アンダンテのだんだんと日記

ごたごたした生活の中から、ひとつずつ「いいこと」を探して、だんだんと優雅な生活を目指す日記

物理的に、タッチで何が変わるのか?

2017年07月15日 | ピアノ
前にピティナステップに出たとき、部の合間に審査員の先生方が舞台上で語るコーナーがあったんだけど、そこで「りん(仏壇でチーンって鳴らすやつ)」を叩いて見せてた人がいた。

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つまり、叩きつけるような感じでやるとうまく響かなくて「がじっ」ってなるけど、
跳ね返りを利用してすぐ離れるような叩き方すれば「りーん」ってよく響くという実演。

こんなふうに「脱力が大事ですよ」ということを言っていたんだけど…

「りん」や「和太鼓」と、ピアノって同じ打楽器といっても仕組みが違うわけで、
ピアノの場合、「がじっ」て弾いても、ハンマーが弦に接触する瞬間にはもうフリーな状態。
そのまま鍵盤を押し付けていてももちろんハンマーは弦から離れていて、音は鳴っている。

和太鼓だったら、手に直接バチを持っているので、話はすごくわかりやすい。
バチからエネルギーを与えられて今、振動しようとしている皮が、まだバチに押さえつけられた状態になってたらそりゃ響かない。
腕力自慢の初心者が全力で和太鼓を叩いても、「べおん」って感じでうまく大きな音が出ないわけだ。

ピアノの場合、打弦の瞬間にはもう手から直接力を受ける部分と切り離されているんで、
それこそその瞬間のハンマーの速度以外に何かパラメーターがあるのか? ってすんごくわかりにくい。

たぶんだけど、あの「りん」を鳴らしていたピティナの先生は、別に物理オタじゃないので、「りん」と「ピアノ」の違いがあんまり気にならなかったんだと思う。
「りん」鳴らしてみせれば、脱力大事だよね、って直感的にわかってもらえる、って考えてるかもしれない。

でも、既に引用した兼常氏とか金子氏のように、理屈っぽい人にはそれじゃ納得させられない。金子氏(数学の先生、バリバリ理系だ)が「確かに音響物理学的には、ピアノで音色を変えることは困難であろう」と言っているのは、音色が変わりうるという物理的な説明で自分が説得されるものがこれまでになかったということを言っているのだろう(*)。

しかし…

今や、兼常氏の時代とはキカイがまったく別物くらいの進化を遂げているので、兼常氏が測定できなかった精度の測定も可能になった。

ピアニストの脳を科学する(古屋晋一)」にはまさにこの説明がある。

「鍵盤の動きがどう加速するかによって、ハンマーのシャンク部分の「しなりかた」がわずかに変わることがわかりました。」
つまり、タッチの仕方によって、打弦の瞬間の速度以外に、変えられる物理量があった。オカルトではなく。

しかも、弾き方によって、音色(倍音成分)に差が出ることも確かめられた。

「音量が同じでも、硬く打鍵するタッチのほうが、やわらかく打鍵するタッチよりも、音の倍音の中でも特に高い周波数の倍音が大きい」

また、高いところから打ち下ろすように弾いた場合は指が鍵盤に触れる音(タッチ・ノイズ)が混ざるので「触って弾く」よりも硬い音に聞こえる、という現象もある。ほかにもいろんな(解明されていない)要因もあるかもしれない。


ということで、長年の論争には決着がひとまず付き「タッチの仕方によって物理的に音色が変わる」ことは明らかとなった。めでたい。

しかしここまでわかったうえであらためて思うことは、納得できる物理的な説明を求めて追究しなくても、「りん」で感覚的に納得しておけばピアノを弾く上では実用上、何の問題もないってことだよね…


(*) この著書が出てから何年も経ってるから、ひょっとして既に意見が変わっているかもしれない


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コメント (6)
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