井財野は今

昔、ベルギーにウジェーヌ・イザイというヴァイオリニスト作曲家がいました。(英語読みでユージン・イザイ)それが語源です。

ビブラートと弦素材

2011-02-12 12:26:11 | ヴァイオリン

「ノンビブラートという言葉にはアレルギーがありまして…」

最近、指揮者として接することの多い鈴木優人さんの言葉である。さらに続いた言葉は、

「ビブラートは(裸)ガット弦の代替技術だと思うのですよ。ガット弦をブーンとそのまま鳴らしていれば良い音だったのが、金属巻きの弦になってそれがつまらない音になってしまった。それでずっとビブラートをかけなければならなくなったのではないかと。」

何の裏付けもないけど、と彼は断って話したのだが、これは工学的に立派に説明できる。

ガットは均質ではないので、様々な倍音も常に出たり引っ込んだりしている。単純に弾くだけで音色の変化があった訳だ。

一方、金属巻き弦になると、弦の太さがかなり一定になる。高次倍音も一定の割合で出続ける。人はこれを「金属的な音」という。金属を叩くと高次倍音が多く発生する。それに似ているという訳だ。

この高次倍音はビブラートで引っ込めることができる。指の脂肪が高次倍音を吸収してしまうからだ。

なるほどねぇ。

バロックだからノンビブラート、ではなく、ガット弦だからノンビブラート、と考えた方が良さそうだ。

新しい指標ができた面持ちで嬉しくなってしまった。

このように、鈴木優人さんとの会話は、常になかなか愉快である。


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2 コメント

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はじめまして。ちょうと私にとってタイムリーな話... (コレリ)
2011-03-25 01:36:41
はじめまして。ちょうと私にとってタイムリーな話題だったので、コメントさせて頂きます。フランスで子供がヴァイオリンを習っています。先週ラフォリアをレッスン弾いたところ、とてもきれいだけどバロックの音がしない、ロマンチックな音がすると言われました。その後Youtubeで古楽器アンサンブルの演奏を聴いたりして、子供なりに考えて今週弾いたことろ、「バロック音楽らしくなったね、ビブラートをうんと少なくしてみたんだね。でも・・」と褒めてくれた後、古楽器とモダン楽器の違いの説明をしてくれました。ガット弦であることや弓の張り方から、古楽器では弓を早くたくさん使い、自然な響きがある。でも現代の楽器は、金属の弦で固く張ってあるから、同じ弾き方だと響かない。だから、歌うためのビブラートはなくていいけど、響きのためのビブラートは必要なんだ、ということでした。レッスンではその練習をして、とても素敵なラフォリアになったように思いました。こちらのブログで同じようなお話が出ていたので、嬉しく思いコメントさせて頂きました。世界のあちらこちらで、こうしてバロック時代に思いをはせたりしながら、音楽を探求している人達がいるんだな、と音楽家でない私はとても感心致しました!
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フランスからのコメントをありがとうございました。 (井財野)
2011-03-25 17:26:28
フランスからのコメントをありがとうございました。
良い先生についてらっしゃるようですね。文章の中になかなか重要な点が含まれていると思います。
少し気になるのは、ラ・フォリアの版(エディション)の問題です。
これに関しては、いつか本編で考えたいと思います。
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