有田芳生の『酔醒漫録』

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市原刑務所で幻を見た

2006-11-22 07:52:08 | 「ザ・ワイド」

 11月21日(火)朝8時。迎えのタクシーに乗って千葉県の市原へ。資料を読みつつ眼を閉じればウトウト。睡眠4時間はいささかきつい。それでも2006年はここまで風邪をひいていない。例年一度は熱を出していたから新記録。あと少し注意したい。9時45分ごろ市原刑務所に到着。「ザ・ワイド」スタッフと合流、取材を開始する。ここは交通事故を起し、逮捕、起訴され懲役刑を受けた人たちが入所している刑務所だ。俗に「交通刑務所」と呼ばれている。いったいなぜ飲酒運転をしたのか、それまでの実生活はどのようなものだったのか。再発は果して防げるのかなどを明らかにするのが目的である。飲酒運転で死者を出した20歳代の男性3人に話を聞いた。その内容はさらに取材を重ねたうえで近く「ザ・ワイド」で放送される。ここでは刑務所の印象を記録しておきたい。いまなお軍隊生活がここにあるからだ。「イッチニ、イッチニ」と大声で行進する受刑者たち。腕を大きく前後に振って、乱れずに歩いていく。こういう集団などこれまでに見たこともないから不思議空間だ。昼食、夕食時もそうなら、作業場でも同じだった。制服姿の刑務官が前に立ち、周囲を監視している。黙々と単純作業をする受刑者たち。その場を離れるときは真っすぐに挙手をして大声で理由を述べる。係官は「よしっ!」と指さしして受刑者は席を立つ。「姿勢を正して!いただきます!」これが食事をするときに受刑者のなかから選ばれた指揮官が発する言葉だ。起床は6時半、朝食は7時20分。時間は15分。仕事をして昼食。休憩はグラウンドや体育館。夕食は午後4時半。就寝は9時。朝食までまる14時間。お腹が空くだろうなと思った。

 体育館に集まった受刑者の姿を見ていて、ここでも遠くシンガポールのチャンギー刑務所で最後の時間を過ごした木村久夫さんの姿を思い出してしまった。ほとんどの受刑者は車座になって雑談をしている。そのなかに少数だが腕立て伏せなどをしている者がいる。受刑者の憩いの時間とは、おそらく60年前でも同じ雰囲気だったのだろう。この市原刑務所にいる受刑者は懲役4年未満。チャンギー刑務所では死刑囚から有期刑までがいっしょだった。生の終焉を間近にした受刑者に比べれば、この市原刑務所の雰囲気ははるかにのどかなものなのだろう。いくつかの発見がある。そのひとつは制服、制帽姿になることは誰からも個性を奪い取るという事実である。じっと顔を確認しないならば、そこにいる集団はみな同じに見えるのだ。軍隊とはそういうものなのだろう。密室空間で軍隊的規律を強制されたとき、人間は容易に一方向に染まっていく。まてよとここで思う。眼に見えなくとも特殊な隔離空間が出来てはいないか。飲酒運転とそれによる事故が減らないのも、そこに理由がありそうだ。その新しい視点は放送で明らかにしたい。日本テレビで降ろしてもらい神保町。「エリカ」マスターの弟さんと立ち話。亡くなったのは9月22日だったという。やはりいまのままでは再開店はないようだ。神保町文化の灯があちこちで消えていく。


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1 コメント

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交通刑務所 (市原刑務所の見取り図等・・・) (よったん)
2006-11-22 15:55:09
交通刑務所 (市原刑務所の見取り図等・・・)
http://ip.tosp.co.jp/i.asp?I=appears18

このサイトは1年ほど更新しておりませんが、
受刑者の1日の生活が分かります。
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