都市徘徊blog

徒然まちあるき日記

新宿西口付近から西新宿

2009-01-30 | 新宿区  

東京新旧写真比較(1997/2008) No.26 新宿区西新宿

Photo 1997.1.18(ノーマル時)、Photo 2008.12.23(マウスオン) 撮影地:新宿区西新宿1 小田急デパート玄関前から

 東京モード学園他が入居するモード学園コクーンタワーができたので、景色の印象はかなり変化したのだが、それ以外の構成要素はほとんど変わっていない。11年しか経っていないからとも言えるが、西新宿でも7丁目など、新宿駅から遠いエリアは激変しているので、駅前でそれほど建て替えが激しくなかったのはちょっと意外だった。もちろん、コクーンタワーの存在感はかなり大きいので、風景はかなり変わったという方が正しいのだろうが・・・。

 コクーンタワーに関しては、いろいろ意見がある。自治体の景観審議会などでも話題になったが、デザインの質を云々してこれをコントロールするのが難しかったのか、結局あまり介入しなかったと聞く。都市景観の分野の人の間でも議論が分かれる。
 今まで西新宿にはモダニズム系のすっきりした角形のビルが多かった、というか全国的にそういうのが多数派だった。だから、コクーンタワーの濃いデザインは、調和を乱すという意見がある。確かに今後、こんなビルばかりが建つとちょっと風景的にはうるさい。中国やドバイはその手の主張する建物だらけで、しばらく見ていると疲れてくるのだが、日本もそうなるのではないかという懸念を持つ人々もいる。
 一方で、今までのつまらない形より面白い形のビルがもっと増えても良い、もっと増えた方が良いという人もいる。

 今まで新宿の超高層ビルは素人目にはどれがどれだか分からないことが多かったことは事実だ。西新宿を歩いていると、この界隈をあまり知らない人が、建物を振り仰いではどれがどれなんだろ?という顔をしていることがしばしばある。また、都庁の展望台からビル群を眺めて、あれは何ビルじゃないの?とか、あそこが新宿御苑かしら?なんて言っている人たちが大勢いるのだが、たいがいがなにかしら間違っている。

 東京でほとんどの人が間違わないのは東京タワーぐらい。また、新宿では東京都庁(第一本庁舎)の知名度は高い。テレビなどで見る機会が多いのと、双塔が特徴的であるからなのだろう。これに対して第二本庁舎の方はいきなり知名度が落ちる。また同じ丹下健三デザインによる新宿パークタワーが都庁と混同されることがしばしばある。以前、都庁の展望室でおじさんがパークタワーを指差して、「あれが都庁だろ」と言っていたのには驚いた。今、自分がいる場所が都庁だよ。そんなにたくさん都庁はないよ〜。もちろんこれはかなりの例外なんだけど、地上から見てパークタワーと都庁を混同する人は結構多い。

 新宿では、住友三角ビルがよく知られている。三角(よく見ると六角形)の形が特徴的で、新宿には類似のものがないのと、超高層ビルの初期に建てられて知名度が比較的高いのが理由だろう。次点は損保ジャパン(旧安田火災海上)とNSビルだろうか。損保ジャパンはスカート型が話題になったし、NSビルは高さはないが巨大な吹き抜けが特徴的だ。

 その他、新宿には20以上の超高層ビルがある。だが、他は外観からは全然区別が付かないらしい。京王プラザホテルは、ホテルとしては良く知られているが、その外観の知名度はさほど高くない。

 1981年の写真は、後方左から、エステック情報ビル、工学院大学、中央通りを挟んで奥がホテルセンチュリーハイアット、新宿住友ビル、新宿センタービル、新宿エルタワー。手前は左側角が明治安田生命ビル、右側角がスバルビル、その右側が松岡セントラルビル。
 2008年の写真では、新宿センタービルがモード学園コクーンタワーに完全に隠されてしまったが、他は一緒(ホテルセンチュリーハイアット東京は、2007.10にハイアットリージェンシー東京に名称変更)。手前の建物も屋上広告が変わったりはしているが、建物には変化がない。ただ、スバルビルの屋上にある時計が、いつのまにかデジタルからアナログに変わり、明治安田生命ビルの天気予報電光掲示板がなくなったりしていた。
 どうでしょう。これらのビルは、名前は知ってるけど形やデザインとビル名が全部は一致しないという状況なのでは? そう考えると、コクーンタワーはアクの強いデザインだけど、誰もが知る可能性を持った建物かもしれない。

 もちろん、東京モード学園も丹下事務所もそのへんを狙って建物をデザインしたわけで、ビル全体が広告塔のようなものなのだ。大隈講堂が早稲田大学を、安田講堂が東京大学を代表し、ユニバーシティ・アイデンティティを創る形であるのと同じように、コクーンタワーは東京モード学園のUIとなる形なのだろう。そういう意味では、王道的戦略なんだが、いかんせん図体が大きい。大隈講堂や安田講堂はイメージとしては記憶に残るが、そんなに遠くからは見えない。渋谷にある青山製図専門学校もド派手な建物で、これも学校のアイデンティティを象徴する広告塔なのだが、大きな建物ではないので、地元の人と建築系の人以外の一般人にはあまり知られておらず、影響は限定的である。

 新宿の超高層ビル街に建つコクーンタワーは、人々の視線を吸い寄せる。どうにもこうにも目立つので気にならずにはいられない。新宿駅に近い街区に建ったため、他の多くのビルはコクーンタワーに主役の座を奪われて、引き立て役に回ってしまったようでさえある。
 1991年に東京都庁が建った時も、他よりも目立っている印象はあった。だが都庁は新宿駅の方から見ると西の奥にあるため、他の超高層ビルに隠れがちで、群としてみると意外に目立たなかった。だがコクーンタワーは群の中から前に出るように建っている。視線を吸い寄せる状態は当分続きそうだ。

 丹下健三が手掛けたものとしてはフジテレビの知名度も抜群に高い。テレビでしばしば登場してくるからというのもあるが、他の局がそんなことになっていないことを考えると、やはり形の力が大きいのだろう。
 ところでコクーンタワーが新宿にあると、非常に目立つのだが、お台場にあったらどうだろう。周辺に昔ながらの市街地が広がっているわけではなく、フジテレビみたいなキワモノもあるわけで、ここだとコクーンタワーは全然違和感がない。今後、もっと怪しい建物が建つ可能性もあって、そういう場所ならご自由にどうぞ、という感じ。池之端にあったソフィテルの時にも書いたが、埋め立て地や新開地ではこういうのを建てても良い気がする。西新宿は、比較的地味なモダン超高層ビルが建ち並ぶ街のイメージが、もう出来上がっているのかもしれない。だが、新宿でも歌舞伎町だったら、ネオンサインがないコクーンタワーは意外に地味な存在になってしまうかもしれない。
 コクーンタワーは、丸の内の皇居近くだったら、反対が強くなって建てられなかったんじゃないかなと思う。西新宿だと、いろんな意見は出るけど一応建つ。お台場やドバイ・上海だと、また一つ変なのが建ったという程度。

 ここまで考えてみると、新宿の超高層ビル群の街並みに一つだけあるぐらいはまあ許せるのかもしれない。みんなが同じような形じゃ凡庸でつまらない。かといって百家争鳴状態だと、やはり混乱状態になり、形がうるさくて疲れる。
 だから、これ以上変なのを建てないでね、という感じ。名古屋には同じモード学園がスパイラルタワーというねじれた外観のビルを造ったが、あれがコクーンタワーの隣に並んだら、デザイン的な騒々しさが倍増して、イヤな感じになってくる気がする。

#東京新旧写真比較 新宿区  #新しい建物 新宿区  #街並み 新宿区  #高層ビル

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1 コメント

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どこのドイツ (ガーゴイル)
2020-12-21 17:41:54
大久保駅と新大久保駅の周辺を含めて第二次世界大戦後に新宿御苑の領域になった。
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