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おじいちゃんと日本とどちらが大事?

2006-09-13 01:21:52 | Weblog
 自民党総裁選に立候補している安倍晋三官房長官、谷垣禎一財務相、麻生太郎外相は11日、日本記者クラブ主催の公開討論会で、憲法改正や日中関係について議論した。

 その中で幾つか気になる発言があったが、中でも日中関係に対する安倍氏の考え方は今後の両国間の不協和音を示唆するもので、今反対の声を上げないと取り返しの付かないことになるのではとの思いに至った。
 
 それは、靖国神社のA級戦犯合祀についての発言で、谷垣氏が「A級戦犯合祀問題があるなら(首相の公式参拝は)控えるべきだ」と強調したことに対して安倍氏が反論したものだ。谷垣氏は、中国が日中国交回復の際に「日本の戦争責任は指導者層にあり、国民にない」と位置づけたことを評価したが、安倍氏は「日本国民を2つの層に分けるのはやや階級史観ふうだという議論もある」と、表現に棘はないものの、きっぱりと言いきった。

 これは、安倍氏の母方の祖父の岸信介元首相が太平洋戦争開戦時の東條内閣の商工大臣で、その責任を問われて敗戦後、一度はA級戦犯容疑者として巣鴨拘置所に収監されたことと無関係ではなかろう。岸氏は最近言われているように、“無罪放免”されたわけではなく、当時東アジアで勢力を伸長させようとしていた共産圏に対抗するために占領軍が方針転換、旧体制派の実力者で利用価値のある者を不起訴にしただけの話で決して「無罪」と認定されたわけではない。

 だが、安倍氏は“おじいちゃん”の名誉回復のためにも中国側の色分けが許せないのだろう。故周恩来首相が日中国交回復に納得しない国内世論を抑えるために考え出した「二種類の日本人論」を否定してかかった。だが、この部分を壊してしまえばどうなるか、中国国内でどのような反応が起きるか想像するのは簡単だ。

 今どの書店をのぞいても安倍氏の顔写真とともに彼の著書『美しい日本』が積まれている。だが、「美しい日本」などという他の政治家の受け売り本を出して悦に入っている場合ではない。日本が美しいことに異論はないが、美しくもない汚点に蓋をしたり、すり替えをしたりして「美しい日本」などと言い張っても世界の人たちの目はごまかせるものではない。日本の指導者たるもの、もしアジアの指導的立場に立ちたいのであるのなら(実際には不可能だが)その辺りから改める必要がある。

 いずれにしても、安倍さんはこれから一国一城の主となる人だ。自分の親族の名誉などにこだわるあまり、中国との関係をますます悪化させることだけは避けていただきたい。