華氏451度

我々は自らの感性と思想の砦である言葉を権力に奪われ続けている。言葉を奪い返そう!! コメント・TB大歓迎。

小泉首相、8月15日に靖国神社に参拝

2006-08-15 21:23:27 | 非国民宣言(反愛国心・反靖国など)
 ここ2週間ばかり死にそうに忙しかった代わり……というのも変だが、今週はおそろしく(?)暇である。本当はいろいろやるべき雑用があるような気がするのだが、疲れ果てて一昨日からぼーっとしてしまい、「朝寝して、夜早く寝て、昼寝して」「起きてる時はゴロゴロ寝転んで本を読む」という状態。まあ、たまにはいいか……。

 ついさっき読み終えたのは、加賀乙彦の『悪魔のささやき』(集英社新書)。比較的軽く読めておもしろいので、書店に立ち寄られたらパラパラとめくってみられることをお勧めする。

 実はこの本のことを書こうと思っていたのだが、急遽、別の話を――

 小泉首相が今日、靖国神社に参拝した(既に皆さん、御存知のはず)。報道によると、首相は「8月15日を避けても、反発、批判は避けられない。いつ行っても同じ。ならば今日は参拝に適切な日」と述べたという。さらに「戦没者全体に哀悼の意を表すために参拝している。(憲法との関連については)思想信条であり、心の問題」とも繰り返したそうである。

 真っ先に頭をよぎったのは、やはり行ったか……という感想だった。政治家の中にはある意味で利巧というか、巧妙に立ち回るタイプの人物も多い。彼らは時計の針を逆戻りさせようとするにあたって、表立たない所、反対の声が少なそうなところからじわじわと包囲していく。その点、小泉純一郎というのは実にストレートな人物だ(別に、褒めているわけではない。念のため)。多分、小泉を歓迎した人達は、彼のいかにも「裏表のない感じ」に惹かれたのではないか。何しろ今までの自民党の政治家は、「いかにも裏表のありそうな人物」揃いだったのだから。(裏表がないというのは、それ自体はまあ結構なことではある。しかし裏表さえなければ、何でもいいというわけではない。裏も表も危険、ということも多いのだ。ただし表は綺麗で裏は危険というものより、両方危険なものの方がわかりやすくていいかも知れない)

 しかも小泉純一郎という人は、困ったことに自信過剰で他者を見下しがちで、しかも「千万人といえども吾ゆかん」の人物でもある(孟子が泣くゾ……)。こういうタイプの人間はわざわざ人の心を逆なでするような振る舞いをすることで、自分の力や能力を誇示する。自分の言動に対する批判が多ければ多いほど、「バカどもが何を言っているか」という気分に酔ったりもする。今回の参拝も、ひとつにはそういう臭いがする(むろん政治的な意味合いが多いわけだが、そのほかにということである)。

 8月15日を避けても、どうせ批判はある――と、首相は言った。そりゃそうだ。靖国神社は単なる「神社」ではない。あなたが近所の「お稲荷さん」や「恵比寿さん」にお参りするのなら「心の問題」で結構ですが、それとは話が違うのです。

 靖国神社は(行かれたことのある方はおわかりと思うが)ひとことで言えば「国のために命を捧げた人達(英霊)」を祀る神社である。国のために命を捧げて何が悪いか、という人もいるだろう。私はそういう考え方を一方的に否定しようとは思わないが、しかし第二次大戦の戦死者の人達の多くは、「国に殺された」のだと私は思っている。いやいや徴兵された人達もいる。勇んで戦場に行った人達の中にも、「それが正しい」といわば洗脳された結果であったりもした。無理矢理に命を捧げさせられ、それを美化されれば、むしろ彼らの魂は浮かばれまい。

 同神社の遊就館では、常時、いろいろな映画も上映している。「戦後の誤った大東亜戦争批判によって、祖国に着せられた汚名を挽回する」など、ある特定の思想によって作られた映画である。また、同神社には「崇敬奉賛会」という名の会があり(宮司が名誉会長)、「英霊に感謝と報恩をささげ」「英霊の精神を後世に伝えるべく」さまざまな活動を展開している。東京裁判を否定し、あの戦争は間違っていなかった、という視点による講演会なども開催しているようだ(※)。

《※コメント欄で「汚名を挽回という表現は変、返上が正しいのではないか」というご指摘がありました。はい、その通りです! 私がアホでした。汚名は返上。挽回するのは名誉ですね。(ボーッとした頭で文章書き、見直しもせぬまま公開しているので恥をかくこと多し)
間違いはどんどんご指摘下さい。アホなこと書いてますから。でもコメント欄が「間違いの指摘」と「ご教示」ばっかし、というのも、正直言って何だか淋しいですね。そういう読まれ方しかしてないとすれば、私が悪いのですけれども。できるだけ多くの方に、自分はこう思ったとかこういう見方もあるのではないかとか、忌憚のないご意見お聞かせくださる方がおられると嬉しいのですが……。》

 私は、靖国神社は「非常に特殊な思想の、いわば総本山的な存在」であると思う。カルト神社と言ってもよい。むろん思想信条の自由は憲法で保障されているから、そういう考え方を(私自身は否定するけれども)強引に抹殺しようとする気はない。広めようとするのも自由である。

 だが、そこに政治家が参拝するのは困る。小泉首相はいつも「心の問題」と言うが、それは素朴におかしい。いや、心の問題なら心の問題でもかまわないのだが、「誰それを愛するのは心の問題」などというのとは話が違う。心でなくて、「考え方の問題」でしょう、小泉純一郎どの。

 私達は、「靖国神社」という「特殊な思想に支えられた組織」のありようを認め、その思想でもって戦死者達が祀られていることを是とする人物を首相にしてるのだと、あらためて肝に銘ずるべきなのだ。「8月15日の参拝」は、あの日葬られた亡霊を「実は間違ってなかったんだよ」と囁く、靖国神社の思想への賛同表明であると私は思う。




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63 コメント

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またgoo系ブログにTBできませんでした (komichi)
2006-08-15 23:10:57
 以下の記事を、貴ブログへTBしようとしましたが、うまくいきませんでした。



*「深夜政権」となるか?(8月15日記事)

http://moon.ap.teacup.com/komichi/96.html



 今回、goo系ブログへTBできなかったのは何故?

 ISPの不調か? 時間帯の問題か?

 他のISPブログへのTBは、ほとんどうまくいったのに。



 それとも、今回もgooさんのフィルタリングにひかかってしまったとか?

 だとしたら、どこが?



 まあ、理由はともかく遅れなかったので、このコメントを代わりに送ります。
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汚名・・・ (ヨーグルト)
2006-08-15 23:53:22
はじめまして。

えーと、内容に関わることでは全然ないのですが、とりあえず、汚名は挽回するものではなく、返上するものじゃないでしょうか。

どうでもいいことなので、この書き込みは、管理人様の確認後、削除して下されば幸いです。
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同意 (luxemburg)
2006-08-16 01:02:09
最近のNHKの番組を見ていて、洗脳されて戦ったのではなく、みな家族を背負い、悩みを持ちながら人間として躊躇しながら引き金を引いたんだということがわかりました。賛美なんてしてくれなくていい、英雄でも英霊でなくてもいい、家族の許に、故郷に、生きて帰してくれ、それが本音だったんだな、と思います。イラクで外交官二人が死んだときも「遺志を引き継いで」と小泉さんは言いましたが、戦争と死を賛美する人は靖国神社が好きなんだな、と改めて思いました。
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Unknown (華氏451度)
2006-08-16 01:08:09
ヨーグルトさん、ご指摘ありがとう。そうです、汚名は「返上」。挽回するのは名誉、ですね(エントリの中に注を追加してゴメンナサイと謝っておきました)。私は書きなぐり人間なので、文章は間違いだらけです。これからも間違いがあればご指摘下さい。できれば「内容」についてもご意見聞かせていただけると嬉しく思います。
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Unknown (ヨーグルト)
2006-08-16 02:59:11
>そういう読まれ方しかしてないとすれば、私が悪いのですけれども。できるだけ多くの方に、自分はこう思ったとかこういう見方もあるのではないかとか、忌憚のないご意見お聞かせくださる方がおられると嬉しいのですが……。



これは失礼をいたしました。内容を読んでないわけでは決してないのですが、最近ネットでの書き込みを控えているため、あえて内容には立ち入らないでおきました。



せっかく読み応えのある文章を書いておられるのに、つまらない誤植がそのままになっているのはもったいないと思い、指摘させていただいたのですが、どうも失礼な書き方になってしまったようです。



申し訳ありませんでした。
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Unknown (久々)
2006-08-16 09:02:48
多くの人柱が「靖国で会おう」と散っていったんだから、その人々の御霊は靖国にいるのでしょう。

戦死者を弔い、慰霊するのはどこでも同じ。



ちなみに各国の批判を見てみると……



ttp://ameblo.jp/worldwalker2/entry-10015827890.html

台湾、シンガポール、パラオ、ソロモンと日本に占領された地域も賛成派が多いみたいですねw



もういっちょ

ttp://d.hatena.ne.jp/boutarou/20050626/1119769776



がんばってこれだけの国の人に「靖国参拝しないでください!」と言ってみては?w



それと、小泉の言う心の問題ってのは多分建前でしょう。

あの戦争は別に日本そんなに悪くないとは内心思ってるはず。



>第二次大戦の戦死者の人達の多くは、「国に殺された」のだと私は思っている。

そりゃ何処の国も同じ。



東京裁判は否定されて当然。

大体事後法なんだもん。

だからA級戦犯が国会議決で全会一致で合祀されたんでしょう。



大体あの時代中国に出ないで、日本はどうやって生き残れたのでしょうか……
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成人式で騒ぐ大人に成れない子供達 (布引洋)
2006-08-16 10:24:29
多くの日本人にとって8月15日は盂蘭盆会で先祖の霊が帰ってくる日。

儒教の先祖崇拝と仏教の盂蘭盆会が重なって、何となく靖国参拝する、風習、習慣も無かったわけでもない。

例え政治家であっても、以上の理由で戦没者の遺族が参拝するのは十分理解できる。



で小泉純一郎て、遺族なの。?



中国韓国が反対するから行くなと言うのは、内政干渉で許せない。中韓の機嫌取りをすべきでない、毅然たる態度こそ日本の権威を高める。

・・・と一市民が考えるのは自由ですが、見た目や格好良い強気の態度が本当に日本の国益に適うのか、最高責任者には国の内外の人達の理解と賛同を得るように説明する責任が存在する。



で人間小泉て何。  え!!この人は首相じゃ無かったの。?



本人は『格好良い』『目立つ』と思っているが、大人達から見れば単に見っとも無い行為にしか思えない。

しつけの悪い子供のやり方で亀田親子の振る舞いと同程度。
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Unknown (久々)
2006-08-16 11:19:00


遺族だから参拝するとか、しないとか

その時点でお前根本から間違ってるよww





>最高責任者には国の内外の人達の理解と賛同を得るように説明する責任が存在する。



俺の書き込み見た~?

反対してるのは特亜だけw



>本人は『格好良い』『目立つ』と思っているが、大人達から見れば単に見っとも無い行為にしか思えない。

>しつけの悪い子供のやり方で亀田親子の振る舞いと同程度。



つまりは自分の価値観に会わないやつは子供かw

まぁ当たってる。

アホの左翼の嘘が次々とバレていっちゃ、子供はどんどん嫌中、嫌韓になるからなw

ttp://vista.x0.to/img/vi5564086901.jpg





大体、亀田はどうみても八百長だろうがw

何?

靖国が小泉に金でも出したの?

暴力団と関係でも持ってたの?
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嫌韓中の先には何があるの? (こば☆ふみ)
2006-08-16 14:38:11
ちょっと言葉使いには気をつけて話しませんか?(^^)



靖国参拝については多くの国がなんとも思っていないと言うことのようですね。ただし、近現代史を見ると日本は大手を振っていられる状況に無かったように思います。(隣近所の相手が悪いのか、日本がきちんと戦後史の総括をしてこなかったか?考えるところはあるでしょうね)



靖国参拝について言えば詳細がわかれば各国「賛否半ばすることになるかもしれません」



それから、嫌韓中の行き着く先には何があるんだろうか?

私には、今の政治状況からして日本の孤立化と軍拡?

暗然として不安が残ります。



横レスすみません。
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Unknown (華氏451度)
2006-08-16 14:55:11
こば☆ふみさん、ありがとう。私も、原則としてコメント欄には何を書いていただいてもいい(意味不明の罵倒は除く)というつもりでおりますが、言葉には気をつけて欲しいと思います。最低限、聞き苦しい言葉は避けていただきたい。



たとえば「おまえ」という二人称。チュトワイエの仲でもないのに、そういう呼び方はないでしょう。まさか対面コミュニケーションの場でも、初対面の人や、さほど親しくない人に対して、いきなり「おまえさぁ」などと呼びかけたりはなさらないと思いますが。(このあたりのことは何度か書いてます)



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