【資料メモ3】 ISD条項草案:パブリックシティズンの分析の北沢洋子さんの抄訳 2015年4月12日 (日)
http://moriyama-law.cocolog-nifty.com/machiben/2015/04/post-b202.html#_ga=1.190817391.592299521.1417100166
ISDに関する2015年1月20日版草案テキストに関するパブリックシティズンの分析について、北沢洋子氏の抄訳が出ていることを今、知りました。
文章化した翻訳になっていますので、これも資料としてメモします。
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リークされたTPP投資のテキストの分析(Public Citizen)2015年4月10日 北沢洋子抄訳
3月25日、Wikileaks が53ページに及ぶTPPの投資のテキストの全文を暴露した。これを、ワシントン在住のアドボカシィNGO「パブリック・シティズン(PC)」のLori Walach とBen Beachyが分析した。
すでに5年間、秘密裏に議論されてきたTPPの投資のテキストの全文がインターネット上に掲載された。PCはこれを精査した結果、本物であるという結論に達した。TPPは、米国と、太平洋弧の国々、すなわちオーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナムの12カ国の通商代表が、秘密裏に、集中的に、交渉を続けてきた。
暴露された文書は、マスコミや市民、さらに議員にさえ知らせずに続けられた“貿易”交渉が、いかに危険なものであるかと言うことを物語っている。TPP交渉は、すでに合意した箇所が多い。そこでは、外国資本(投資家)に新しい権利と特権を与えている。それは、国内法では国内資本に禁止している特権を外国資本に与えているのだ。
外国資本が、TPPによって認められた新しい特権が侵害されたと判断した場合、「投資家対政府間紛争処理(ISDS)」法廷に当該政府を告訴することが出来る。そこでは、外国資本が、投資先の金融、環境、医療、土地利用などの国内法によって、特権を侵害されたとして、現地政府に賠償を請求することが出来る。この場合、現在の侵害だけでなく、未来に得られるべき“権利”(利益)も含まれる。
TPPでは、ISDSの法制度を拡大することによって、何万もの外国資本が現地政府と同等のステータスを持つことになる。TPPは、外国資本に、国内法を無視して、外国の(ISDS)法廷に直接訴えることが出来るという権限を与えている。
米国やその他の先進国が締結している現在のISDS協定は、ほとんど途上国にしか当てはまらない。その逆、すなわち、途上国から先進国への投資が少ないからである。そしてTPPは、ISDSに、より多くの権限を与えている。TPPが成立すれば、米国内に投資した約9,000の外国資本が、米国政府に対して、ISDSがらみの告訴を始めることが出来る。一方、18,000の米国資本が、TPP加盟国政府に対して、ISDS法廷に訴訟を起こすことが出来る。
現在のところ、オーストラリアを除いて、全TPP交渉参加国は、外国資本がISDS法廷に提訴する権限を認めることに合意している。オーストラリアは、「ある一定の条件で、容認する」と言っている。そして、“法廷”は外国資本に無制限の賠償金を当該政府に支払わせる権限を持つ。この無制限の賠償金とは、“将来予想される利潤”も計算している。
TPPの投資のB項では、ISDS法廷は、TPP加盟国が共通して持っている法廷の透明性、先例性、尊法性のルールを持っていない。そればかりか、所在地も、公正で、独立した、バランスとれたところではない。法廷のスタッフも民間企業の企業弁護士で、何らアカウンタビリティはない。また“裁判官”と弁護士は、提訴する企業によって、相互に交代する。このような二重の役割は、現行法制度の中では、倫理に反する行為と見なされる。一方、暴露されたテキストには、ISDSに関して、前から関心が集まっている「利益の相反」についての項目がない。
オバマ政権が、繰り返し、TPPの投資の章は、ISDSの濫用を制限すべきだと言っているにもかかわらず、TPPのテキストでは、米国のISDS協定が、あるところでは、一言一句たがわず、コピイされている。しかし、ある文言では、国内政策と政府の行動の枠組みを広げることが出来る。たとえば、TPPは、製薬会社が、知的所有権の設定、限定、更新などに関してWTOの規定に違反しているとして、賠償を要求するのに、TPPのISDS法廷を使うことが可能になっている。現在、WTOのルールでは、投資家は個別に流用できない。
ほとんどのTPP加盟国政府は、外国資本がTPPのISDS法廷に提訴する権限を拡大することに反対している。これは、米国の通表代表が、最も圧力をかけている部分である。 その内容は、国有地の天然資源の開発権、政府のインフラ・プロジェクト及びそのメンテナンスの調達などである。
テキストでは、外国資本の開発権と賠償に関する項目が、果てしなく拡大解釈される一方で、現地政府のセイフガードに関しては、2005年の中米自由貿易協定(CAFTA)で米国が結んだ、セイフガード項目と全く同じである。CAFTA法廷では、セイフガードの項目が抜けている。
TPPのISDS制度の拡大は、現地政府の公共利益擁護政策に対して、ISDSへの提訴が急増していることと関連がある。実は、ISDS協定は、1960年代から存在している。しかし、最初の30年間、ISDSがらみの提訴は、総合して50件に過ぎなかった。しかし、2011~2013年には毎年50件、2014年には42件に増えた。そもそもISDSの目的は、政府が外国資本の工場や土地を国有化する際、賠償を払うための協定であった。しかし、年がたつにつれ、ルールや解釈が劇的に拡大した。従来、最後の手段であるべきものだったのが、やがて外国資本の現地政府に対する優位性にとって代わった。
外国資本が、ISDSがらみで攻撃している部門は、煙草、気候、金融、鉱山、製薬、エネルギー、汚染、水、労働、有害物、開発、その他非貿易部門の国内政策などに亘っている。米国の“自由貿易”協定(FTA)だけを取って見ても、外国資本は、「投資家対政府」法でもって、すでに4億4,000万ドルを現地政府からむしり取った。これには、天然資源、環境保護、保健、安全などについての政府の政策に対する外国資本のクレームであった。米国のFTAと二国間貿易協定について、ISDS法廷は、36億ドルの賠償金の判決を出した。現在進行中のISDS法廷では、総額38億ドルにのぼる賠償金の請求が、現地政府の環境、エネルギー、金融規制、公共保健、土地利用、運輸部門などについての政策をめぐって争われている。
たとえ政府が裁判で勝ったとしても、現地政府は裁判費用の一部を支払わせられる。一裁判で平均800万ドルとして、裁判に勝つという見通しがあっても、莫大な出費となる。
付記
WikileaksがリークしたTPPの投資のテキスト(英文)を必要な方は<
kitazawa@jca.apc.org>まで申し付けください。Wordのテキストを添付でお送りします。
環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に関する本当の神話 Dr. Dean Baker 2015年4月4日 Center for Economic and Policy Research
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2015/04/tpp-4759.html 2015年4月17日 (金)
環太平洋戦略的連携協定(TPP)擁護者連中は、今月、議会でのファスト・トラック投票を準備しながら、連中の主張を押しつけようとして、ありとあらゆるできる限りのことをやっている。今日、ウオール街の投資銀行家で、元クリントン政権の財務副長官ロジャー・アルトマンが、外交問題評議会会長のリチャード・ハースと共著で、NYTコラムで考察している。
二人は、3つの神話を挙げることから始めているが、そのいずれも、たまたま現実の正確な描写だ。
最初の“神話”は、貿易協定がアメリカ製造業労働者を傷つけ、そこで労働市場全般も傷つけたというものだ。アルトマンとハースは、中国との貿易で製造業雇用が、21パーセント低下したというMITの経済学者デービッド・オーターの研究を引用しているが、そこで、問題は貿易であり、貿易協定ではないと主張する。連中はこうのたまう。
“アメリカ合州国には、中国との二国間貿易協定はない。”
もちろん、もし中国がTPPに加盟しても、アメリカ合州国には依然、中国との二国間貿易協定はないだろう。(その通りで、TPPは多国間貿易協定で、二国間貿易協定ではない。) これは、自分の主張を押しつける為、こういうことを言わざるをえない、TPP擁護者連中の愚かさの水準を示している。実際問題、貿易協定、WTOは、中国の対アメリカ合州国輸出増大の上で極めて重要だ。中国は、2001年末にWTOに参加し、三年後、アメリカの中国との貿易赤字は、830億ドルから、1620億ドルへと、ほぼ倍増したのだ。
二つ目の“神話”は
“TPPは労働や環境基準を引き下げ、医薬品を引き上げるだろう…。環境についていえば、TPPには既存の紛争解決の仕組みに影響するようなものは皆無だ。最後に、医薬品会社に対する新たな保護が、より高い医薬品価格をもたらすというのは確実と言うには程遠い。”
“TPPには、既存の紛争解決の仕組みに影響するようなものは皆無だ”というのは断じて真実ではない。もちろん我々は最終文書を持ってはいないが、NAFTAの様な過去の協定に基づけば、外国投資家は、様々な労働や環境問題で、TPPによって設定された投資家-国家紛争調停裁決機関で異議を唱えることが可能になる。例えば、もしニューヨーク州が、水圧破砕を規制したいと思った場合、外国のガスや石油会社は、投資家-国家裁決機関で、禁止に異議を唱えることが可能になる。もしアルトマンとハースが、これが本当ではないという情報を持っているのであれば、彼等はコラムで、それを明かしていない。
医薬品価格に対するTPPの影響については、漏洩した知的財産権の章には、価格を上昇させると思われる、いくつかの特許や、関連する独占保護の延長が書いてある。もちろん、誰かを至近距離で撃った場合、相手が死ぬかどうかと同様、確実ではないように、その効果で、医薬品価格が上がるのが“確実”というわけではない。
そこで、三つ目の神話になる。
“三つ目の神話は、輸出を刺激する為、通貨価値を引き下げて、不当に競争する国々を防ぐことができないので、TPPには欠陥があるというものだ。”
アルトマンとハースは、実際これが真実であることについて異議を唱えてはおらず、彼等は、この批判は近視眼的だというのだ。彼らの主張は、我々は余りに愚かで、拡張的通貨政策(典型的には通貨価値の低下をもたらす)と、国際通貨市場で通貨を大量売りし、外国通貨を購入することで通貨価値を引き下げる意図的取り組みの違いが理解できないというのだ。これは私にも、他の経済学者(例えば、ピーターソン国際経済研究所元所長フレッド・バーグステン)にとっても区別が難しいとは思えない。アルトマンとハースが、これが余りに複雑だと考えているのは残念だ。多分二人は他の職業に転職すべきだろう。
これはIMFで取り上げられるべきだという二人の対応は、一般大衆に対する連中の軽蔑のもう一つの現れだ。アメリカ合州国が、ほぼ70年間というIMF存在期間中、通貨問題を提起したことは皆無だ。
そして、協定に対する、二人の称賛にでくわす。
“アメリカの知的財産権をしっかり保護すれば、ハイテク製造業から、アジアで海賊版がはびこっているハリウッドに到るまでの、産業にとって助けになるだろう。”
“自由貿易は、より大きな全体的な繁栄をもたらす。”
ファイザーや、ディズニーや、マイクロソフトが、連中の特許や著作権に対し、アジアや中南米諸国から、もっと金を稼ぐことで、我々の大半が一体どうやって恩恵を受けられようか? こうした企業の株を多数保有している連中なら明らかに恩恵は得られるが、そうでない我々に、明白な実例など皆無だ。ディズニーやマイクロソフトに対して、より多く支払うことで、他のアメリカ輸出を締め出すことになろう。NYTは、アルトマンとハースに、連中の主張を説明させる為に、別コラムを書かせるべきなのかも知れない。
最後に、“自由貿易は、より大きな全体的な繁栄をもたらす”という決まり文句は、何の関係も無い。TPPは、特許と著作権保護を、より強固に、より長期間、強化するものだ。もしも、医者や他の高給専門職サービスの貿易障壁を引き下げることや、特許や著作権保護を引き下げることについて語れるのであれば、我々も、TPPによる自由貿易の利点を歌っていられたろう。だが、TPPの本質は大企業の利益であって、自由貿易ではない。
記事原文
The True Myths on the Trans-Pacific Partnershi Saturday, 04 April 2015 14:03
http://www.cepr.net/index.php/blogs/beat-the-press/the-true-myths-on-the-trans-pacific-partnership
-----------
セマウル号事件一周年。
とんでもない船員連中、そして、とんでもない会社と思う。
残念ながら、事件の構図、放射能汚染不沈空母国に丸ごとあてはまるだろう。
とんでもなく危険な水域に集団自衛権で入り込み、船底にTPPという巨大穴をうがつ。全員丸ごと沈没。もちろん、船員というか、支配者全員、われ先に脱出する。
とんでもない支配層、とんでもない国。
そういうとんでも連中に、粛々と投票する洗脳されたB層の皆様。
ひたすら拝めば、必ず地獄に行ける。
国際平和共同対処事態なるトンデモ。ジョージ・オーウェルもおどろく現実。
霞が関文学表現、大本営広報部表現によれば、こうだ。
国際社会が国連憲章の目的に従い脅威を除去する共同活動に、日本が積極的、主体的に寄与する必要がある事態を「国際平和共同対処事態」と規定。
庶民の日本語に翻訳すれば、こうだ。
宗主国が支配層の目的に従い、邪魔者を除去する共同活動に、日本が受動的、従属的に寄与させられる事態を「宗主国侵略パシリ対処事態」と規定。
今回記事では、TPPの恐ろしさ、まだ良くおわかり頂けないかも知れない。是非、下記の記事をお読み願いたい。
通貨操作と証明についての、篠原孝衆議院議員による記事
TPP交渉の行方シリーズ23 アメリカの尊大な要求 -通貨操作と証明(サーティフィケーション)- 14.11.06
TPP交渉日程の話しか報じない大本営広報部と違って、TPPそのもののとんでもない実態がしっかり分析されている。
米国「パブリック・シチズン」がTPP投資関連リーク文書を分析─ISDSで増加する米国の負担
そして、訴訟にご参加を。
TPP交渉差止・違憲訴訟の会
ご参考として、例えば
TPP関連主要記事リスト
http://moriyama-law.cocolog-nifty.com/machiben/2015/04/post-b202.html#_ga=1.190817391.592299521.1417100166
ISDに関する2015年1月20日版草案テキストに関するパブリックシティズンの分析について、北沢洋子氏の抄訳が出ていることを今、知りました。
文章化した翻訳になっていますので、これも資料としてメモします。
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リークされたTPP投資のテキストの分析(Public Citizen)2015年4月10日 北沢洋子抄訳
3月25日、Wikileaks が53ページに及ぶTPPの投資のテキストの全文を暴露した。これを、ワシントン在住のアドボカシィNGO「パブリック・シティズン(PC)」のLori Walach とBen Beachyが分析した。
すでに5年間、秘密裏に議論されてきたTPPの投資のテキストの全文がインターネット上に掲載された。PCはこれを精査した結果、本物であるという結論に達した。TPPは、米国と、太平洋弧の国々、すなわちオーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナムの12カ国の通商代表が、秘密裏に、集中的に、交渉を続けてきた。
暴露された文書は、マスコミや市民、さらに議員にさえ知らせずに続けられた“貿易”交渉が、いかに危険なものであるかと言うことを物語っている。TPP交渉は、すでに合意した箇所が多い。そこでは、外国資本(投資家)に新しい権利と特権を与えている。それは、国内法では国内資本に禁止している特権を外国資本に与えているのだ。
外国資本が、TPPによって認められた新しい特権が侵害されたと判断した場合、「投資家対政府間紛争処理(ISDS)」法廷に当該政府を告訴することが出来る。そこでは、外国資本が、投資先の金融、環境、医療、土地利用などの国内法によって、特権を侵害されたとして、現地政府に賠償を請求することが出来る。この場合、現在の侵害だけでなく、未来に得られるべき“権利”(利益)も含まれる。
TPPでは、ISDSの法制度を拡大することによって、何万もの外国資本が現地政府と同等のステータスを持つことになる。TPPは、外国資本に、国内法を無視して、外国の(ISDS)法廷に直接訴えることが出来るという権限を与えている。
米国やその他の先進国が締結している現在のISDS協定は、ほとんど途上国にしか当てはまらない。その逆、すなわち、途上国から先進国への投資が少ないからである。そしてTPPは、ISDSに、より多くの権限を与えている。TPPが成立すれば、米国内に投資した約9,000の外国資本が、米国政府に対して、ISDSがらみの告訴を始めることが出来る。一方、18,000の米国資本が、TPP加盟国政府に対して、ISDS法廷に訴訟を起こすことが出来る。
現在のところ、オーストラリアを除いて、全TPP交渉参加国は、外国資本がISDS法廷に提訴する権限を認めることに合意している。オーストラリアは、「ある一定の条件で、容認する」と言っている。そして、“法廷”は外国資本に無制限の賠償金を当該政府に支払わせる権限を持つ。この無制限の賠償金とは、“将来予想される利潤”も計算している。
TPPの投資のB項では、ISDS法廷は、TPP加盟国が共通して持っている法廷の透明性、先例性、尊法性のルールを持っていない。そればかりか、所在地も、公正で、独立した、バランスとれたところではない。法廷のスタッフも民間企業の企業弁護士で、何らアカウンタビリティはない。また“裁判官”と弁護士は、提訴する企業によって、相互に交代する。このような二重の役割は、現行法制度の中では、倫理に反する行為と見なされる。一方、暴露されたテキストには、ISDSに関して、前から関心が集まっている「利益の相反」についての項目がない。
オバマ政権が、繰り返し、TPPの投資の章は、ISDSの濫用を制限すべきだと言っているにもかかわらず、TPPのテキストでは、米国のISDS協定が、あるところでは、一言一句たがわず、コピイされている。しかし、ある文言では、国内政策と政府の行動の枠組みを広げることが出来る。たとえば、TPPは、製薬会社が、知的所有権の設定、限定、更新などに関してWTOの規定に違反しているとして、賠償を要求するのに、TPPのISDS法廷を使うことが可能になっている。現在、WTOのルールでは、投資家は個別に流用できない。
ほとんどのTPP加盟国政府は、外国資本がTPPのISDS法廷に提訴する権限を拡大することに反対している。これは、米国の通表代表が、最も圧力をかけている部分である。 その内容は、国有地の天然資源の開発権、政府のインフラ・プロジェクト及びそのメンテナンスの調達などである。
テキストでは、外国資本の開発権と賠償に関する項目が、果てしなく拡大解釈される一方で、現地政府のセイフガードに関しては、2005年の中米自由貿易協定(CAFTA)で米国が結んだ、セイフガード項目と全く同じである。CAFTA法廷では、セイフガードの項目が抜けている。
TPPのISDS制度の拡大は、現地政府の公共利益擁護政策に対して、ISDSへの提訴が急増していることと関連がある。実は、ISDS協定は、1960年代から存在している。しかし、最初の30年間、ISDSがらみの提訴は、総合して50件に過ぎなかった。しかし、2011~2013年には毎年50件、2014年には42件に増えた。そもそもISDSの目的は、政府が外国資本の工場や土地を国有化する際、賠償を払うための協定であった。しかし、年がたつにつれ、ルールや解釈が劇的に拡大した。従来、最後の手段であるべきものだったのが、やがて外国資本の現地政府に対する優位性にとって代わった。
外国資本が、ISDSがらみで攻撃している部門は、煙草、気候、金融、鉱山、製薬、エネルギー、汚染、水、労働、有害物、開発、その他非貿易部門の国内政策などに亘っている。米国の“自由貿易”協定(FTA)だけを取って見ても、外国資本は、「投資家対政府」法でもって、すでに4億4,000万ドルを現地政府からむしり取った。これには、天然資源、環境保護、保健、安全などについての政府の政策に対する外国資本のクレームであった。米国のFTAと二国間貿易協定について、ISDS法廷は、36億ドルの賠償金の判決を出した。現在進行中のISDS法廷では、総額38億ドルにのぼる賠償金の請求が、現地政府の環境、エネルギー、金融規制、公共保健、土地利用、運輸部門などについての政策をめぐって争われている。
たとえ政府が裁判で勝ったとしても、現地政府は裁判費用の一部を支払わせられる。一裁判で平均800万ドルとして、裁判に勝つという見通しがあっても、莫大な出費となる。
付記
WikileaksがリークしたTPPの投資のテキスト(英文)を必要な方は<
kitazawa@jca.apc.org>まで申し付けください。Wordのテキストを添付でお送りします。
環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に関する本当の神話 Dr. Dean Baker 2015年4月4日 Center for Economic and Policy Research
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2015/04/tpp-4759.html 2015年4月17日 (金)
環太平洋戦略的連携協定(TPP)擁護者連中は、今月、議会でのファスト・トラック投票を準備しながら、連中の主張を押しつけようとして、ありとあらゆるできる限りのことをやっている。今日、ウオール街の投資銀行家で、元クリントン政権の財務副長官ロジャー・アルトマンが、外交問題評議会会長のリチャード・ハースと共著で、NYTコラムで考察している。
二人は、3つの神話を挙げることから始めているが、そのいずれも、たまたま現実の正確な描写だ。
最初の“神話”は、貿易協定がアメリカ製造業労働者を傷つけ、そこで労働市場全般も傷つけたというものだ。アルトマンとハースは、中国との貿易で製造業雇用が、21パーセント低下したというMITの経済学者デービッド・オーターの研究を引用しているが、そこで、問題は貿易であり、貿易協定ではないと主張する。連中はこうのたまう。
“アメリカ合州国には、中国との二国間貿易協定はない。”
もちろん、もし中国がTPPに加盟しても、アメリカ合州国には依然、中国との二国間貿易協定はないだろう。(その通りで、TPPは多国間貿易協定で、二国間貿易協定ではない。) これは、自分の主張を押しつける為、こういうことを言わざるをえない、TPP擁護者連中の愚かさの水準を示している。実際問題、貿易協定、WTOは、中国の対アメリカ合州国輸出増大の上で極めて重要だ。中国は、2001年末にWTOに参加し、三年後、アメリカの中国との貿易赤字は、830億ドルから、1620億ドルへと、ほぼ倍増したのだ。
二つ目の“神話”は
“TPPは労働や環境基準を引き下げ、医薬品を引き上げるだろう…。環境についていえば、TPPには既存の紛争解決の仕組みに影響するようなものは皆無だ。最後に、医薬品会社に対する新たな保護が、より高い医薬品価格をもたらすというのは確実と言うには程遠い。”
“TPPには、既存の紛争解決の仕組みに影響するようなものは皆無だ”というのは断じて真実ではない。もちろん我々は最終文書を持ってはいないが、NAFTAの様な過去の協定に基づけば、外国投資家は、様々な労働や環境問題で、TPPによって設定された投資家-国家紛争調停裁決機関で異議を唱えることが可能になる。例えば、もしニューヨーク州が、水圧破砕を規制したいと思った場合、外国のガスや石油会社は、投資家-国家裁決機関で、禁止に異議を唱えることが可能になる。もしアルトマンとハースが、これが本当ではないという情報を持っているのであれば、彼等はコラムで、それを明かしていない。
医薬品価格に対するTPPの影響については、漏洩した知的財産権の章には、価格を上昇させると思われる、いくつかの特許や、関連する独占保護の延長が書いてある。もちろん、誰かを至近距離で撃った場合、相手が死ぬかどうかと同様、確実ではないように、その効果で、医薬品価格が上がるのが“確実”というわけではない。
そこで、三つ目の神話になる。
“三つ目の神話は、輸出を刺激する為、通貨価値を引き下げて、不当に競争する国々を防ぐことができないので、TPPには欠陥があるというものだ。”
アルトマンとハースは、実際これが真実であることについて異議を唱えてはおらず、彼等は、この批判は近視眼的だというのだ。彼らの主張は、我々は余りに愚かで、拡張的通貨政策(典型的には通貨価値の低下をもたらす)と、国際通貨市場で通貨を大量売りし、外国通貨を購入することで通貨価値を引き下げる意図的取り組みの違いが理解できないというのだ。これは私にも、他の経済学者(例えば、ピーターソン国際経済研究所元所長フレッド・バーグステン)にとっても区別が難しいとは思えない。アルトマンとハースが、これが余りに複雑だと考えているのは残念だ。多分二人は他の職業に転職すべきだろう。
これはIMFで取り上げられるべきだという二人の対応は、一般大衆に対する連中の軽蔑のもう一つの現れだ。アメリカ合州国が、ほぼ70年間というIMF存在期間中、通貨問題を提起したことは皆無だ。
そして、協定に対する、二人の称賛にでくわす。
“アメリカの知的財産権をしっかり保護すれば、ハイテク製造業から、アジアで海賊版がはびこっているハリウッドに到るまでの、産業にとって助けになるだろう。”
“自由貿易は、より大きな全体的な繁栄をもたらす。”
ファイザーや、ディズニーや、マイクロソフトが、連中の特許や著作権に対し、アジアや中南米諸国から、もっと金を稼ぐことで、我々の大半が一体どうやって恩恵を受けられようか? こうした企業の株を多数保有している連中なら明らかに恩恵は得られるが、そうでない我々に、明白な実例など皆無だ。ディズニーやマイクロソフトに対して、より多く支払うことで、他のアメリカ輸出を締め出すことになろう。NYTは、アルトマンとハースに、連中の主張を説明させる為に、別コラムを書かせるべきなのかも知れない。
最後に、“自由貿易は、より大きな全体的な繁栄をもたらす”という決まり文句は、何の関係も無い。TPPは、特許と著作権保護を、より強固に、より長期間、強化するものだ。もしも、医者や他の高給専門職サービスの貿易障壁を引き下げることや、特許や著作権保護を引き下げることについて語れるのであれば、我々も、TPPによる自由貿易の利点を歌っていられたろう。だが、TPPの本質は大企業の利益であって、自由貿易ではない。
記事原文
The True Myths on the Trans-Pacific Partnershi Saturday, 04 April 2015 14:03
http://www.cepr.net/index.php/blogs/beat-the-press/the-true-myths-on-the-trans-pacific-partnership
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セマウル号事件一周年。
とんでもない船員連中、そして、とんでもない会社と思う。
残念ながら、事件の構図、放射能汚染不沈空母国に丸ごとあてはまるだろう。
とんでもなく危険な水域に集団自衛権で入り込み、船底にTPPという巨大穴をうがつ。全員丸ごと沈没。もちろん、船員というか、支配者全員、われ先に脱出する。
とんでもない支配層、とんでもない国。
そういうとんでも連中に、粛々と投票する洗脳されたB層の皆様。
ひたすら拝めば、必ず地獄に行ける。
国際平和共同対処事態なるトンデモ。ジョージ・オーウェルもおどろく現実。
霞が関文学表現、大本営広報部表現によれば、こうだ。
国際社会が国連憲章の目的に従い脅威を除去する共同活動に、日本が積極的、主体的に寄与する必要がある事態を「国際平和共同対処事態」と規定。
庶民の日本語に翻訳すれば、こうだ。
宗主国が支配層の目的に従い、邪魔者を除去する共同活動に、日本が受動的、従属的に寄与させられる事態を「宗主国侵略パシリ対処事態」と規定。
今回記事では、TPPの恐ろしさ、まだ良くおわかり頂けないかも知れない。是非、下記の記事をお読み願いたい。
通貨操作と証明についての、篠原孝衆議院議員による記事
TPP交渉の行方シリーズ23 アメリカの尊大な要求 -通貨操作と証明(サーティフィケーション)- 14.11.06
TPP交渉日程の話しか報じない大本営広報部と違って、TPPそのもののとんでもない実態がしっかり分析されている。
米国「パブリック・シチズン」がTPP投資関連リーク文書を分析─ISDSで増加する米国の負担
そして、訴訟にご参加を。
TPP交渉差止・違憲訴訟の会
ご参考として、例えば
TPP関連主要記事リスト