特有の心理描写も巧みで共感を呼ぶ。

 例えば「音が音楽になろうとしていた」という文がある。
 私もよく使う表現,「それじゃただの音で,音楽になっていないよ」のように。

 「スゲェナ」「和声理論の権化だ」
 いかにも生意気な中学生が言いそうなセリフ。

 さて,ここで問題です。この二つはどういう意味でしょう?五択です。

 1. 指揮者の指示のもとで各パートの音が融け合い,具象化した感覚を克久(主人公の名)に感じさせ始めたこと。
 2. 指揮者に導かれて克久たちの演奏が洗練され,楽曲が本来もっている以上の魅力を克久に感じさせ始めたこと。
 3. 練習によって克久たちの演奏が上達し,楽曲を譜面通りに奏でられるようになったと克久に感じさせ始めたこと。
 4. 各パートの発する複雑な音が練習の積み重ねにより調和し,圧倒するような迫力を克久に感じさせ始めたこと。
 5. 各パートで磨いてきた音が個性を保ちつつ精妙に組み合わさり,うねるような躍動感を克久に感じさせ始めたこと。

 このように,音楽的には,どれを正解にしてもいいようなことしか書いていない。中学生なんか,意味も解らず「権化」と言っていたに違いない,なんちゃって。よーく,よーく考えたら「これだ!」と思うけれど,さらに厳密に考えると,こっちか,みたいな答え。

 正直言って,高校生の頃は,ここまで考え抜くことはできなかったと思う。それ以外の問題も合わせて80分で答えなければならないのだから,やはり受験生は大変である。

 明日まで「がんばり通せ,受験生!」(これならまともな表現かな?)


小学生が弾く曲(3)

2010-01-14 00:17:52 | 梅鶯林道

 今回は,小学生が弾くには難しすぎるかもしれない,というレヴェルの紹介と考察である。(ザスマンズハウスのグレードをS,Mr. Jubin MatloubiehのものをJと呼ぶことにする。)Sは6,Jは9,例によって結構難しい曲もあったりする。

 まずS。

 【無伴奏】

・バッハ:無伴奏パルティータ第3番 ホ長調
・バッハ:無伴奏パルティータ第2番 ニ短調(シャコンヌを除く)

・ヒンデミット:無伴奏ソナタ第1番
・ヒンデミット:無伴奏ソナタ第2番
(バッハをやるので精一杯で,ヒンデミットまではとても手が回らないケースが多いのでは?)

・プロコフィエフ:無伴奏ソナタ
(音大生は時々弾く人がいる。クレメラータ・バルティカは十数人の斉奏で演奏していた。)

 【ヴァイオリンとピアノ】

・ベ-ト-ヴェン:ソナタ第1番~第8番
(手始めは第1番,第5番で,第3番,第6番以降は少し難しいと思う)

・ブロッホ:ニーグン

・ブラームス:ソナタ第1,2,3番
・ブラームス:FAEソナタ
(難易度とすればこのあたりかもしれないが,基本的には大人の音楽だと思う)

・ファリャ:スペイン民謡組曲
(コハンスキーが編曲した「七つのスペイン民謡」,ラロやサラサーテよりずっとスペイン色が強いので,勘が働かないと演奏はかなり難しい)

・フォーレ:ソナタ第1,2番
(かなり難しい。それ以上にピアノ・パートはさらに難しい。)

・グリーグ:ソナタ第2,3番
(ここに載せたソナタの中で,一番気楽に弾けるのではないだろうか。良いピアニストが見つかると,なかなか幸せな時間を過ごせる。現在公開中の映画「のだめカンタービレ」では,マルレ・オケのリハーサルが終わり千秋が疲れきって控室に戻ったシーンで使われていた。第2楽章のヴァイオリンが出てくる直前までであったが。)

・アイヴズ:ソナタ第4番
(知らなーい。でもアイヴズはなかなか愉快なおじさんである。)

・クライスラー:プレリュードとアレグロ
(日本では小学生に弾かせたがる曲だ。でもスピッカートができて重音の基礎があり,右手首を柔軟に使えないと弾けないので,このレヴェルが妥当かもしれない。)

・クライスラー:愛のよろこび
(この重音はとても難しい)

・クライスラー:美しいロスマリン
(筆者は,小学生の時,スラーを全部切って弾いた。スラーをつけるか切るかで難易度は全然違うが,演奏会で弾くのなら,スラーを切ったところで不満に思う人はいないだろう。)

・クライスラー:中国の太鼓

・ルクレール:ソナタ ニ長調

・メシアン:主題と変奏
(知らない!)

・プロコフィエフ:ソナタ第2番 ニ長調
(これはやはり「フルート・ソナタ」,興味の無い人は弾くべきではないと思う。)

・サラサーテ:バスク奇想曲
(これは,種々のボウイングの練習,実践にとても良い曲)

・サラサーテ:ハバネラ
・サラサーテ:アンダルシアのロマンス
(このあたりは,演奏会にお薦め)

・シンディング:組曲
(疑似バロックのB級作品かとも思うけれど,非常にヴァイオリニスティックで,特に1曲目は「ハッタリ」が効く。)

・ストラヴィンスキー:デュオ・コンセルタンテ
・ストラヴィンスキー:イタリア組曲
・シマノフスキー:神話
・シマノフスキー:夜想曲とタランテラ
(演奏会で近代的なものを入れたい時にはお薦め。教材として使うものではないだろう。)

・ヴュータン:アメリカの思い出「ヤンキー・ドゥードゥル」
(こんなのあるんだ・・・フルートの曲でやはり「ヤンキー・ドゥードゥル」をテーマにした曲をドップラーが作っている。ゲテモノだと思うが,聴衆はとても喜ぶのだそうだ。)

・コープランド:ソナタ
(アメリカでは演奏されているのだろうか?)

・フランク:ソナタ
(これも大人の音楽。ピアノ・パートは無茶苦茶難しい。)

 【ヴァイオリンと管弦楽】

・バルトーク:ラプソディー第1番
・バルトーク:ラプソディー第2番

(もっと難しいと思うけど)

・ベートーヴェン:三重協奏曲(ヴァイオリン,チェロ,ピアノのための)
(ピアノが易しく,チェロが一番難しいと言われている。教材には不向き。)

・メンデルスゾーン:協奏曲 ニ短調
・メンデルスゾーン:二重協奏曲 ニ短調
(何もこんな珍曲を載せなくたっていいのに・・・)

・モーツァルト:協奏曲第1番 変ロ長調
・モーツァルト:協奏曲第5番 イ長調
(Suzukiの9巻にはこの第5番が掲載されていて,レヴェル5になっているのに何故ここに挙がっているのか?)

・ヴォーン=ウィリアムス:揚げひばり
(英米圏ではポピュラーなのか?)

・ヴィオッティ:協奏曲第22番 イ短調
・ヴィオッティ:協奏曲第23番 ト長調
(これは小学生が弾く曲でしょう!)

・バルトーク:協奏曲第1番
(技術的には確かにこのレヴェルかもしれないが,何とも静謐な第1楽章のあの世界を表現するのは大変難しいと思う。)

・ハチャトゥリアン:協奏曲
(オイストラフのイメージが付きまとうので,もっと難しいと思っていたが,よく考えると確かにこのあたりが妥当かもしれない。)

 Jの【レヴェル9】。こちらはジャンル分けは無い。

・バルトーク:ラプソディー第1番
・バルトーク:ラプソディー第2番

(・・・どうして?・・・)

・ブルッフ:協奏曲第1番 ト短調

・ハチャトゥリアン:協奏曲

・リムスキー=コルサコフ:熊蜂の飛行
(効果的なハイフェッツの編曲が一般的。ちなみに原曲のオーケストラ・パートはもっと難しい。)

・サン=サーンス:ハバネラ
(最後のアレグロはもっと難しいと思うけど)

・サン=サーンス:協奏曲第3番
(非ヴァイオリニスティックの代表的存在だと思う。筆者としてはもう1レヴェル上にランクしたい。)

・サラサーテ:序奏とタランテラ
(スピッカート,リコシェ,付点のエチュードとしても使える)

・サラサーテ:サパテアード
・チャイコフスキー:ワルツ・スケルツォ
(どちらも結構難しいと思うけど)

・ヴィエニアフスキー:協奏曲第2番 ニ短調

・シマノフスキー:協奏曲第1,2番
(これは弾いたことがないのでわからない)

全般的に,レヴェル8と9の差が大きいように思われる。英検1級と2級の差のように。ただひょっとしたら準1級レヴェルの曲というのが,あまり無いのかもしれないが。


小学生が弾く曲(2)

2010-01-10 22:51:59 | 梅鶯林道

 前回の続きであるが,今度はもう1段階易しいレヴェルの紹介と考察である。(ザスマンズハウスのグレードをS,Mr. Jubin MatloubiehのものをJと呼ぶことにする。)「小学校中学年」に相当するだろうが(Sは4,Jは5と6),例によって結構難しい曲もあったりする。

 まずS。Suzukiの7巻と8巻レヴェルである。

 【無伴奏】は無い。

 【ヴァイオリンとピアノ】には以下の曲。()は筆者のコメント。

・ドビュッシー:亜麻色の髪の乙女
(小学生には合わないと思うけれど)

・ドヴォルジャーク:ソナチネ 作品100
(付点の良い練習になるだろうし,何よりもピアノと合わせられれば最高に楽しい)

・エルガー:愛のあいさつ
(版がたくさんあって,選ぶのが難しいかもしれないがニ長調のものが弾きやすいはずだ)

・フォーレ:夢のあとに

・ヘンデル:ソナタ集
(これは前記事で述べた三大教本に従った演奏順が良い。3,4番は易しいし1,6番は難しい。5番はヘンデルの自作ではないらしいこともあり,不要と思う。)

・クライスラー:ベートーヴェンの主題によるロンディーノ

・クライスラー:愛の悲しみ

・ラフマニノフ:ヴォカリーズ
(声楽の厚みはヴァイオリンでは表現しきれないので,ヴァイオリンで演奏すること自体に懐疑的)

・シューベルト:ソナチネ
(ピアノとのアンサンブルの入門にとても適した曲。ただし第2番は除く。)

・ヴィターリ:シャコンヌ
(前記事で述べた通り,シャルリエ編だとしたら難し過ぎる。しかし,このレヴェルということならば,原典版かダフィトDavid版のように思われる。)

以下の曲は寡聞にして筆者の知らない曲
・ザイツ:協奏曲 第3番 ト短調

 【ヴァイオリンと管弦楽

・バッハ:協奏曲第1番 イ短調
・バッハ:協奏曲第2番 ホ長調

・バッハ:協奏曲第3番 ニ短調(2台ヴァイオリンのための)

・アッコーライ:協奏曲第1番 イ短調

・ハイドン:協奏曲第2番 ト長調

 Jの【レヴェル5】。こちらはジャンル分けは無い。

・バッハ:協奏曲第1番 イ短調
・バッハ:協奏曲第2番 ホ長調

・バッハ:協奏曲第3番 ニ短調(2台ヴァイオリンのための)

・ベリオ:協奏曲第9番 イ短調
(重音がかなり難しいと思う。筆者ならもう1レヴェル上に入れる。)

・モ-ツァルト:アダ-ジォ ホ長調

・ヴィヴァルディ:「春」「夏」
(ヴァイオリン曲の筆頭にあがる有名曲なのに教材としてはあまり使われない稀有な例。だってピアノ伴奏ではつまらないもの。)

 続いてJの【レヴェル6】。

・ベートーヴェン:ロマンス ト長調

・ハイドン:協奏曲第1番 ハ長調

・カバレフスキー:協奏曲
(第3楽章はもう一つ上のレヴェルではないだろうか?)

・クライスラー:ヴィヴァルディの様式による協奏曲

・モーツァルト:協奏曲第3番 ニ長調

・モーツァルト:ロンド 変ロ長調
・モーツァルト:ロンド ハ長調
・モーツァルト:ロンド ト長調(ハフナー・セレナードより)

・チャイコフスキー:憂鬱な(メランコリックな)セレナード
(小学生には合わないと思うけど)

・ヴィヴァルディ:「秋」「冬」

・ヴィエニアフスキー:伝説曲

 明らかにレヴェル6は5より難しい。そのような見方からするとSのリストは少々大まかさが気になる。

 では次回は小学生より上(かもしれない)レヴェル,あるいはかなり進んだ小学生の水準を見てみたい。


小学生が弾く曲(1)

2010-01-06 22:43:14 | 梅鶯林道

 日本にはヴァイオリンの三大教本とでも呼ぶべきものがある。いわゆる,「鈴木」「篠崎」そして,もはや新しいとは思えない「新しいバイオリン教本」俗に言う「白い本」。

 それぞれに特徴があるが,かなりよくできているので,「鈴木」「篠崎」は,これを終えるまで不自由を感じないで済む。「白い本」も5巻までは同様であろう。

 問題は,この後だと思う。「鈴木」と「篠崎」が終了しても専門的な訓練にはかなり距離があるし,「白い本」は5巻と6巻の差が割とあるし,6巻の中でも難易度がかなり違う曲が混在している。ここで「小学生が弾く曲」を悩む人達が出てくるのは必至。

 これで悩むのは恐らく万国共通だろう。アメリカではグレード(難易度)を公開している人達がいる。これがかなりヒントになると思う。
 Graded Repertoire(演奏曲目グレード)という項目で検索すると,二つのグレード・リストが挙がってきた。一つはザスマンズハウスの「ヴァイオリン・マスタークラス」,もう一つはMr. Jubin Matloubieh(何と読むのだろうか?)作成のもの。便宜上,前者をS,後者をJと呼ぶことにする。

 Sは10,Jは13のグレードに分けてある。これで便利なのはアメリカでもSuzukiがポピュラーで,Sにおいてはグレード表に載っていることだ。そこから考えると,小学生のレヴェルはSでは3~5,Jでは3~8がほぼ当てはまりそうだ。

 では,一番関心の集まりそうな「小学校高学年」相当のレヴェル(Sは5,Jは7と8)には,どんな曲が挙げられているか見てみよう。

 まずS。「教則本と練習曲」「無伴奏」「ヴァイオリンとピアノ」「ヴァイオリンと管弦楽」の4ジャンルに分けられ,Suzukiは「教則本」に入れられている。9巻と10巻,モーツァルトの協奏曲の巻である。

 「無伴奏」は無い。

 「ヴァイオリンとピアノ」には以下の曲。()は筆者の感想。

・バッハ:ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ全6曲(BWV1014-1019)

・バルトーク:ルーマニア民族舞曲
(セーケイ編のものと思われるが,ちょっと難しいのでは?)

・ダンクラ:6つのエア・バリエ
(6曲同じレヴェルというのは,いささか乱暴なような・・・)

・クライスラー:シチリアーノとリゴードン

・モーツァルト:ソナタ集
(これも全て同じレヴェル?)

・プロコフィエフ:5つのメロディー

・サン=サーンス:ソナタ第1番
(これは面白くない曲,と仲間うちでは定評がある)

・サラサーテ:序奏とタランテラ
(スピッカートやリコシェができないと話にならないけど)

・タルティーニ:悪魔のトリル

チャイコフスキー:3つの小品「瞑想曲」「スケルツォ」「メロディ」

・チャイコフスキー:憂鬱な(メランコリックな)セレナード
(小学生には合わないと思うけど)

・ヴィエニアフスキー:伝説曲

以下の曲は寡聞にして筆者の知らない曲
・リース:常動曲
・リーディング:協奏曲ホ短調

 「ヴァイオリンと管弦楽」

・ベリオ:協奏曲第9番 イ短調

・ベリオ:バレエの情景

・ハイドン:協奏曲 ハ長調

・カバレフスキー:協奏曲

・モーツァルト:協奏曲第2番 ニ長調

 一方,Jのレヴェル7。こちらはジャンル分けは無い。

・ベ-ト-ヴェン:ロマンス ヘ長調

・ブロッホ:バール・シェム
(日本の小学生にユダヤの粘り気を要求するのは少々無理がある)

・モーツァルト:協奏曲第1番 変ロ長調
・モーツァルト:協奏曲第2番 ニ長調

・ヴィターリ:シャコンヌ
(シャルリエ編曲のものを,日本でも昔から小学生に弾かせるけど,一般的にはもっと後の時期が良いと筆者は考える)

 続いてJのレヴェル8

モーツァルト:協奏曲第4番 ニ長調
モーツァルト:協奏曲第5番 イ長調

・ノヴァチェック:常動曲

・パガニーニ:常動曲

チャイコフスキー:3つの小品「瞑想曲」「スケルツォ」「メロディ」

・ヴィオッティ:協奏曲第22番 イ短調
・ヴィオッティ:協奏曲第23番 ト長調

・ヴォーン=ウィリアムス:揚げひばり
(あの「田舎っぽさ」は,大人がやるものではないだろうか?)

またもや筆者の知らない曲
・スヴェンセン:ロマンス ト長調

 結構な量になったが 以上である。両者にモーツァルトの協奏曲が含まれているので,ここを同じレヴェルと見なしたのだが,重なっていたのは数曲しかない。そのくらい見解が分かれるということである。
 他のレヴェルは,また次回。