Aさんという指揮者がいらして、よくわかる指揮で何の問題もなくリハーサルが進み、本番も無事故で終了する。オーケストラもストレスをほとんど感じないで帰途につく。
Bさんという指揮者がいらして、よくわからない指揮で多々の問題を起こし、リハーサル時間は不足、本番ではヒヤリ・ハットの連続で終了する。オーケストラは飲まずには帰れない。
当然のように、オーケストラ側からの評価はAさんが高く、Bさんが低い。それで事務局に、Aさんの出番を増やしてもらえないか、と尋ねてみる。
「それがー、Aさんは、お客さんからの印象が薄いんですよ。」
「……」
「Bさんの方が断然お客さんからの印象が良いので…」
そういえば、Bさんは国際コンクールで「聴衆賞」をもらっていたなぁ。
それを仲間に話してみる。
「確かに、事故がおこりそう、という意味でBさんの時の演奏は良く覚えているけど…」
一般的に、大事故の陰には「ヒヤリ・ハット」の件数が数百件あると言われている。しかし音楽の場合は「必要悪」なのだろうか?
結論は「Aさんにキンキラの服を着せて、カツラでもかぶってもらおう」となった。