有田芳生の『酔醒漫録』

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

「僕はパパを殺すことに決めた」

2007-05-22 08:32:34 | 読書

 5月21日(月)テレビ朝日で6月2日に放映される「テレサ・テン物語」についてさまざまな動きがある。テレサを演じた木村佳乃さんは、テレビの番組宣伝に出るだけでなく、台湾で記者会見も行う。放送当日に時差はあるものの、同日放映されるからだ。ちょうど伊勢谷友介との「熱愛報道」があったため、女性週刊誌なども現地入りするようだ。28日からはテレサの歌声を流しながら大型宣伝トラックが東京都内を走る。テレビ朝日の「スーパーモーニング」などにも木村さんが出演する予定だ。テレビドラマ化は個人的にはすでに遠い過去の出来事のようだったけれど、ここにきてうれしい問い合わせがあった。文庫版あとがきに書いたテレサ・テンの北京コンサートに関することだ。もしテレサが生きていれば、コンサートの依頼があれば引き受けただろうとわたしは思った。もちろん彼女は12年前に亡くなった。しかし、テレサのコンサートを意外な方法で実現できる可能性がでてきた。ただのフィルムコンサートなどというレベルではない。もちろんテレサは生きていないから、中国政府も彼女の政治的発言に不安を感じることはない。文化支配のためにテレサ・テンを利用しようという目的は明らかだ。それでも「精神汚染」とまで断罪された歌声が中国大陸に浸透していくことは、まさに凱旋なのだ。テレビドラマの撮影も動き出している。なし崩しの政策変更はいかにもご都合主義だ。それでも「わたしのこれからの人生のテーマは中国と闘うことです」と逝去の半年前にわたしに語った意思が形となっていく。うれしいことだ。

 「週刊朝日」を定期的に送付してくれるというのを断ったのは、郵便事情で発売から数日後に到着するからだ。今日もキオスクで購入。日本テレビに向う地下鉄のなかでページを開く。今週号はできるだけ多くのひとに読んでもらいたいと思う。先日、24日に発売となる草薙厚子さんの『僕はパパを殺すことに決めた』(講談社)が送られてきた。昨年6月に奈良県で起きた事件は、16歳の少年が自宅に放火して、継母、弟、妹が亡くなるという悲劇を招いた。その少年には4歳のときから勉強を強要し、暴力を振るう父親への憎しみがあった。草薙さんの著作は、少年の供述調書などを紹介しつつ、殺人へと到る心境を綴った少年直筆の「殺人カレンダー」を公開している。「僕はこれまでパパから受けた嫌なことを思い出しました。パパの厳しい監視の下で勉強させられ、怒鳴られたり蹴られたり、本をぶつけられたりお茶をかけられたりしたことを。なんでパパからこんな暴力を受けなければならないんや。一生懸命勉強しているやないか。何か方法を考えてパパを殺そう。パパを殺して僕も家出しよう。自分の人生をやり直そうーー。僕はそう思うようになりました」。父親は少年の言葉がいまだ理解できないようにも思える。悲劇は続いている。「週刊朝日」は、草薙さんにインタビューした内容をコンパクトにまとめている。単行本を読まないひとでも、この記事を読めば、親子関係のどこに問題があったかを特殊な問題としてではなく、普遍的課題として問いかけてくる。ここには現代社会が抱え込んでしまった宿痾が具体的に明らかにされている。