タイトルが気になったので、購入した文庫本です。著者は、ノンフィクション作家の野地秩嘉(のじつねよし)さんで、元々2001年に幻冬舎文庫より刊行された『ビートルズを呼んだ男 伝説の呼び屋・永島達司の生涯』に加筆修正が加えられて、小学館から2017年4月に発行されたものです。
この本は、1966年6月のビートルズの来日公演開催の経緯や日本武道館における公演そのものと、警備などその周辺がドキュメンタリー風に描かれていて、ことにビートルズファンには関心を呼ぶ内容です。そういった内容が詳しく描かれていますが、もともとは、プロモーターとして活躍した永島達司(キョードー東京創立者)の生涯に焦点を当てた本です。
永島達司のビジネスぶりを読み進むにつれて、プロモーターという職業は、人とのつながりや信用がいかに大事であるかということを痛切に感じさせられました。同時に、プロモーターという仕事は、当たる当たらないといった「かけ」のようなところがあり、それによって神経をすり減らすことが日常茶飯事だったろうと思わされました。
僕が嬉しかったのは、永島達司は元来ジャズが好きで、ジョージ・ルイスやルイ・アームストロング、ナット・キング・コールなどジャズミュージシャンをキャリアの初めには呼んでいることです。自分がいいと思い、日本で紹介したい人を呼ぶという考えが根底にあって、プロモーターの活動を行っているのに深く共感し、尊敬の気持ちを抱きました。
ビートルズに関心のある方や音楽ビジネスに興味がある方、戦後のジャズの状況を知りたい方など、多くの人に面白く読んでもらえる本です。