「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

関東大震災 朝日の誤報と報道姿勢

2014-09-01 05:58:59 | Weblog
91年前の大正12年9月1日、東京を中心にした関東地方で震度M7.9の大地震が発生、津波や地震による大火災で10万5千人が亡くなっている。3年前の東北大震の記憶が新しいだけに、関東大震災は忘れがちになってきたが、僕が子供だった戦前昭和の東京では、周囲にまだ地震にあった人が多く、生々しく、その体験談が語られたものだ。しかし、今では百歳になる先輩だけが唯一人の語り部となってしまった。先輩は9歳の時、清正公前(港区高輪)の自宅で地震にあい、家族と一緒に目黒の今の白金自然文化園周囲にあった軍の火薬庫に避難した話を毎年この時期になるとされる。

たまたまインターネットで関東大震災の資料を”渉猟”していたら、地震後の9月3日の大阪朝日新聞の号外を見つけた。当時は別名だったが兄弟会社だった東京朝日記者が、甲府から伝えた記事で、”目黒と工廠火薬爆発”とあり、鮮人暴徒が横浜から東神奈川に向けて放火している”と目撃談を載せている。もちろん、これは誤報である。地震直後、電信、電話が破壊され、交通網も寸断されたため、新聞各社は、自社の記者を車に乗せ、電話が通じる地域から各地にニュースを送った。

亡父が戦後の昭和23年、大学ノートに万年筆で記した「記者生活30年」(未刊)に関東大震災時のことが詳細に書いてあった。当時亡父は有楽町にあった報知新聞に勤務していたが,報知の場合は震災直後、当時社会部長だった御手洗辰雄氏(大正昭和の著名なジャナリスト)の呼びかけで、路上にあった市電の中で緊急編集会議を開き、当面の方針は人心の安定にあるとして、気象台と地震学教室の”もう大丈夫”だとの談話をとりつけ、戒厳令本部の発表を記事にして手刷りで印刷、群馬県の高崎から各地にその号外を発信している。

東京朝日新聞は地震後の火災で社屋が全焼したハンデもあったかもしれないが、未確認の記事を発信するのは無責任であった。とくに混乱を煽るような〝不逞鮮人”の暴動の目撃談は報道機関の姿勢ではなかった。

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4 コメント

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一貫して無責任 (chobimame)
2014-09-01 22:42:06
朝日は、無責任な事に関しては、一貫しています。すごい姿勢です。
今では、すっかり左翼ですが、第二次の対戦の時は、どの新聞よりも戦争を煽った記事を書いた話は有名です。いくら国策とは言え、節操がなさすぎます。
そして垂れ流した記事には責任を持たない。
昔から三文紙だったのかもしれません。
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商売上手 (kakek)
2014-09-02 10:50:24
chobimame さん
商売が上手なのです。おカネになれば考え方など、どうでもよいという体質です。こんな新聞に高い広告を出す企業の気持ちが解りません。企業イメージのダウンになります。でも、さすがに今回の”慰安婦”は、答えているみたいです。関東大地震の誤報を初めて知り、この新聞には昔から、こういう体質があった事を知りました。
テレビ局にも同じ体質の会社がありますね。
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大東亜戦争を煽ったのは新聞社 (lordyupa)
2014-09-02 12:15:45
従軍世代やその親の世代に対して、「なんであんな無謀な戦争を起こしたのだと?」非難めいた言葉が、戦後生まれの団塊世代、戦争には全く疎い新人類世代等々の一部の人々から口にされることがある。
米国GHQは、軍部が言論統制して騙したという宣撫をずっと行ってきて、義務教育でも一貫してその調子で刷り込んできたと思います。従軍世代は、黙していることが多いが、戦時中の新聞社の戦意高揚記事の凄まじさをみたら、どうみても、あきらかに、そのような言論統制の域を超えている記事が多いと思います。安田将三、石橋孝太郎「朝日新聞の戦争責任」太田出版(1995)に多くの事例が出ています。
chobimameさんも、
お時間に都合ができれば、すでに絶版となっていますから、図書館で借りて読まれたら良いと思います。

私は、東京裁判は、裁判の形式だけをとってはいるものの、戦勝国米国の敗戦国日本へのリンチであったと思います。しかし、扇動記事で国民を戦争へとたきつけておきながら、戦中の朝日新聞社の経営幹部や論説主幹クラスは、A級戦犯やB級戦犯として訴追されていまさせんし、戦後も会社に残留し、要職を務め、栄達をきわめています。もし東条英機がA戦犯なら、戦時中の朝日新聞社の社長など経営陣は、当然、同罪で処刑されてもおかしくないと思います。

大東亜戦争を起こした闇将軍は、マスコミ(当時は、新聞とラジオ)ではないかと感じています。
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カネ儲け主義 (kakek)
2014-09-02 15:35:26
lordyupa さん
御手洗辰雄さんは、経歴からみると震災時、30歳そこそこです。でもさすが明治の言論人です。震災では東京日日(毎日)と報知新聞の二つが被害にあわなかったのですが、残っている資料を見ると、報知は一貫して民心の安定を報道の指針としています。朝日のように不逞鮮人の暴動を煽る報道はしておりません。
子供の頃、朝日の神風号の世界一周旅行に胸をときめかしましたが、事業面でもカネ儲けのうまい人がいたのですね。
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