ホテルのバイキングで、山のように料理を皿に集めてきて、食べきれずに残していく客がいます。
並んだ料理を見れば食欲がわいて、食べ始めればすぐにその食欲がしぼんでしまう、"食べない食欲"を持った人たちです。
"食べない食欲"は、食べきれなくても一人前に、あるいはそれ以上に、とにかくひとより先に自分のテーブルに載せたところを見せたい、分どって"見せたい食欲"なのかもしれません。
核兵器は、酷い実験の結果も知られていて、持っていても使う蛮勇はなかなか起きません。
発射ボタンを押す狂気への、相手の恐れに期待するという、人類の考えたもっとも愚劣な兵器です。
実際は使いものにならないそれを、自分は持つけれども相手には持たせない、それを非核化と呼ぶまやかしを表面上のさしあたりの安堵材料にして、使わなくても持つだけは持つという、"見せたい食欲"と似通ったところもありそうです。
何かの大変革が起きるまでは、わけのわからないことをだらだらと続けていこうという、怠惰産業の代表格です。
互いに一見敵対風の緊張感を持たせることによって、軍需産業が生きながらえるという、見せ合う力の相互敵対依存という奇妙な空気が地球をつつみこみます。
皿に集めさせる料理と、勢いを見せあう兵器群とは、どこか共通の、無駄が大きいほど満足感が充実するという、人間のすることのばからしさを象徴しているように思います。