「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

”尖閣だけではない”中国の南洋戦略

2013-07-24 05:33:53 | Weblog
先日、小ブログを通じて知り合いになった「南太平洋島嶼研究会」(http://blog.livedoor.jp/raspi2012/)の丸谷元人氏から近著「日本の南洋戦略」(ハート出版2013年7月)の寄贈を受けた。副題には”南太平洋で始まった新たなる《戦争》の行方とある。早速、読ませて頂いたが、知らないことばかりで、大変勉強になった。

本の筋は二つからなっている。一つは「太平洋で何がおきているのか」(第一章)「謀略渦まく《豪中戦争》」(第二章)「迫りくる南太平洋での覇権争い」(第六章)で、最近の、南太平洋を取り巻く《豪州と中国との間の謀略戦争》を中心に同地域の情勢を解説している。日本のマスコミでは、ほとんど報道されないことばかりである。とくに僕が衝撃を受けたのは、中国が《尖閣だけじゃない》(本書帯広告)中国本土からはるか離れた南太平洋の派遣争いにまで参加していることだ。

第二の筋は、著者丸谷氏が卒業したオーストラリア国立大学(キャンベラ)の五年間の留学生活と、卒業後、現地支配人として勤務したパプアニューギニアの体験談である。著者は、この体験談にからませて「ニューギニアの日本兵」(第三章)「遠くて近い親日国パプアニューギニア」(第四章)を紹介している。著者は昭和49年生まれで、戦争体験はまったくないが、防衛省の戦跡調査班に同行して、先の戦争で16万人の将兵が戦死した激戦地を訪れ、遺骨収容にも参加したことがる。

著者はこういった長い現地での体験を通じて一つの結論を得た。それはパプアニューギニアは親日国で旧日本兵と現地人との間には依然、強い絆で結ばれていること。自然資源に恵まれた大国であるにもかかわらず、日本の進出は遅れをとっており、中国の後塵をはいしている。わが国はもっと、リスクを恐れず、旧日本軍が残した”率先垂範”の精神でもって、パプアニューギニアを含む南太平洋に目をむけるべきだと提案している。

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8 コメント

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Unknown (朱雀)
2013-07-25 02:30:48
私もこの本を購入いたしました。
漸く手に取って読み始めたところですが、この要約を拝見しただけでも、すばらしい内容ですね。
中国は1000人の民兵を尖閣に送り込もうとしたり、あの手この手で揺さぶってくると思いますが、他方でパプアニューギニアやフィジーなどに軍港を作って潜水艦で日本のシーレーンを脅かしてくる可能性が大ですね。
尖閣だけでなく、南洋に目を転じて、しっかり対処していかないと日本は首根っこを押さえられることになりかねないと思います。

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Unknown (朱雀)
2013-07-25 02:39:29
南洋諸国における遺骨収集が全く遅々として進んでいない状況は、ある意味硫黄島以上にひどいと言えるかもしれませんね。
自分の生活だけに目を奪われて、本当に戦後日本人は英霊をすっかり忘れてきてしまったんだなと感じます。私も著者と年齢的に近い世代ですので、この気持ちは非常によく分かります。

昨年インドネシアを訪れて、戦後の繁栄は英霊の犠牲の上にあるのだと改めてつくづく思いました。東南アジア諸国が独立し、平和がもたらされたのは、英霊あってのものであり、戦後の日本は英霊の遺産の上に生きてこられたのだと思います。しかし、後に続く日本人も努力しなければ、平和も繁栄も簡単に崩れ去ってしまうものだと感じます。
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間抜け (chobimame)
2013-07-25 08:50:48
このような話を聞くと、いったい日本は何を考えて外交をしているのか疑問になります。日本の外交といえば、常に一番に中国と韓国があがり、しかも何の国益にならない土下座外交が主になっています。中国は、近隣国を揺るがしながら国益を優先した外交しかしていません。中国のやることは、ならず者と同じで世界から糾弾されるべき行動ですが、それをボーッと見ている日本は、お人好しを通りこして間抜けにまで思える外交です。こんなことを続ければ、国を衰退させるばかりです。今までは戦後に築いてもらった余力で食っているだけの話であり、もはや次の段階に入っていることに国は気づいていないような気がします。企業は、予算を組みどう売り上げを上げるかと考え動きますが、国は外交という営業活動をどう考えているのか?何もしなかった約四年の民主党のツケを返すのは、とても大変だと思います。日本に先見の明がある外交官や政治家はいないものでしょうか。
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遺骨収容 (kakek)
2013-07-25 12:40:07
朱雀 さん
20年前、JICAの研修で来日したPNGの研修員が真新しい日本の軍票を束で持参しました。使用できると、と思っていたのでしょう。丸谷さんも書かれていますが、非常にナーイブな人たちが多く、非常に親日的です。戦争でいろんなことがあったが、日本人には絶大な信頼を置いています。飛行機で僅か6時間の距離です。もっと日本人は南太平洋の国々に目を向けるべきです。
遺骨収容=丸谷さんは遺骨収集ではないといっていますが、その通りです=についても、厚労省の僅かな人間に任せるのではなくて、ボランティアを募って収容するのが、われわれ世代の義務です。
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自己満足な日本外交 (kakek)
2013-07-25 13:02:39
chobimame さん
日本の外交は、あまりにも”きれいごと好き”で”おざなり”だと思います。この南太平洋地域についても何年かに1回、会議を開き(昨年は沖縄開催)僅かな援助をして、ことなれりと自己満足しています。同じような構図がアフリカにもみられ、50か国もの首脳に大盤振る舞いをしています。ところが、実態は中国が覇権を求めて、堂々と進出しています。僕もこの本を読むまで知りませんでした。
総花的な外交は意味がありません。パレスチナ問題など米国に任せるべきです。かっての宗主国でさえ手をこまねいている問題にシャシャリ出るべきえはありません。もっと力を入れる問題が膝元にあります。
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中国こそ核武装した軍国主義国家 (lordyupa)
2013-08-04 08:45:26
米国軍幹部による2007年5に、更に、2008年1月の訪中の際に、中国軍幹部から、「太平洋を東西に分割し、東側を米国、西側を中国が管理する」ことを提案したと言う報道がありました。ハワイ以東を米国軍支配圏、西側を中国軍支配圏とする提案のようです。これは、まるで15世紀にスペインとポルトガルとが、大西洋上の西経46度7分以西をスペインの新領土、東をポルトガルの新領土として、世界の二分割を決めた1494年トルデシャリス条約の発想と同じです。

米国産業構造は、企画・開発・設計工程は米国人を雇用した自国で行うが、製造・物流工程は中国に外注委託する方式を基本としているため、対中貿易赤字が膨大になり、米国国債という「キンタマ」を中国に握られています。米国の軍事基地に日本の安全保障を依存している日本では、日本の米国国債保有を自国の意志だけで自由に売却できないのです。しかし、中国は自国に有利と確信したならば、米国国債の大量売却などで、米国国債暴落の脅しを米国に迫ることが現実に可能な選択肢の一つです。リーマンショック以降、米国の財政赤字により、米国の軍事予算は縮小される一方で、逆に、中国の軍事予算は増強するばかりです。
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心配 (kakek)
2013-08-04 14:11:18
lordyupa さん
僕ら一般の日本人が知らないところで、大国によりこんなことが行われているとすれば恐ろしい事です。しかし、過去の歴史をみると、ありえないことでもないですね。行く先短くなったせいか、日本の現状が心配でなりません。
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日本は、周到な準備のうえ、末永く粘り強く実行 (lordyupa)
2013-08-05 13:01:14
kakekさん
もちろん、米軍は人民解放軍の申し出を断固拒否し、その後の米国議会でも、中国が打診してきた太平洋の二分割管理方式について、米国は一切くみしないと、否定証言していると報道されていました。ただ、米国経済の中国依存構造があることを肝に銘じて、日本の外交展開することが肝要だと思います。

また、最近話題のTPPは農業の関税問題(米の自由化など)のみ争点となっていますが、表には全くでていないけれども、環太平洋地域を米軍優位の地域とするのに対して、賛同するのか否定するのかという、軍事構想やエネルギー安全保障とも密接に関連した複合的な国際的枠組みだと感じます。TPP参加により、シェールガスなど低廉なエネルギーの安定長期購入の了解が米国、カナダなどから得られ、中東依存度合に偏った日本のエネルギー安全保障の確保にも、道が開けれるように思います。

南太平洋の国々とは、日本は札束を配るだけではなく、互いに双方で知恵を絞り、南の国々が幸福な社会を築けるように、その国民がホンネで親日を実感できるような具体的な施策を通じて、外交関係の強化が望まれます。拝金主義と覇権主義の中国とは質の異なったアイデアを工夫するのが必須だと思います。家族や村落共同体を基盤とした南洋の人々の暮らしの価値観に敬意をはらい、日本人も学ぶ姿勢が大事ではないでしょうか?
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